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月曜モカ子の私的モチーフvol.200「Time goes by」(2019.01.28 アーカイヴ)

※ 月モカアーカイヴをこちらに載せるのが少し滞っておりまして、昨日から怒涛のように載せています、タイムラインうるさいかな? ごめんなさい、なお、読んでいいね!くださった皆様、ありがとう、嬉しい。

ハロー祝200回! そしてアラビヤからもう4年が経つのである。
なぜ祝200とアラビヤが関係あるかというと、ちょうど4年前、アラビヤから帰ってきた頃に月モカは始まったのである。2015年だった。
毎週月曜にポチポチと書き続けて、気づけば200回というのは、うん割とわたしっていろんなことをコツコツ続けるのは得意のようであるな。今日のモチーフは200回を記念しつつ、Time goes by、いろんな意味でのタイム ゴーズ、バイ。

                          
わたしはスティーブ・ジョブズの信奉者である。ゆえに海外ドラマ“サルベーション”のダリウス・タンズのファンでもある。
なぜこんなにもAppleが好きか。それはAppleのもたらしたイノベーション(技術革新)は、単にテクノロジーや技術の進化ではなく、人々の暮らしかたそのものを変える、変えるというよりは、より深く、寄り添っていく動きだからである。

                          
近所に一人暮らししていた祖母の妹である大叔母(87)が秋に体調を崩し、自宅で暮らすのは難しくなり施設に入所した。正月に母と様子を見に行ったが、母が年末から「どうも、すべてにおいて“生きる気力”を失ってへなへなしている」と言っていた通り、どうもへなへなしている。テレビが部屋にあっても見ようともしない。そこでふと気づいたことがあった。彼女にもっとも必要なもの、それがここにはないということに。ここにないもの、それは音楽である。

                          
もともと大叔母は音楽にはかなり通じていて、マイルスデイビス、コルトレーン、チャーリーパーカーなどジャズを中心としながらクラプトンやエルトンジョンなど、家で一日中音楽を聴いているような人で、テレビも日々WOWOWのライヴを流しているような人、そして80歳を過ぎても新しい音楽に貪欲でエイミーワインハウスやアデルなんかの話もできるような、細胞がすべて音楽でできているような人だった。それがこの施設では音楽を聴くすべがなく、同時に「音楽を聴きたい」という気すら失っている。こりゃいかん、大至急音楽が流せる環境を整えなくては。
でもどうやって?

                          
やる気がない人にCDプレイヤーを持って行ったとてCDの入れ替えとかそういうのすらももう面倒でどうせ聴かなくなるし足が悪いからその度に立ち上がるなんて難しい。かと言ってラジオもちょっと今の段階では違う感じする。生きる希望がないくらい閉じている時は聴き慣れた音楽のヘビロテがまずいいと思うのである。施設の人に手伝ってもらうにしろ、すごく簡単なオペレーションで、ずっと聴いていられるようにしなくちゃ、施設の人も大変。

そしてもっとも重要なこと。今回はまず大叔母の好きな音楽たちを選りすぐって永遠にループするように流すことがもっとも重要である、でもその音楽たちをどうやって管理する?

                          
知恵を絞って考え抜いた結果わたしがたどり着いたのはやはりApple、今使っていないiPhoneやiPadを使ってApple Musicで音楽を流すことだった。
わたしは月々1,480円払って、数人までなら音楽をシェアできるファミリーに入っているから、新しいアカウントを大叔母用に作って、わたしの傘下におけば、大叔母は課金せず音楽が聴き放題になる。

次に考えたのは大叔母の自宅での暮らしの再現だった。そこで、大叔母の家に行ってCDラックを全部写真に撮ってきた。これらをApple Musicで検索しようという算段である。

                          
今月体調崩したり、月末で節目を迎える案件もあったりしてバタバタしていたのだが、今日(昨日)ようやくiPadを触る時間ができたので、父のお古のiPadを初期化して大叔母用のプレイリストを作成した。果たしてApple Musicにそれらがあるのか不安だったが、ジャズ界の巨匠たちの音楽はわたしの予想をはるかに凌ぐ量でAppleにStockされており、ほぼ8割方、大叔母のCDラックが、このiPadのプレイリストの中に復元されたのである。クラプトン、ケニー・バレル、アートブレイキー、キャノンボールアダレイ、小野リサ…...それら500曲以上が一気に手のひらの上に収まり、かつ移動可能な状態になった。
同時にそれらは、Wi-Fiのあるところでダウンロードしておけば、オフライン、つまり電波のないところでも再生できるのである。(涙!)
施設にWi-Fiがあればなお良いが、なくっても再生できるのである。
す、す、す、素敵すぎる…。もはや感動して泣きたいレベル。

                          
わたしには親友がジャズシンガーであるという強みがあるので、まずそのリストを親友ちほさんと共有し、プレイリストにギャップがありすぎたりしないかを確認してもらった。「おばちゃん、流石のご趣味だねえ、素晴らしいわあ!」と拍手のスタンプ付き返信をくれたちほは「無理のない流れになっているし、このレベルで音楽聴いている人だったら普段自分が聴かない順番で聴くことを逆に新鮮に楽しまれるのでは」と言ってくれた。ホッとする。
おそらくCDラックに並んでいる順に音楽を検索したことが良かったんじゃないかなあ。何かしらの流れでCDが並んでいたのかもしれない。

                          
ついでに「ツウのためのマイルスデイビス」みたいなプレイリストも2つほどブックしておいてとりあえずオフラインでも相当数の曲が楽しめるようにしてみた。あとはわたしが東京でまたポチポチ、これはと思う楽曲たちを別なプレイリストで作って、それをまた電波のあるところで共有しDLしておけば良いのである。すごいなあ、すごいなあジョブスは。
「こういうことができるんだよ!」という技術としての凄さじゃなくて、
すべてが人間の暮らし、より豊かな暮らしを前提に、そこへ寄り添うように練られていることが。

                         
Time goes by。時は流れるし、大叔母はもうあの音楽に囲まれた家には戻れないかもしれない。嵐は活動休止するとか言っているし、市原悦子さんは亡くなってしまった。大叔母もいつしかCDを取り替えたりするのも肉体的に簡単でなくなって、ベッドから起きたりすることすらも一大事だけど、でもそれでも、来週の頭には新しい住みかに、住み慣れた家で聴き続けた音楽が全部!帰ってくる。
それは彼女のライフの復元そのものなのである。
前よりできることが少なくなっても、ボタンを1つタップするだけで、聴き込んだ数十枚のCDの音楽が一気に流れるのだから。
合間に新しい音楽を挟みながら。ちほさん推薦のMaxraabeやヨーコの友人のトランペッター黒田卓也など、大叔母が好きそうで新しい音楽も入れておいたし、
出かけたくても出かけられないから、出かけた気になれるようLiveアルバムも多めに入れておいた。
                          
もっといい音で聴きたいという欲が出たらBluetoothで小さなスピーカーに繋げばいいし、さらなる欲がわけば、ポケットWiFiかなんかを手に入れて、常に新しい音楽を検索していけばいい。
欲が出るということは生きていきたいということであって、生きていたいということは生きているということである。ジョブズのイノベーションは時に命にすら寄り添っている。

                      <イラスト=MihoKingo>

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☆モチーフとは動機、理由、主題という意味のフランス語の単語です。

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