見出し画像

「こども文房具2022」は、子どもと、かつて子どもだった文具好きの大人に読んで欲しい

2022年4月28日に発売された、文房具屋さん大賞PRESENTS『こども文房具2022』(以下「こども文房具2022」)を読んだ。

大人向けの文具や手帳本は数あれど、子ども向けはめずらしい。未就学児から小学校高学年向けの内容になっている。勉強に使える文具が充実しているので、小学生とその親御さんが一番役に立つと思う。

うちには、年少になる子どもがいるが、子どもと一緒に楽しめる文具や、子育てに役立つ文具も載っているので参考になる。

…と、いうのは口実だ。かつてはペンケースいっぱいに文具をつめていた、子どもの目線の私が「買ってくれ」と訴えてきたので購入したのだ。思いのほかおもしろかったので、感想を書いてみた。

佐藤ママが文具ガチ勢すぎてビビった

「こども文房具2022」には文具紹介の他に、インタビューや座談会も載っている。そのなかでも、「佐藤ママ」こと佐藤亮子さんのインタビューを読んで、文具ガチ勢ぶりに驚いた。

佐藤ママは、お子さん4人全員が、国内最難関の東京大学理科三類(医学部)に合格した。このことから、独自の教育方法が注目される。現在は、全国で講演を行なったり著書を出版したりと教育方面で活躍している方なのだ。

私も雑誌などでその存在を知っており、参考書をたくさん買ってその子に合う1冊を選ぶ…とか環境設定も大事にしている方なんだろうなぁと思っていたが、まさか文房具もかなり活用されているとは。6ページにもおよぶ文具術に圧巻された。

例えば、参考書を選ぶように、文房具も子ども一人一人に合ったものを選んでいる。シャープペンなどの種類などはともかく、消しゴムのサイズまでフィットするものを選ばせる徹底ぶりだ。

それと、同じ『MONO』でも、いろいろなサイズがありますよね。すると子どもによって選ぶ大きさも違うわけです。

文房具屋さん大賞PRESENTS『こども文房具2022』(p.6)
/たこなお文具堂著

※トンボ鉛筆のMONO消しゴム、スタンダートタイプだけで5サイズ(2022年5月時点)ある。

佐藤ママの感想だけで、1記事書けそうなのでこの辺にしておくが、

  • プリント類は、ルーズリーフ用の穴あけパンチで開けて、リングでまとめる

  • 赤本(問題集)は分厚いので、バラして製本

などたくさんの文具術があり、その底根には子どもたちの「笑顔」がある。読み応えがあり、のっけからお腹いっぱいになるインタビューだ。

ゆとり世代の親が羨望の目で見る最新文具

私はいわゆるゆとり世代(1987年生まれ~2004年生まれ)に教育を受けた世代。つまり小学校教育を受けたのは、2X年前…ということになる(計算して震えてる)。

小学生のときの情報の授業では、1グループにつきパソコン1台だった。中高生のときは、情報の授業のときのみ、「パソコン室」で1人1台パソコンが与えられていた。

それが現代では、GIGAスクール機構※によって、1人1台タブレットを使うようになってきた。

※GIGAスクール機構とは
全国の児童・生徒1人に1台のコンピューターと高速ネットワークを整備する文部科学省の取り組み

子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育 ICT 環境の実現に向けて ~令和時代のスタンダードとしての1人1台端末環境~より

それによって、文具も進化したのだ。

例えば、クツワの「タツール筆入」は一見子ども時代に使っていた箱型の筆入に見える。しかし、タブレットが立てられる機能がついているのだ。

筆入にタブレットスタンドをつければ、省スペースで学習できる。そもそも学生時代にタブレットがなかったので、思いつきもしない発想だった。

他にも、自分が子ども時代には考えもしなかった、スマホ学習を支える、ぺんてるの「アンキスナップ」や常識の斜め上を走る、プラスの「ハシレ!エンピツケズリ!」など、最新の文具は眺めているだけでワクワクする。

ミッシェル・ガン・エレファントは最高だ

座談会記事には、山本健太郎さんも載っている。山本健太郎さんをご存じだろうか?夏休みの宿題で作った手書きの文房具図鑑が話題になり、商業出版したのだ。当時小学校6年生。すこい。

私は、当時Twitterでたまたま流れてきた、デイリーポータルZの記事を読んで度肝を抜かれた。特徴を捉えた絵、筆記確認、的確なコメント…私が小学校6年生のときは、凶器になりうるペンケースを持って、「誰か話題にしてくれないかな…」みたいな他力全開だったぞ。

そんな山本健太郎さんが大学生(!)になり、メディアに出ていなかった空白の中学校〜美大生までの文房具履歴や活動を教えてくれる。気に入ったものを長く使うタイプのようだ。

そのなかでも私の目を特に引いた写真は、高校生のときの作品で、自分の好きな音楽をイラストと文章で紹介したもの。特徴を捉えた絵と、みっちりとした情報量の文章で、「成長しても本質は変わらないんだな…」と思った。

ちなみに取り上げたアーティストは「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT(ミッシェル・ガン・エレファント)」というバンドで、メンバーの絵はもちろん、メンバーが使っていた楽器やジャケット写真も丁寧に描かれている。

私もミッシェル好きなので、普通に読みたい。「こども文房具2022」を読んでミッシェルの話をする人がいなそうなので、あえて触れてみた。見出し文具全然関係ない。

好きという気持ちを大切にする人の記事は、読んでいておもしろい。これからの美大生生活も、好きを突き詰めて活躍して欲しい。

▼「文房具図鑑」は、今ならKindle Unlimitedでも読める。文具メーカーの優しいコメントも必読だ。

優しい親のまなざしで文具をおすすめ

この「こども文房具2022」の著者である、他故壁氏(たこかべうじ)さんと、ふじいなおみさんは、実際に子育てを経験している親の一人。なので、このムックは親の視点で書かれている。

実際に子どもが「使いやすいか・安全であるか・楽しんで使えるか」はもちろん、子育て中の親に寄り添う商品も紹介されている。

サクラクレパス「洗たくでおとせるふとふとマーカー」は、その名の通り、服についても洗濯できれいに落とせるマーカー。レビューの文節には、

インクなどが洋服につくと、洗濯で落ちないのではと「ドキッ」として、ついつい子どもを叱ってしまいがち。楽しいお絵描きタイムを台なしにしてしまうことも。

文房具屋さん大賞PRESENTS『こども文房具2022』(p.61)
/たこなお文具堂著

とある。この気持ち、親なら「わかる〜」と共感してしまうだろう。私も、服を汚されたりテーブルや床を汚されたりするのが怖くて、息子にはもっぱらクーピーペンシルをすすめてしまうもの。子育ての悩みを解決してくれる文具を、親の目線で教えてくれるのだ。

親の優しいまなざしで作られた「こども文房具2022」は、453点もの文房具が紹介されている。子どもも、かつて子どもだった文房具好きの大人も楽しめる1冊だ。興味があったらぜひ手に取ってみて欲しい。

▼Kindle版もあるけど、私は、子どもが読むかもしれないので珍しく紙の本を買った。

ご興味あったらこちらもどうぞ

文具マガジンやっています。文具レビューが気になる方はどうぞ。

我こそは文具好きという方は、文具知識能力検定を受けてみませんか?


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が、共感できるな・おもしろいなと思って頂けたら、「スキ♡」を押してくれるとうれしいです。(♡はnote会員以外でも押せます)SNSでのシェアも大歓迎してます!