住所不定無色

仕事は今日辞めた 彼女とも別れた
俺は今やっと 俺のために生きていく
どこかでエンジン音が響く 用もなく外へ出る
誰も止めない 何も待っていない 深い夜へ踏み出す

人づてにきいた話 昔の仕事仲間の話
あいつは辞めたあとで 夢を追って死んだという
家出同然で飛び出した故郷 ネオン街と重ねて
照らされてできた影の中 思い出が亡霊のように浮かぶ

こんな時に誰かに電話しそうになる
頑張ったねと言ってもらいたかっただけ
ほめてもらえるようなことをやってきた歳でもないし

期待も名声もない
どうやってたどり着けばいいかわからない
でも、これじゃないと割り切れたなら これしかないと定めて進め
ビニール袋散らばる部屋で 宇宙を広げろ

季節外れの風邪をひいた 誰に知られることなく
咳を一つ残して 消えてしまいそうだった
身体のだるさ引きずり コンビニで何かを探す
何も求めないから 誰も求めてくれない 不快な視線を横切る

いつか必要になるとかって 無駄にものをため込む悪い癖
そのくせ突然何もかもが 嫌になり誰彼疑って
切り捨てて 見失い 住所不定 無色透明

希望も価値もない
離れていった奴らに言われる筋合いなんてない
さぁ、もういいだろう 俺にはこれしかもうないんだ
今ここで死んだところで
何者にもなれはしない 名無しの記号にされてしまう
だから、これじゃないと割り切れたなら これしかないと定めて進め
風も吹かぬこの部屋で 宇宙を広げろ
宇宙を広げろ

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