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青空文庫とKindleのありがたみを知った

タイトルの通りの記事。
最近、Kindle端末で青空文庫のKindle版を読んでいる。これがとても良い。ついでに読んだ本紹介も。

青空文庫のKindle版をDLして読むようになって良かった点

・図書館に行って本を借りるより早い。家にいながら入手できる。
・Kindle端末に長編を複数ダウンロードしておけば、本を何冊も持ち歩かなくてもいい(私は比較的読むのが速くかつ空き時間には本が読みたいので、ちょっとでかけるにも数冊の本を持ち歩きがち)。
・画面が光るので寝っ転がってごろごろしながら読みやすい。

あとこれは気分や体調などの問題かもしれないが、紙で読み始めて途中でやめた本でも、Kindleだとなぜかモチベーションが続いて最後まで読めることがたびたびあった。
ついでなのでそんな作品を紹介します。

徳冨蘆花『不如帰』

明治のベストセラー。薄幸の女性浪子を主人公にした話。あらすじを言うならラストまで紹介した方が性質がわかる作品なのだが、こういうのラストまで紹介していいのかな?明治の作品でもネタバレになるのかな?といつも悩む。
この小説の特徴は、文語文なのにやたらと読みやすいところだと思う。

 上州伊香保千明の三階の障子開きて、夕景色をながむる婦人。年は十八九。品よき丸髷に結いて、草色の紐つけし小紋縮緬の被布を着たり。
 色白の細面、眉の間ややせまりて、頬のあたりの肉寒げなるが、疵といわば疵なれど、瘠形のすらりとしおらしき人品。これや北風に一輪勁きを誇る梅花にあらず、また霞の春に蝴蝶と化けて飛ぶ桜の花にもあらで、夏の夕やみにほのかににおう月見草、と品定めもしつべき婦人。

https://www.aozora.gr.jp/cards/000280/card1706.html

これは冒頭だが、終始こんな感じでとても読みやすい。ストーリーもわかりやすく、明治の小説を読んでみたい人にぴったりの本かもしれない。

徳田秋声『あらくれ』

お島という女性の波瀾万丈の半生を書いた作品。タイトルからものすごい女傑の話なのかと思ったら、そうでもなかった。お島はたしかに気が強く、この時代の女性にしては奔放な性格なのだと思うが、何かと泣いたりする弱い面もあり、強い女の話というよりは環境に翻弄されながらも生きていく女性を描いたような印象を受けた。これは私が現代人だからで、作品が発表された大正には違う受け取られ方をしていたのかもしれない。
本で読んだとき何となく気が乗らず途中でやめていたのが不思議なくらい面白く読めた。せっかくなので徳田秋声の他の作品も読み進めている。『黴』の終わり方があっけなくてすごい。

島崎藤村『破戒』

被差別部落に生まれた瀬川丑松は、父親から身分を隠して生きろと厳命されており、その戒めを守って今は教師として働いている。丑松の苦悩や受難を描いた作品。
島崎藤村はどうも私には合わないらしく、『破戒』には何度か挑戦しているがいつも途中でやめてしまっていた。でもいま明治文学にはまっているので、明治に話題になったこの作品は読んでおきたい…と思い、努力して最後まで読んだ。そうでなければまた挫折していたと思う。
丑松の苦悩に作者が真面目に向き合っている印象があって、そこが良かった。ラストは予想したよりハッピーで、そうなるのかとやや驚いた。

夏目漱石『草枕』

「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい」という冒頭の文章が有名な作品。主人公の一人称で書かれていて、主人公が体験する出来事と主人公の考えが入り混じったような内容になっている。本で読んだときにはそこが読みづらいと思ったのだが、改めて読んだら逆にそれが面白かった。主人公の考えていることが滔々と語られるあたりは、本気でがっつり向き合うよりは「ふーん」くらいの距離感で読んでいると、食傷しなくて適度に楽しめると思う。当たり前だが、『吾輩は猫である』と同じ人が書いているな〜というのが文体などから強く感じられるのが私には面白い。

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