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高校生のときに自分のドッペルゲンガーを見た

「この前、駅のホームでぷみちゃんにそっくりな人を見たよ」

高校に通っていたころ、普段から連れ立っていた友達のYちゃんに言われた。

自分にそっくりな人。

ドッペルゲンガー?

「ドッペルゲンガー」とは、自分と見た目がそっくりな相手のこと。響きだけでも無性に気になる。口にするだけで、妙にそわそわむずむずしてしまう。

俗に、「この世には自分にそっくりな人が自分を含めて3人いて、そのうちの2人が出会うと、たちどころに死んでしまう」とか。

そんな“ドッペルゲンガー”が、身近にいる?


当時のワタシは市にある高校へ通うために、30分ほど電車に乗る必要があった。

Yちゃんとは出身中学が違うため、ワタシとは乗る駅は違うものの、同じ路線の電車を使っていた。“ドッペルゲンガーさん”のことは、市の駅のホームで見たらしい。そこは2線の乗り入れがあるため、“ドッペルゲンガーさん”は別の路線を使っているのかもしれない。

聞けば相手も「高校生の女子」だという。ワタシたちの高校は私服通学の公立だったが、彼女は制服を着ていたようだ。

市にはいくつも高校があったけれど、“ドッペルゲンガーさん”に会う確率は、いま東京で知り合いに会う確率の何十倍、何百倍、それ以上あるだろう。

実際、あまり期間を空けずに、Yちゃんが言った。

「あのぷみちゃんにそっくりな子、また駅で見たよ」

おいおいおい、マジかいな。

気になる。とても気になるじゃないか~!

とはいえ、何ができるわけでもなく、何をしたいわけでもない。しかし、これは人から自分がどう見られているのか、どういうイメージなのかを客観的に見られる機会とも言える。それはとても面白い。

帰宅部(いまもこういう風に言うのか?)だったワタシたちは、その後もだらだらと高校生活を過ごし(あ、Yちゃんまで巻き込んでしまった)、帰りの電車で食っちゃべって帰る日々を送っていた。

そしてついに、その日はやってきた。帰りの駅のホームにて。

「ぷみちゃん、あそこ!」

「ん?」

「ぷみちゃんにそっくりな子!」

ドキドキ~ン。

この胸のトキメキっ。じゃない! 

「え、どこどこ? どこよ、この自分のドッペルゲンガーさんってのは」

はやる鼓動を抑えながら、Yちゃんの示す方向に目をやった。

・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。

普通。

とても普通。めっちゃ普通。限りなく、普通。

なんと感想を言っていいのか、わからない。

普通。

今にして思えば、というか今じゃなくて当時でも、相手の子にと~っても失礼なことを言っているのは分かっている。といっても、面と向かって伝えたわけじゃないから許してくだされ。

とにかく、それしか感想が浮かばなかった。

似てるって、そっくりだって、ワタシには彼女に何の特徴も見いだせないよ(だから失礼だってば!)。

ワタシは幼いころから外見にコンプレックスを抱えてきた。そんな自分である。嫌だったわけじゃない、むしろ嬉しかった。「あ、こんな普通の女子高校生を、自分とそっくりだと言ってくれるんだ」と。「普通の子じゃん」というのは、自分にとって100%以上の誉め言葉だったのだ。しかし、それにしてもどうにも形容のしようのない「普通さ」だったのである(重ね重ね失礼)。

「ふ~ん」

何度も言うが、嬉しかった。「え!」「やだ!」という感情は全くなかった。しかし「この普通の人に似てるの?」と正直、とても不思議な感覚だった。戸惑うほどの。逆によく見つけたよ、というか。まあ、Yちゃんには、ワタシの外見のイメージは、彼女のように見えていたということであり、少なくとも悪い印象でなくてよかった。そんな落としどころか?


さて、「自分の“ドッペルゲンガー”に会うと、たちどころに死んでしまう」という俗説について。

ワタシは人生折り返しをとっくに過ぎた、今も生きている。となると、彼女はやはり、ワタシの“ドッペルゲンガー”ではなかったということだろうか。

いや、ワタシが彼女を自分と似ているとは認識しなかったために「自分にそっくりな人と出会った」と加算されなかった可能性もある。

外見コンプレックスの強かったワタシは、鏡を見ることが大嫌いで、とにかく鏡を見てこなかった。特に小学生の頃などは、ほぼ全く鏡を見ることはなかった(学校のトイレといった鏡を含め)。

高校生ともなると、寝グセをチェックしたりと、多少は鏡を見る必要があったと思うが、自分自身の外見へのイメージを、持つようにしていなかったように思う。

ひょっとしたら、彼女は本当にワタシの“ドッペルゲンガー”だった可能性もある。つまりはワタシが、鏡嫌いで自分の外見イメージを持っていなかったために、“ドッペルゲンガー”との対面現象を回避できた、と。

ちなみに、あの短期間で何度もYちゃんとの会話に現れた“ドッペルゲンガーさん”だが、その後はついぞ会うことがなかった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます! またよろしくお願いします♪



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