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カインとアベル

数週間前から、ADHDの薬を飲まされている。
不本意だったけれど、主治医が怖くて、飲みたくないとは言えずにいる。
ネットでADHDについて調べると、思い当たる特徴がいくつかあり、全く思い当たらない特徴もいくつかある。
けれど、読めば読むほど、自分はADHDなんだ、と思うようになった。

昔かかった精神科で、ASDを疑われたこともある。
ASDについて本で調べると、やはり思い当たる特徴がいくつかあり、全く思い当たらない特徴もいくつかあった。
やはり、読めば読むほど、自分はASDなんだ、と思うようになった。

今までいろんな病名をつけられてきた。
どの病気も、調べると、思い当たる特徴も、思い当たらない特徴もあった。
けれど今までずっと、言われた病名を信じ込んで、そのように振る舞ってきた。

3年前の担当看護師Yさんは言った。
「精神病なんか、調べればみんな持ってるのよ。
わたしはたぶんボーダーだと思う。
わたしにだって、妄想はあるのよ」
そうなんだろうか、人間みな精神病なのだろうか。
わからない。

父は言う。
「おまえのことがよくわからないことがある。
それはおまえが精神病だからだろう」
わたしは言う。
「うちの家族はみんな精神病だって、Yさんは言ってました」
父は言う。
「それを言うなら、人間みな精神病だ、ということがあるんだぞ」

わたしひとりを精神科に捨てた家族が憎い、と思うことがある。
わたしひとりに地獄を見せて、自分たちは涼しい顔をしていた家族が憎い、と思うことがある。
けれど、きっと家族はみんな健常者なのだろう。
わたしひとりが精神病なのだろう。

弟は、引きこもりでも、健常者だから、家族に愛され大切にされている。
弟に嫉妬する。
わたしは精神を病んだカイン。
弟は、健やかなアベル。


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