過去販売品3 アメジスト “rose of sharon”リング②
アメリカのディーラーからこのリングを購入した際、
「これは“rose of sharon”である」
という説明に加えて、
「この“rose of sharon”(以下シャロンリングと書く)は、アメリカ南北戦争の頃に婚約指輪または恋人に贈るリングとして流行した」という説明を受けました。
この説明がアンティークジュエリー界の定説なのか
歴史的に正しいと検証されているのか
それは正直わかりません。
このシャロンリングというのは、日本で扱われているのをほとんど見ないし
話題になっているのも聞いたことがありません。
なのでこういう公の場で素人がシャロンリングなるものを語るには、あまりにも情報不足で不正確かもしれません。
ただ、どうしてもこの美しいリングの話をしたいので
あくまで購入元の説明が概ね正しいと仮定した上で、私の思うところを書かせてください。
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南北戦争とは今から約150年前
1861年〜65年にかけてアメリカで起きた内戦です。
黒人奴隷を使用して自由貿易を主張する南部と、国内市場の統一、保護貿易を主張する北部との対立が根底にあると言われています。
約5年間に及ぶ戦争…。長いですね。
愛を約束している恋人や婚約者、あるいは夫婦同士が遠く離れ離れにならざるを得ず、しかも身の安全も確保されていない…。
複雑かつ緊迫した政治事情や
それによっていよいよ起こる戦い。
人々は皆生活の混乱や、愛する人と離れ離れになる心労など、決して心穏やかに生きられる時代ではなかったでしょう。
そんな時代に、愛の証として贈られたとされるこのリング。
淡く儚いアメジスト。
金と小さなダイヤに彩られた1輪の花。
この可憐な花は、まるで小さな子どもが好きな異性のために手折ってきたような、素朴な野の花の姿をしています。
このリングが語る愛は、とても静かです。
激しい熱情ではなく、まるで初恋のように清らかな愛情という印象です。
若い恋人たちが本当に自分求めていたのは
平穏な生活の中で穏やかに愛を語り合うような
初恋のようにゆっくり時間かけてささやかな思い出を重ねていくような
そんな静かな愛だったのかもしれない。
そしてその願いは容易には叶わなかったかもしれない。
内戦下の厳しい状況とは対極にあるような彼らの美しい「愛の証」を見ていると、少し切ない気持ちになります。
混乱の時代であっても
またこの指輪を贈り受け取った人物たちがいなっても
どんなに時代が変わっても
彼らの愛は世にも美しい形となって、永遠に思える時間を輝きつづけ
遠い昔にこんな愛があったと教えてくれます。
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このリングの持ち主はかなり頻繁にこのリングを身に着けていたように思います。というより、つけっぱなしだったかもしれません。とても大切な指輪だったのでしょう。
というのも画像を見ていただくとわかるのですが、このアメジストには傷が多いのです。
特に正面のカット面の角が摩耗といえるくらい傷ついています。
ここまで傷のあるアメジスト(他の宝石でもいいですが)を見る機会はほとんどないでしょう。
アメジストはモース硬度7。ものすごく硬くはないが、決して脆い石ではないです。
そのアメジストがこれほど摩耗するということは、相当な頻度で着用していたのだろうと考えられます。
一方このリングをアンティークジュエリーの評価基準に照らすと、傷や欠けがあるためその作品の価格は大きく下がります。
使用跡や傷がなく、なおかつ作りや宝石のクォリティが高いとそのアンティークジュエリーの価値が高いとされ、高い値段がつきます。当然そうなりますよね。
しかし、です。
この理屈によって高い価格がつけられるのは納得できますが、「高い価値」についてはどうでしょうか。
完璧な作品に高い価値があるのは当然として、傷や使用跡によって本当に価値は減るものでしょうか。
このアメジストリングは、アンティークリングとしてはそれほど高い値段はつきません。
それは確かです。
しかし
愛ある傷ならむしろ価値が増すと考える人(私)もここにいるわけで
本当にこれは人それぞれなんですね。
ただ1つ言えるのは
一般価値を知りつつそれに引っ張られないで、いかに自分の価値基準を持てるか?
が
「楽しんで」「深く愛する」ために必要なんだろうと思います。
これはアンティークジュエリーに限らず、あらゆることに適用できる考え方だと思います。
価値って何なんだろう
価格って何なんだろう
美しさとは?
愛とは?
時間とは?
永遠とは?
皆さんの中に答えはありますか?
私はアンティークジュエリーから色んなことを教わっています。
次回最後。
過去販売品3 アメジスト “rose of sharon”リング③に続く。
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