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神さまたちの遊ぶ庭/宮下奈都

 タイトルはカムイミンタラというアイヌの言葉で「神々の遊ぶ庭」から取っているらしい。
そう呼ばれるぐらい素晴らしい景色を持つ北海道の集落へ山村留学した著者の記憶。

 田舎への移住関係の本というと、雪国やへき地での暮らしの大変さや地域住民との付き合いの煩わしさをどうしても感じてしまうのだけど、そんな気持ちを一切感じない。
楽しく、どんどん読めていく。
瀬尾麻衣子さんの小説を読んだときの感覚に近い。

 著者家族(夫、長男、次男、長女)がみんなユニークで面白い。
でもそれってこの家族に限ったことではないのだ。
子供の想像力、力強さ、適応力って、大小さまざまではあるけれど、かつてはそれぞれ持っていたものだ。
そんな幼いころの自分を思い出してしまう。

 学校や地域との繋がり。
教師も地域の人々もみな優しさと面白さであふれている。
優しいだけの人なんていない。みんな心に何か抱えている。
でも、それも含めて暖かく柔らかく描写される人びとに読んだ人の心まで温かくなる。
そんな気持ちにさせてくれる。

 写真も映像もないのに、読んでいるだけで風景が浮かんでくる。
心を癒してくれる一冊だった。

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