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襟裳の風#7

 小学校に入学した頃だったろうか、ある冬の日中、家の前の砂利道路(黄金道路)を大型トラックが通りました。
 冬は海からの風が道路の砂利を凍らせ、とても寒いのです。
 その一台のトラックは幌も掛けずにカチカチに凍った魚のカレイを荷台に満載していました。
 ガタガタとトラックが弾むたびに荷台のカレイが路面にザーと落ちます。
 それをすぐ下の妹と一緒に、父が編んだ竹篭に拾い、家に持ち帰りました。
 だれかが拾わなかったらカラスかウミネコの餌になってしまうのです。
 大自然の中で生きる術を小さいころから自然に身につけていたのかもしれません。
 
 ランプのホヤ(アルコール炎の周りの硝子筒)に煤が付き易く、そのホヤ磨きが私の日課でした。
 余所見をして集中力がなくなった時、ホヤを落し、割ったりしました。
 親に叱られました。
 暖房は薪ストーブ。暖かい。自分は薪割りもよく手伝いました。家のまえに沢山の薪が積み上げられ、それが海からの風を防いでもいました。
 
 昭和二十年代後半、庶野の町から帯広方面に向かう黄金道路沿いの民家は当時まだ、電気は敷設されて無く、四~五軒ある集落はランプ生活でした。
 今は新たに道路が敷設され、当時の家並みは新しい黄金道路の下になっています。
 

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