みだれ髪の読書記録:2023年8月29日~9月22日(遠い山並みの光、すずめの戸締り他)
読書記録ためすぎだ~。
①『遠い山なみの光』 by カズオ・イシグロ (訳 小野寺 健)
2017年にノーベル文学賞を受賞した、カズオ・イシグロの長編デビュー作。
この作品も王立文学協会賞受賞している。
文庫本の裏表紙のあらすじを載せる。
カズオ・イシグロは長崎の生まれである。
原爆に破壊された町と人々をテーマにすることは、ルーツをたどるという意味もあったのだろう。
しかし、「日本人」が書いた小説だと思ってしまうと、やや違和感がある。
彼は5歳で父の仕事の関係で渡英し、そのまま帰らず、イギリス国籍を取得した、「英国人」である。
そんな彼が日本女性たちの心の動きを描写するとなると、どこかわざとらしさがあるが、逆に、一人称で語られながら、さめた客観的な目を感じられるともいえる。
現在と回想シーンが入り乱れ、また主人公(悦子)の話なのかと思っていると、他の人の話であったり、と、ちょっとわかりにくい組み立てだ。
長崎の町の描写はたくさん出てくるが、悦子は現在は英国に住んでいるという設定であるにもかかわらず、英国の描写がほとんど出てこないのは、ちょっと残念な感じ。
個々のエピソードで、くすっと笑える場面はあるものの、全体のストーリーとしてさほど面白いとは思えず、それでも文学的価値にひかれて最後まで読んだが、いろいろな人がその後どうなったのかわからずに終わる、私がいらつく幕切れだった。
カズオ・イカシグロの作品を読むのは5冊目だが、はじめに読んだ「日の名残り」よりも好きな作品にはまだ出会っていない。
②『KWAIDAN(怪談)』 by Lafcadio Hearn
今年の洋書6冊目。これは記事を書いた。
③『すずめの戸締り』 by 新海誠
新海誠のアニメーション映画は、人気が高いが、まだ見たことはない。
しかし、『君の名は。』を読んで、予想以上に感動した記憶があり、この『すずめの戸締り』も、同じ路線だと聞いて、読んでみることにした。
前半は、青春もののようなコミカルな展開と、世界を救う的な大げさなヒーローものが混じったような話で、ちょっと飽きてきたところへ、意外な展開が。
東日本大震災を思わせる廃墟の描写。
世界を救っていると思ったら、実は自分が救われていた!というような流れ。
ちょこっと「ナルニア」を思わせるような場面もあったが、でも、ここは日本らしく、終わってくれる。
後味は悪くないが、全体としてみると、謎が多すぎて、小説として読むにはちょっと、な気もした。これは、やはり映像で見る方がよいのだろう。
④『桜風堂夢ものがたり』 by 村山早紀
本屋さんを舞台にした「桜風堂ものがたり」と、続編の「星をつなぐ手―桜風堂ものがたり」を以前読んで、また続編が出ないかな~と思っていた。
この本は、舞台は同じ桜風堂書店なのだけど、続編というよりはスピンオフ。
わき役だった人々にスポットが当たっている。
ということはおぼろげながらわかった上で読み始め、第1話の「秋の怪談」は、やや現実離れした話も出てくるけど、後味良く終わり、また楽しめそうだな、と思った。
でも、第2話、第3話と読み続けると、あれ?なんか違うぞ、と気づく。
リアリティがだんだんなくなっていき、本屋の話とはかけ離れていき、あの大事な資料はどうなってしまったんだろう?というすっきりしない気持ちが残ったりする。
第4話で、解決してくれるのかと思いきや、なんと宇宙人が出てきたり!なんか違う話になってきたような。まあ、ほっこりはさせてくれるのだけど。
あとがきを読んで納得。
作者は、「桜風堂ものがたり」で、本来、ファンタジーを書く予定だったのが、書き進めるうちにリアルな話になってきたので、ファンタジー的要素を削除していったのだとか。そして、本来書く予定だったスタイルは、この「夢ものがたり」に近いんだとか。
普通は、あとがきは最後に読むものだが、この本は、あとがきを先に読んだ方がよかったかもしれない。
⑤『ミッキーマウスの憂鬱ふたたび』 by 松岡圭祐
「ミッキーマウスの憂鬱」で、ディズニーランドの裏側を描く、ミステリーの要素も少々含んだ展開を楽しんだが、続編があるということを知り、まだ記憶が新しいうちに読んでみることにした。
正社員ではない、若い準社員の奮闘ぶりを描いていることは、前作と同じだが、主人公が、前回は男性だったのに対し、今回は女性。職場だけでなく、家族との関係にも触れている。
展開としては面白いし、後味も悪くないが、本当の悪人が全く登場しないというのもちょっと物足りなさが残る幕切れだった。
この本だけでも内容は分かるようになっているが、前作で仕組みがわかっているとより細部を終えるし、同じ登場人物が成長した姿も見られるので、先に前作を読んだ方が楽しめると思う。
前作の感想はこちら。
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