【第16回】ドイツのエネルギー政策は欺瞞 日本が教訓とすべきことは何か 

 ドイツ連邦議会は9月8日、石油とガスの暖房システムを段階的に廃止する法案を可決した。日本が教訓とするべきことは何か。

 今回ドイツ連邦議会で可決された法案は「建築エネルギー法(GEG)」と呼ばれ、住宅やその他の建物で熱を発生させるために使用される再生可能エネルギーの量を徐々に増やすことを目的としている。現在、ドイツの建物の半数がガス暖房システムを使用していると推定されている。

 この法律は2024年1月1日に施行される予定だが、機能している暖房システムは引き続き稼働し、必要に応じて修理することもできるという。

 このドイツの動きの背景には、世界的な脱炭素の趨勢がある。2016年に発効したパリ協定は、温暖化による危機的状況を防ぐため、産業革命前からの気温上昇を2度より低く、できれば1.5度以下に抑えることを目標としている。

 そのための温暖化ガス削減目標について、日本は2030年まで13年比で26%カット(2005年比で25.4%)、中国は2030年までに2005年比で国内総生産(GDP)あたりの二酸化炭素排出量を60~65%カット、ドイツを含む欧州連合(EU)は2030年までに1990年比で40%カット(2013年比で24%)としている。

 脱炭素については、いろいろな議論があるものの、世界の流れであるのは明らかだ。その流れの中で、二酸化炭素を出さず、風力や太陽光と異なり天候にも左右されない原発は、最も適している手段ではないか。

 ドイツでは、2011年の福島第一原発事故を受けて、当時のアンゲラ・メルケル首相は原発の段階的廃止を決めた。その結果、太陽光・風力発電政策に翻弄される状態を自ら作り出した。しかも、自国で原発廃止を決めておきながら、隣国の原発大国であるフランスから電力を輸入する欺瞞もある。

 脱原発のドイツとは対照的に、EUの欧州委員会は昨年1月、原発を天然ガスとともにグリーンな投資先として認定する方針を発表した。脱炭素には、原発は欠かせない要素だからだ。つまり、欧州を見てもドイツだけが異質の行動をしているのである。

 日本国内では、ドイツを見習い脱原発を主張する向きもあるが、むしろ、エネルギー政策において欧州の中で孤立するドイツを反面教師とした方がいい。日本は、小型モジュール式原発(SMR)の新増設も含め検討していくべきだ。

 ところで、洋上風力発電事業をめぐり日本風力開発が秋本真利氏衆議院議員に資金提供をした疑いがあるとして逮捕された。

 再エネ利権の根源となるのは「再エネ賦課金」だ。これは、電力会社が電気を買い取る際に発生する費用を電気を使う国民が出し合うというもので、2011年8月に成立した「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」に基づき導入された。

 再エネ賦課金に関わる利権とすれば、秋本議員と似たような政治活動をしていた国会議員は少なくないので、洋上風力に限らず他の再エネにも波及するだろう。

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