【第17回】リーマンショックから得られる教訓 議事録から見る白川日銀の無能ぶり

 2008年9月に起きたリーマン・ショックから15年が経過した。そこから得られる教訓は何か。

 当時の史実を振り返っておこう。2008年9月15日、米投資銀行リーマン・ブラザーズが経営破綻した。具体的には、リーマン・ブラザーズがサブプライム住宅ローンの損失によって連邦破産法11条を申請し、破産した。負債総額約6000億ドル(当時のレートで約64兆円)というアメリカ史上最大の企業倒産であった。

 サブプライム住宅ローンとは所得の低い人向けの住宅ローンであるが、ローンの際の審査方法が甘くなり、返済できないローンを作ったのが根本的問題である。

 当初のローン貸付者がそのままローンを保有していれば古典的な不動産の不良債権問題であるが、証券化(特定の保有資産について、そのキャッシュフローを裏付けにした有価証券を発行し、市場で流通させること)という金融技術により、貸付債権が転売され、各種不動産ファンドに組み込まれてしまった。

 金融商品がブラックボックス化し、どこに時限爆弾が仕組まれているのか分からなくなったため、猛烈な金融収縮が起こり、金融危機が起こったわけだ。

 日経平均株価は1万2000円台から、10月下旬に7000円割れするなど大幅下落した。当然ながら、世界各国の中央銀行はすぐ金融緩和で対応し、10月8日には欧米の6中央銀行は協調利下げした。

 しかし、これに日銀は加わらなかった。その結果、猛烈な円高に見舞われた。そして10月31日の利下げ、さらに12月19日の追加利下げに追い込まれた。

 自国通貨高というのは、経済活動にマイナスだ。そのため、為替を一方向に動かさないように各国は協調行動をするのに日銀が拒んだのは完全な失敗だった。

 この当時の日銀金融政策決定会合の議事録を見ると、9月16、17日の決定会合は「全くフェーズが変わった」状況なのに現状維持である。10月6、7日の決定会合を見ると、当時の白川方明総裁は「設備・雇用面での過剰を抱えている訳ではないため、大きく落ち込む可能性は小さい」という認識である。

 2007年中に有効求人倍率や失業率はピークアウトし、すでに雇用悪化に向かっていたのに、現状維持としたことや白川総裁の認識は、当時の日銀の無能ぶりを示している。

 リーマン・ショックが起きた原因は、金融技術に規制・監督がついていけなかったことにある。

 過去の金融危機を見ると、80年代後半のアメリカの貯蓄金融機関(S&L)危機、北欧の銀行危機もS&L危機、90年代後半のアジア通貨危機、アメリカのヘッジファンドLTCMの破綻危機が発生した共通の原因は、金融技術や制度に対応できなかったことだ。

 今後も規制・監督に追いつかない可能性はあるだろう。しかし、金融危機が繰り返される度に対応は迅速かつまともになってきた。金融危機がなくなることはないが、すぐに対応することで、結果としてダメージが抑えられることを期待したい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?