【第23回】日銀のマイナス金利解除 アベノミクス終焉で緊縮の時代へ

 日銀は3月18、19日の金融政策決定会合で「マイナス金利政策の解除」「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の廃止」「ETFなどその他資産買い入れの廃止」に踏み切った。今後の日本経済にどのような影響をもたらすのか。

 マイナス金利とは、民間の金融機関が日銀に預けている預金金利をマイナスにすることだ。日銀はこの政策によって、金融機関が企業への貸し出しや投資に資金を回すように促し、デフレ脱却を目指している。

 2016年2月に導入されたマイナス金利政策では、金融機関が日銀に預ける当座預金の一部に「マイナス0.1~0%」を適用してきた。それを「0~0.1%」へと利上げするという。

 日銀は「金融政策の枠組みの見直しについて」の中で「2%の『物価安定の目標』が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断した」として「これまでの『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』の枠組みおよびマイナス金利政策は、その役割を果たした」としている。

https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2024/k240319b.pdf

 この時点で、日銀が発表した内容が荒唐無稽なことが分かる。今後、物価がインフレ目標2%から大きく逸脱する恐れがあるためマイナス金利を解除するという内容であるならば納得できる。しかし、今のインフレ目標が維持されるのであれば、政策は継続されるべきだ。

 昨年から機動的に修正が繰り返されてきた長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)も正式に廃止された。その一方で「これまでと概ね同程度の金額で長期国債の買入れを継続する。長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する」という。

 また、ETFなどその他資産買い入れの廃止も決めた。日銀がETFを買わなくなれば、日経平均株価は大きく下落するのではないかという憶測が広がっているが、それはないだろう。

 実際、日銀によるETF買い入れ額は2021年から大きく減少しているが、日経平均株価は上昇している。これまではデフレ脱却を目指すために、日銀が買い手不在のETFを購入して支えてきた。しかし、今は外国人投資家が大きく日本市場を買い越ししているので、日銀はその役割を終えたといえる。

 いずれにしても、今回の金融政策変更の影響は広範に及ぶ。変動住宅ローン金利は、直ちに影響が出ないように工夫もされているが、いずれ上昇するだろう。

 今回の決定で重要なのは、事前に政策決定の詳細がマスコミにリークされていたことだ。これは、断じて許容できない。なぜなら、インサイダー取引的なものを誘発するからだ。

 以上より、今回の金融政策の枠組み変更でアベノミクスが終焉し、アベノミクス以前の金融引き締めの時代へ後戻りするだろう。


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