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ささやかな贈り物(エッセイ)

家で、洗濯機を買った時の事。

洗濯機は業者の人に頼んで配置してもらわないといけない電化製品の為、家電量販店で手配して貰った業者の方に設置してもらう事になる。

設置する当日。
業者の人が来て、無事に洗濯機が取り付けられ、業者の人が帰ろうとした時、親が前もって買っておいた缶コーヒーを渡していたのだ。

『あ、ありがとうございます。』
業者の人は断ることなく、スッと缶コーヒーを貰ってくれた。

『何で缶コーヒーあげた?』
『えっ?お礼として。貰えたら嬉しいでしょ』
『ふーん』

最近は、何かと些細な事を気にしたり気にされたりする世の中になった。

昔の様に、いい意味での大らかさやいい加減さははだいぶ無くなってしまった様に思う。

けれど、私もこういう事をしてもらえたら嬉しいと思った。
自分がされて嬉しい事は、他の人でも嬉しいはず。そんな自分に対する言い訳を考えながら『うん。自分がする時になったらしよう。しよう』と思ったものだ。

◈◈◈
何年か振りに降った大雪の日。
翌日に雪は止み、路面に雪は殆ど残っていないかったものの、やっぱり不慣れな感じはする。

雪の降った翌日は、ごみ収集の日でもあった。私はこの日、古本屋に頼んでいた本を受け取りに行く予定になっていたので出掛けた。

その時の帰り道。

たまたまごみ収集車の車が前を通り過ぎある一軒家の前にあるゴミステーションのゴミ回収の人が片付けていた。

その時、一軒家の男性が外に出てきて、ゴミ回収の人の人数分、ペットボトルのお茶を差し入れしていたのだ。

ゴミ収集の人の顔は分からなかったけれど、きっと、嬉しくて有難かったと思う。

私はこの光景を見て、いいな〜と思い、優しくて、思いやりのある光景に一人ココロが綻んでいた。

ささやか、でも、大切で、優しいもの。

無くしては、いけないもの。

無くないで欲しいと思う…


ささかな贈り物。


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