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アルファポリスライト文芸大賞の、受賞傾向についての考察

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二〇二三年八月十八日に、初めての紙書籍が発売されることになりました。
↓こちらです。

「3日戻したその先で、私の知らない12月が来る」

―ずっと忘れられない恋がある

アルファポリス主催第5回ライト文芸大賞大賞受賞作。
三日間だけ時間を巻き戻せる能力を持った女子高生を主人公にした、青春恋愛作品です。
見どころは、恋愛、友情、家族愛などテーマを変えて描かれる瑞々しい青春模様とSF要素でしょうか。
書店でお見掛けした際に、お手に取って頂けますと幸いです。

今年ようやく二作品の書籍化にこぎ着けたわけですが、正直ここまでの道のりは平たんではありませんでした。
そんな私が最初に小説の投稿を始めたのが、今回出版させて頂くアルファポリス様でした。
ファンタジーや恋愛小説をいくつか手掛け、そこから少しヒューマンドラマ色の強い作風へと移行していく中で、どのジャンルで投稿するのが正解なのだろう? と悩み選んだのがこのライト文芸というジャンル。
まもなく「第2回ライト文芸大賞」が開催されるということで、さっそく4作品を参加させます。
結果はまあ、あえなく玉砕(笑)
箸にも棒にも掛からぬ結果で終わりました。

(まあ、そんなもん)

そこで、過去の受賞作品を勉強がてらに読んでいきます。その過程で出会ったのが、鞠坂小鞠先生の「また明日、君の隣にいたかった」でした。
丁寧に描かれる心情。巧みな伏線回収とどんでん返し。その高い文章力に打ちのめされて、このレベルの作品が書けない限り受賞はないのだと痛感しました。
しかし同時に、これに比肩するものが書けたら受賞できるんだ、と奮起をしたのです。

(今思うと、すごい自信だな、と苦笑い)

私もここで受賞したい! と奮起して、翌年から挑戦を重ねていくことになります。
第2回 → 落選
第3回 → 奨励賞
第4回 → 奨励賞
とステップアップをしていき、昨年ようやく大賞を受賞することができました。
応援してくださった方々、選考をしてくださった編集部の方々、本当にありがとうございました。

これは、SNSなどで私が繰り返し発信していることなのですが、自分の作風に合っているコンテストに参加するのが何より大事です。
作品が素晴らしかったとしても、レーベルが求めていないものでは受賞に至らないのですから。
その点アルファポリスさんはジャンルによって強い弱いは確かにあるものの、すべてのジャンルで毎年作品の募集があります。
ぜひ一度、参加されてみてはいかがでしょうか?

……と前置きはここまでにしまして、第1回ライト文芸大賞から現在までの、また同時に、本年度から統合されたドリーム小説大賞の第9回以降のデータを諸々集計してみました。
本賞で受賞しやすいのはどういった作品なのか? の分析などに役立てて頂けますと幸いです。


1,受賞傾向

まずは、どういった賞が与えられるのか? について公式サイトから抜粋します。

大賞
応募作品の中から、最も優れた作品を「大賞」として選出し、賞金20万円をお贈りします。

読者賞
開催期間中は読者投票・アクセス数などによりポイントの集計を行います。
ポイント最上位作を「読者賞」として選出し、賞金10万円をお贈りします。

テーマ別賞
本賞では様々なテーマのライト文芸を募集しています。
優秀な作品が集まった場合は、それぞれのテーマにあった賞(例:命の輝き賞、切ない別れ賞など)を授与することもあります。
もちろん、下記のテーマ例に当てはまらない作品も大歓迎です!

テーマ例
■命の輝き
難病と闘い生死と向き合う姿や、障がいを抱えながら日々を懸命に過ごす様などを描いた、人間の生きる力を感じられる物語。

■家族愛
親子や兄弟の間に生じた軋轢を乗り越える再生の物語、困難な状況で支え合う夫婦のお話など、読んだ後に心が温まるストーリー。

■切ない別れ
想い合いながらも離れてしまう恋人たち、親友とのすれ違い、大切な人との 終つい の別れなどをテーマとした、涙あふれる感動作。

■何気ない暮らしの景色
都会の喧騒から離れ、一日一日を穏やかに、丁寧に過ごす姿。何気ない日常での小さな発見や、心理の機微を描いた作品。

■青春
部活動や友人との交流の中で葛藤しながら、少しずつ成長していく姿。青春の一幕を瑞々しい感性で切り取った小説。

■料理・グルメ
普段の何気ない食事から特別なごちそうまで、美味しい料理とそれを取り巻く人間関係を描いた味わい深いお話。

優秀短編賞
1〜3万字前後の短編で、優秀な作品には「優秀短編賞」を授与する可能性があります。
加筆した上で書籍化の可能性もあるので、初めて執筆される方もぜひ挑戦してみてください。

続きまして、各賞ごとの受賞数です。
(なお、読者賞は必ず選出されますが、最終選考に残っていなかった作品は集計しておりません)

大賞 6
優秀賞 5
切ない別れ賞 2
青春賞 5
命の輝き賞 2
家族愛賞 4
料理・グルメ賞 1
特別賞 9
優秀短編賞 2

一番多かったのは「特別賞」
「特別賞」ってなんぞや? 

テーマ別賞の作品にわずかに及ばずながらも優れた作品であった二作品を、特別賞に選出した。

との文言が過去の賞でありましたので、テーマ別賞に合致しないながらも優れた作品に与えられる賞、との認識でいいのでしょうね。
それから「優秀賞」

それぞれ個性的で異なる魅力があったが、いずれも大賞には一歩及ばなかったため、新たに優秀賞を設けて編集部内での評価を集めた「八月の魔女」を選出した。

第2回ライト文芸大賞 選考概要より

との文言が第2回ライト文芸大賞の選考概要にあります。
大賞に次ぐ評価を得た作品に与えられる賞、でこちらは良いでしょうか?
ただし、上記二つの賞は今回の第6回では選出されませんでしたので、今後この名前で賞が出るかどうか不明瞭です。
またテーマ別賞でもっとも選出が多いのは「青春賞」。次いで「家族愛賞」となります。

ずっと賞レースを見てきた身として、「料理」「家族愛」「青春恋愛」の三つをテーマにした作品の受賞率が高いのではないか? と感じています。
実際のところ、「大賞」に選出された作品や、今回集計していませんが「奨励賞」に名を連ねる作品群にも、これらの要素を含んだものが比較的多いです。

2,文字数

文字数の制限はありません。
……ありませんが、受賞した作品にははっきりと傾向が出ています。
おおよそ7~15万文字の間に収まる「完結作品」です。
なぜこの文字数から選出されることが多いかですが、レーベルとして求めているのが、「文庫本」でかつ「単巻完結作品」だからだろうとみています。
文字数が少なすぎると加筆して一冊分の分量にするのが大変ですし、多すぎる場合、削って適切なページ数に収めるのが大変なのですしね。

※実際私も、書籍化にあたって結構文字数を削っています。

集計結果はこんな感じ。

※作品が消されていて、集計できなかったものは除外しています。

もっとも文字数が多い作品で220,101(まだ連載中の作品です)
もっとも少ない作品で、(優秀短編賞)を除けば39,081でした。
平均すると、122,059文字となります。(優秀短編賞を除いて集計しています)
ざっと見ても、7~13万文字の間に受賞作品が集中しているのがわかるんじゃないかなと?

とはいえ、電撃小説大賞など公募の高次選考作品とか、ライト文芸~一般文芸界隈の書籍化作家様の参戦がわりとあるので、必然的にここらに収まっている可能性は残ります。

3,完結率


「単巻完結作品」を求めている、とさっき書きました。
これは私の完全な予測なのですが、根拠はちゃんとあります。
受賞作品、ほぼほぼ間違いなく「完結作品」なのです。

というわけで集計結果。

集計が可能だった34作品中、33作品が完結済みです。
全部確認はしていませんが、おそらく選考期間中にほぼ全ての作品が完結設定になっていたと思います。

4,書籍化率

さて、残酷なデータのお時間です(苦笑)
ご存じの方が多いかと思いますが、ライト文芸大賞は書籍化確約の賞ではありません。
特にドリーム小説大賞が始まった初期のころは、作品の応募数が少なく(150作品前後とか)、また大賞が満遍なく選ばれているわりにほぼ書籍化にいたっていません。
それを思うと、「青春小説大賞」の後継(?)としてライト文芸大賞が登場し、文庫のレーベルができて……とこのあたりから応募数が増え、書籍化率がどんどん高まってきたように思います。
ここ数年は応募数が四桁を超えるのが当たり前です。(ありがたいことですね)
今後、本賞はますます盛り上がっていくのではないか? と私も期待しています。

さて、2018年からの集計結果。

第6回の受賞作はまだわからないので集計から外し……2018年以降の全受賞作品33作品のうち書籍化されたもの(予定含む)は13。
比率は39.4%です。
いや、そうなんですよ。
当初私が狙っていたのは「青春賞」でして、仮に青春賞を受賞できたとしても、出版化に至らない可能性はあったんです。
ここに気づいたとき、少し怖かったですね。
大賞を取れなかった場合、また一からの再スタートなんじゃないかと。
嬉しい反面、これはやっぱり凹みます。
でも、それでもいいやと思っていたんですよね。
それだけ、受賞して認められたいとの思いが強かったんだと思います。

ですのでまあ、最高の結果でした。出版化の打診もありがたいことにかなり早い段階で頂いていましたし。
こう考えると、私が参加した第5回は書籍化率がとても高くて良かったですね。
ほんと、同期のみなさんよろしくお願いします。末永く仲良くしたってください。

5,タグ

サイト上に残っている全ての受賞作と、消されてはいるものの他サイトで読める状態だった一作品に振られていた「タグ」を全部集計してみました。
タグを振ってある、ということはそれがその作品の「売り」なわけですので、どういった作風のものが受賞しやすいのか傾向が見えてくるかもしれません。
見えてくるかもしれません。
見えてくるかもしれません?

まあ、そのくらいの認識で見てやってください。

一位:日常(16)
一位:青春(16)
三位:恋愛/恋愛要素あり(15)
四位:家族/家族の絆(8)
四位:切ない(8)
四位:高校生(8)
七位:ほのぼの(7)
八位:友情(6)
八位:ヒューマンドラマ(6)
十位:じんわり(5) ※ほっこり・じんわり大賞から連続してエントリーしている?

以下、付けられていた数が多かった順に並べていきます。
(4件)
シリアス
幽霊
ご飯もの/料理

(3件)
成長/成長物語
学園
現代
ライト文芸
幼馴染

(2件)
女子高生
ボーイミーツガール
海沿い/海
少し不思議/不思議
ファンタジー要素あり/ファンタジー
ほっこり
お仕事
連作短編
男主人公
病気


コメディ
ハッピーエンド ※私も振っていたんですが、意外と少ないのが面白かったです。切ない作風が多いので、ネタバレしたくないとか?

以下、1件だけ振られていたある種希少なタグ群です。

「ツンデレ」「田舎町」「秘密」「見えない」「魔女」「癒し」「泣ける」「生きる」「医療」「医者」「救命士」「四季シリーズ」「病院」「消防士」「カフェ」「子育て」「完結」「大学生」
「シェアハウス」「飯テロ」「女主人公」「野球」「片思い」「姉妹」「兄妹」「酒」「グルメ」「短編」「宅飲み」「居酒屋」「残念イケメン」「小説家の姉と新社会人の妹」「SF」「美少女」
「まったり」「ステップファミリー」「トラウマ」「夫婦」「京都」「函館」「笑える」「超能力」「微ざまあ」「バドミントン」「どんでん返し」「家事男子」「謎解き要素あり」「血の繋がりがない家族」
「手負いの子猫ヒロイン」「父親はクズ」「微妙に会話がかみ合わない」「どこまでもマイペースな継母」「感情」「色」「お弁当」「陸上競技」「部活」「リレー」「バトル」「女キャラのみ」
「キャラ多め」「個性的なキャラ」「社会人」「OL」「動画」「クリエイター」「イラストレーター」「声優」「夢」「たぶん猫」「もふもふ」「猫」「結婚」「離婚」「ピアノ男子」「桜」

かなり独特なタグが多いので、「それ私のやんw」などと思う人がいるかもしれません。
「手負いの子猫ヒロイン」ってなんですかね。ちょっときになりますね。
ちなみに「微ざまあ」は私です。ざまあ……ですか? 一応そういう要素はあったけどさ……。本来の読者層に届かないタグというのがこういうのだと思いますw

6,まとめです

・テーマ別賞に合致するものが強い(特に青春、家族愛あたり)
・文字数は7~13万(多くても15万)あたりが有利
・完結作品が有利
・大賞以外の書籍化率は低めだが、近年書籍化率が上がってきた感はある?
・奨励賞からの書籍化例は今のところ一件のみ(私も奨励賞から出版申請が通りかけた?ことがあるので、諦めないで!)
・タグの傾向から見ると、日常、青春、恋愛、家族の絆、切ない、高校生、このあたりが強い

※あくまでも傾向です、ということを頭においておいてくださいね

7,余談

最後にちょっと余談。
七月三十一日に発表された第9回歴史時代小説大賞において、このような選評が出ました。

『書籍化を見据えた選考を行う中で、編集部内からは「非常に優秀な作品だが分量が長すぎるため書籍1冊にまとめづらい」といった声も上がった。』

本コラムの2番で受賞作品の文字数の傾向について触れましたが、奇しくもほぼ同じ内容の選評となっていました。
文字数が多かったらダメ、とは私は思いませんが、少なくとも文庫本一冊分の文字数で物語がしっかりまとまっているか?
これくらいは注意しておいてほうがいいかと思います。
編集作業は作者と編集さんとの二人三脚で行うものですが、最終的には作者の筆力勝負です。ある程度の文字数できっちり物語をまとめる力は、つけておいて損はないと思います。
たとえ複数巻想定の長編だったとしても、最初の勝負は必ず「一巻」から始まるのですから、ね?

余談その2

『ライト文芸大賞で、部活物は受賞する見込みがありますか?』

という質問を受けたことがあります。
当然私の主観による回答となってしまうのですが、「有利ではない。けど、可能性はある」だと思っています。
過去の受賞作品の中に、探すと部活物が二例あります(ごめんなさい。探すともっとあるかも?)。
ひとつめが「第8回青春小説大賞(ライト文芸大賞の、前身みたいな賞です」の大賞作品で、ふたつめが第13回ドリーム小説大賞の優秀賞作品です。
前者が野球で、後者が陸上競技題材です。
また、2012年刊行ではありますが、吹奏楽を題材にしたアルファポリス発の書籍化作品もあります。

とまあ、前例はあるのですが、それでも決して「有利ではない」とも思うんですよねえ。
ですが、私も選評でスポーツの描写を褒められていますし、可能性はあると思うのでどんどんチャレンジしてみてほしいです。

余談その3
「3日戻したその先で、私の知らない12月が来る」ですが、2021年の12月に24hポイントが五桁を突破し、出版申請が出せる状態に一度なっていました。
悩みました。ここで勝負をかけるべきかと。
おそらく、24hポイントがここまで伸びる機会は今後訪れないだろうと思っていたので。
ですが、ここで申請を出してもし却下された場合、翌年の大賞で不利に働くのではないかと?
それが怖くて結局は見送りました。その結果受賞に至ったので、今思うとこれも一つの転換点だったのかもしれないなと。

それでは最後にもう一度宣伝です。

※しつこくてゴメンね!

好評発売中です。
▼試読&各書店様リンク
https://www.alphapolis.co.jp/book/detail/1066677/9686


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