「パワハラ」というものに産業医が関わるとき その1

産業医として働いていると、パワハラに関連した依頼を受けることがある。
パワハラを受けているので相談したい、
自分に対してではない上司のパワハラを止めさせたい、
という個別相談のこともあれば、
パワハラについてレクチャーしてほしい、
といった企業の管理業務としての依頼もある。

個別の相談であれば、
精神科産業医であるからして、何としてもやり様はある。
自分が知らないことであっても<いっしょに調べながら取り組みましょう>とはできるから。

ただし、企業の管理業務としての依頼については、
<産業医にお任せあれ!>と簡単には言いかねる。
もちろん、企業の中で起きる問題の解決を支援する、
それこそは外部の専門家である産業医の役割であるから、
お役に立てるよう努めなくてはならない。そうありたい、のだけれど。

まず、パワハラは企業の中での従業員同士のトラブルであり、労務問題である。
であるからには、その解決は企業としての責務であるし、
それを支援するのは社労士や弁護士の役割となるのが本来だろう。

ただ、社労士さんはともすると定常業務の処理は得意でも、
こういったトラブル対応などは苦手とする方も多いようであるし、
顧問弁護士をもつ企業ばかりとは限らない。
そんな時に産業医に声がかかってくる、といった流れだろうか。
産業医としての業務の辺縁。関連分野ということだろう。

パワハラ防止法が定められたので、基本的にはそれに従って現実的な対応が取られていく。
そのなかで、「パワハラが起きないように、パワハラについての啓蒙が必要である」ということで「パワハラについての研修をしてもらえませんか?」という依頼になる。

パワハラについては医師の医学知識には含まれないので、
パワハラについての本や、サイトを調べ上げて、
「パワハラの6類型」であるとか、「パワハラを受けたら相談窓口に!」といったことをお話するわけだが、いまひとつ腰のすわりが悪い。
それは、自分がそれについての専門家ではない、という思いと、
産業医がパワハラについて研修をするということは<問題があったら、まず産業医に相談してね!>というのが医師にはなじみの台詞と同じメッセージとなってしまうから。

実際のところ、パワハラのこと自体を最初に産業医に相談されても、
<それはパワハラ窓口へ>と言わなくてはならず、
困っている人には二度手間になるだけで、支援にならないことを恐れる。
傍から見たらそれは役に立たなくてもしょうがない、と思うかもしれないが、医師とはそれを気にするイキモノ。

そんなことが気になるのは、
私がまだ勉強が足りないから、なのでしょう。
もっと頭が軽く、取ってつけたことでも偉そうに講義できたらいいのかもしれないが、残念ながらそんなに面の皮は厚くないし、
そんな状態では聞いてくださる方に失礼だ。
ということで、いろいろ勉強し続けてきて、
ようやくこれがいいかもしれない、という本に出合った話はまた次回。

この項続く。

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