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ラストシーンをもう一度

はじめましてのご挨拶の時も、それから、の話をした時にも、今までの数少ないnoteの中で、好きな物語についてちょっとずつ言及していた。きっと誰かに言いたくて堪らないの。だから少しだけ話させてくださいな。

どんな物語が好き?と考えると、あり得ない程作り物めいて、でもどこかでありえそうなもの。静かに余韻を残すもの。
私たちはほんの少しだけ登場人物の人生を覗き見しているだけで、物語が終わっても、彼らのそれからの日々の営みを想像できるもの。


お気に入りの映画を2つ3つ。ラストシーンが特に好きなものなので、ネタバレます。(極力中身について触れないように努力するけれど)



Sing street  シング・ストリート(2016)


あり得ない程作り物めいて、でもどこかありえそうなもの。
高校生がバンドを組むなんて何処にでも転がっているお話なのだろう。でもなんだか特別。きっとバンドに夢中になっていた人が見たら、青臭さを思い出して恥ずかしくて、でもほっぺが緩んじゃうような。
80年代の音楽に彩られていて、それに影響されて作った体のオリジナル曲も良くて。良すぎて本当にファンタジイなのだけれども、ままならない部分とのバランスがとても好き。夢と現実。赤と青を綱渡りしている感覚で。
ラストはファンタジイが振り切れるけれど、空は灰色だし海は荒れて波が高い。この先の事なんて、いつだって不確かで曖昧だね。
それでもお兄ちゃんのガッツポーズに何だか泣きたくなる、そんな物語。(お兄ちゃんとウサギの彼が大好きです)




Once ダブリンの街角で(2007)


静かに余韻をのこすもの。
これもジョンカーニー監督の作品。単純に彼の作品がとても好きなだけです。はじまりのうたも大好きだけれど、あれはラストシーンというよりも様々な場面1つ1つがとても残る映画。
こちらは低予算だろうなあ、という映像だけれど、だからこそ話と音楽が際立つ。登場人物は「男」、「女」とだけ記されているだけ。ダブリンの街角でギターを弾いている彼と花を売っているチェコ移民の彼女。とても静かに、ひっそりと彼らは交錯して音楽を共有するの。様々な場面、色々な場所で生み出される音楽が本当に素敵。
物語の間中、空は曇っていて画面は暗い。ラストシーンに僅かに明るくなって、はじめて引きの映像が入る、この余韻を残す感じがとても好き。




紅の豚(1992)


物語が終わっても、彼らのそれからの日々の営みを想像できるもの。
さて、急にジブリ。だって好きなんだもの。私の中ではポルコとアシタカが同率一位。映画館上映、紅の豚もしてくれないかなあ……。
紅の豚も作り物と本当を行ったり来たりするようなお話だと思っている。ファシスト党に追いかけられる豚なんて。
ポルコをはじめとして、空の男たちは皆、最高に馬鹿で最高に格好良い。きっと悲しみとか辛さ、全部ひっくるめて愉快に、そして逞しく生きているの。
ラストシーン。派手な見せ場の後に静かに語られる、それから。
ひっそりと提示される秘密事、飛行機の音、青い空。
全部全部の余韻と、時には昔の話を。



あのラストシーンをもう一度。




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