見出し画像

初めて山小屋に泊まった日 【槍ヶ岳】




山が好きで、
山小屋での生活まで経験するに至った私。

今回はそんな私が
初めて山小屋に泊まった日 のお話です。







ところで、
トップの写真を見て 海外の写真
だと思う人もいるのではないでしょうか?

実際、友人に山の写真を見せると
「これ日本なの?」とよく聞かれます。


えぇ、日本です。

この写真は飛騨山脈、
岐阜と長野の県境に位置する 槍ヶ岳 からの写真です。





私が初めて山に登ったのは5年前。
2015年のこと。


その1年後、
1泊2日の登山に挑戦しました。




目指すピークはそう、
登山者憧れの山 槍ヶ岳 です。


【槍ヶ岳】
飛騨山脈
岐阜、長野の県境に位置

標高 3,180m
(日本で5番目に高い山)

尖った山の形から
日本のマッターホルン の愛称も。
登山者憧れの山

“アルプス一万 子槍の上で~”の子槍は
槍ヶ岳の子槍のこと。

<ルート>
1日目:上高地 → 槍ヶ岳山荘(宿泊)
2日目:槍ヶ岳山荘 → 槍ヶ岳 → 上高地

距離 :約38km (片道約19km)

1日目はコースタイム8時間

そんなに歩けるのかな。
大丈夫かな。

友人に誘われた時、
自分の実力に自信がなくて
一度返事を保留にしました。


会社の先輩にも相談しました。
先輩は登山経験はおろか、完璧なインドア派です。

そもそも8時間も歩いたことあるの?



、、、ない。

「しかも山道だよ?名駅や栄歩くのとは違うからね?


た し か に 。


いやいや、もちろんわかってますよ。
それくらい。
まさかインドア先輩からそんな事を言われるとは。
思わず笑ってしまいました。


でも恥ずかしい話ですが、
当時そんなに長く歩いたことはありませんでした。

せいぜい日帰り6時間程度。



それから調べまくりました。
いろんな人の登山記録、ブログ、地図。


本当に行けるのか検証です。
、、いや私が行っても大丈夫な可能性を探す為に
調べまくりました。



行きたかったんです。
単純に山に登りたかったのもありますが、
その当時上手くいっていない事があって
ちょっと背伸びした挑戦をしたかったんです。

山をがんばって歩いている間は
嫌なことを忘れられる。

それに、あんな高い所に自分の足で行けた
っていう自信が欲しかった

そして、調べてわかったこと。


・登山口の上高地から途中の横尾山荘までは
ほぼ平坦な林道3時間。
…てことは槍ヶ岳山荘まで登り道は実質5時間!?


・上高地の標高は約1500m
横尾山荘の標高約1600m
槍ヶ岳山荘の標高3080m
…横尾から槍ヶ岳山荘まで約1400mを
5時間で登るということ。
地図的にはどんどん急な坂道になっていくっぽい。


・槍の穂先(ピーク)までの道は
鎖、梯子のオンパレードで大変らしい。


・景色は絶景


山に登らない方にはイメージしずらいですよね。
こんな感じです。

上高地からは るんるん散歩。

横尾山荘を過ぎてからは
どんどん急になっていく道をどかーーーんと
ぜえはあ 言いながら登ることが予想されます。
道中、来てしまったのを後悔する事もあるでしょう。








、、3時間散歩した後気合いで5時間頑張る
って思えばいけるんじゃないか?

もう思考が むちゃくちゃ です。
いきたい気持ちが先行している私は
どうにか いける と思いたかった。

(実力不足であることは理解してるんですよね。)





で、結局そんなこんなの葛藤の末、
挑戦することを決めました。



今思えば言語道断です。
力不足の状態で行って天候不良や
思わぬ事態にあったらどうするんだって話です。








挑戦当日



当日の朝は、8月の夏真っ盛りなのに
空気が冷えていて気持ち良かったです。
夏でも高地はこんなに涼しいのか、、。


まずは さわんど駐車場 に車を泊めて、
そこからはバスで上高地へ移動です。

上高地は私と同じように
山を楽しむ人がたくさんいました。

ザックの紐をしめて体に合うよう調整したり、
地図でルートを見返したり
わくわくと緊張感が入り交じった雰囲気。

河童橋からは トレーニングで登った
焼岳 がどーんと立っていましま。

自分が登った山を見るのは好きです。


あぁ、あんな高いところまで
私は歩いて行ったんだ。
そう思うとじーんと嬉しくなります。

そして今日はもっと高いところへ
自然と胸が高鳴ります。

横尾山荘まではるんるん散歩だ!
緑の水草が綺麗な川を横目に気分も上がります。


、、まあ実際そんな上手くいく話はないんですよね。
歩き続けるのは暑いししんどい。


でもこの3時間の散歩は無事クリア。

ここから先がいよいよ山本番です。
大丈夫かなー。




途中 槍沢ロッジ という山小屋で休憩しました。
もう暑くてへろへろです。

そこには外に望遠鏡がぽつんと置いてありました。
鳥とか見えるのかな?
そんなことを考えていると友人が言いました。
“覗くと槍ヶ岳が見えるんだって!”


覗くと槍(槍ヶ岳)が見える!?
望遠鏡で覗かないと見えないの!?
こんなに歩いてるのに!


あぁなんてこった。

でもこの時はまだ体力が残っていたので
先に進む以外の選択はありません。

コースタイム的には宿泊予定の
槍ヶ岳山荘まで残り4時間です。

そしてこの4時間はずっと炎天下。
森林限界を越えているので途中からは
日陰になる背の高い木がありません。










そしてやっと見えました。

あのピラミッドみたいなのが槍ヶ岳です。






、、遠すぎる。

やっと見えた喜びと
目標までの距離に対する恐怖が
もうごちゃごちゃ。


でも、目の前には今までに
見たことのない圧倒的な自然がありました。

すごいところに来てしまった。


感動が直ちにエネルギーへと変わります。

どんどん近付いていきます。


槍ヶ岳山荘も見えてきました。
見えますか?写真の中の建物。

あ、槍の正面右下にある建物(赤丸)は違いますからね。
こっちです。こっち。

遠すぎるわっ!

もう本当にへろへろ。

でもここで諦めたら私は死ぬ
諦めるわけにはいかない。

デッド オア アライブ

そんな言葉が頭に浮かびます。

※豆腐メンタルの私の心は
雪山遭難級の事態になっています。
多少大袈裟ですがご了承下さい。


まだ死ぬわけにはいかない。

ゆっくりでも歩みを止めないことが大切
焼岳で出会ったお兄さんの言葉を
何度も心の中で囁きます。

がんばれ!私!





最後の辺りは
“あと○○m”の標識がちらほら。

50mってこんなに遠かったっけ?


当然です。
もう私の体力は3,4m歩く度に
息を整えないといけない程になっていました。

とにかく足が重たくて息が苦しい
諦めたら死ぬ。
こんなに辛いのは初めてです。

すれ違う登山客が声をかけてくれます。

“がんばれー!”

“あと少しだよ!”

涙が出そうでした。


そしてやっとの思いで山小屋に着きました。

もう涙が止まらなくて
汗と涙で顔はぐしゃぐしゃ。


とりあえず
友達が買ってくれたペプシで乾杯。
本当に美味しくてまた泣けました

で、寝た。
体力を取り戻さないといけません。


夕食に目覚めるも、疲労から食欲がわかない
喉を通らない。おかしいなあ。

こんなにおいしそうなのに。

実際美味しいです。
でも、食べれない。


で、また考えた。

これ食べないと明日体力もたなくて死ぬ


完全に思考がどう生き抜くかに変わっています。


生きる為に食べきりました。
大嫌いなオレンジまで残さず。
(サバイバルかよ。)

こんな気持ちで食べ物を食べるのは初めてでした。
山ってすごいですね。


そして山の星空を眺めることもなく寝ました。


屋根と壁がある場所の安心感
柔らかい布団。
ここ(山小屋)があってよかった。
心底そう思いました。

翌日はガスガス(霧がかった状態)の中、
槍ヶ岳を登頂。

鎖、梯子のオンパレード”のとこです。
ぎゃあぎゃあ言いながら登りました。

雲の中。
すごいところに来てしまった。

この雲がなければ
アルプスの山々が見えたんだろうなあ。

でも、私にはそんなことどうでも良かった。

自分の足で雲の上まで来た。

雲海を見るのも初めてだった私にとっては
その事実だけで十分でした。

もしかしたら“雲の上にいる”方が
山並みよりもその高さを実感しやすくて
私には良かったのかもしれません。

雲の上にいる。

すごいことです。

雲の切れ間からは
さっきまで自分がいた山小屋が見えました。

天空


ここは 天空 だ!
心で叫んだ。

山小屋は雲に飲まれて
すぐ見えなくなってしまいました。

一瞬しか見えなかったけど
その景色は私の中に強く残っています。












帰り道は土砂降りの雨に撃たれながらも
無事に下山することが出来ました。


あぁ、よかった。
生きて戻れた。


帰りの車中、もう山に登りたい
と思っている自分がいました。
昨日は死ぬ思いで歩いてたのに。

またひとつ山が好きになっていました。





以上、
初めての1泊2日登山(反省と感動の日)
の思い出でした!


登山に対する私の姿勢を変えた山です。

“山を舐めちゃいけない”

その時の私も山を舐めているつもりは
まったくなかったけれど
やっていることは完全に舐めていました。
ごめんなさい。


後々調べるとこの日の症状は
高山病だったのかもしれないこともわかりました。
当時は疲労からくる偏頭痛だと思っていました。
そんなことにも気付けないレベルの自分が
本当に恥ずかしいです。
実際軽度の症状であれば
見分けはつかないかもしれません。
でも高山病も重症化すると命に関わります。
ちゃんとした知識が必要だと感じました。



私の山登りに対する姿勢が変わり、
今まで以上に下調べを入念に、
歩き方についても調べ直しました。

山に行く時は自分の歩くペースを確認し
コースタイムに対してどのくらいの
ペースで歩くことが出来るのか
把握するようにもなりました。

それをもとに登山計画を立てています。


これからも反省を活かして
楽しみ、挑んでいきたいと思います。










もうすぐ新しい仕事が始まる予定です。

次の仕事は 山小屋 です。

初めての山小屋で感じた事を忘れず、
安心感、安らぎをもたらせる存在であるよう
心掛け努めていきたいと思います。


また今は平常心.通常でいる事が難しい世の中です。

山小屋も営業自粛。
私の入山も1ヶ月遅れとなっています。


どうなるかわからないけど、
いろんな事を学びたいと思っています。
感謝の気持ちを忘れずに。
みんなと仲良く笑顔で過ごす!





以上!
がんばる!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?