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鬱病患者のための十六穀米ハック

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はじめに

 この記事を読む前に、わかっておいて欲しいことがいくつかある。
 鬱には波があり、できるときとできないときがあるということ。
 できるときは「おっ、意外と元気じゃん!」などと言われることもあるが、それはできるときだからである。
 できないときは元気を装って外出し、人に会ったりはできないのである。
 外に出られないくらいならまだいいが、風呂に入るのが億劫になったりもするし、そういう状態になると、必然食生活もヤバくなりがちである。
 もちろん、食生活がヤバくなっていいことはあまりない。
 だから、できるときにできるだけ余剰を稼いでおかねばならない。

 このあたりを前提としてお話していきましょう。
 ちなみに、ランチに1,000円をポンと出せる精神/経済状態の方のお役にはあまり立たないかと思います。

 ※筆者は医者ではなく栄養学の専門家でもない、いち鬱病患者であることを留意されたい。


食生活崩壊の代償

 最終的にして不可逆的な「解決」として、「死」あるいは「慢性病」というものがあるのはよく知られているが、そこまでいかなくてもいろんなことが起きる。
 特に一人暮らしだと、「料理する気力がない」は悪い二つの分岐に入りがちである。
 まずは「食べない」。これは当然だめである。一日一食を不規則な時間に……というような状態になると、回復には結構時間がかかる。
 それから、「食生活の極端な偏り」。これもだめである。「何か食べないといけない」ということはわかっているからなんとかそれはクリアするのだが、カップ麺を食べ続けたり、最寄りの飲食店で同じものばかり食べたりすると、当然栄養価は偏る。
 であるから、このふたつのルートに入るのは避けたい。
 でも、これがなかなか避けられないというのもよくわかる(なにせ僕も体験したからね)。

お金がかかる

 よしんば上述のルートを回避したとしても、ほかにもあまりよろしくないルートに入ることがある。
 それが外食・コンビニ・惣菜頼みになることで、これは社会的になんとかなっているように見える人でも嵌る穴だから、鬱病患者が嵌るのはなかなか責め難いものがある。
 ただ、このループに入ると、奇跡的に栄養バランスをギリギリキープできたとしても、当然自炊よりはお金がかかる。
 鬱病患者はお金が充分にないことが多いし、そもそもいまの四十代以下は概してお金がない傾向にあるので、エンゲル係数の増大がQOLに影響を与えることも考えておかねばならない。

炊飯器と冷蔵庫と電子レンジ

 上述のよろしくないルートを避けつつ、できないときもやり過ごしていくためには、若干のインフラを必要とする。
 皆さん、炊飯器はありますか? ないならすぐ買おう。
 冷蔵庫はありますよね? ないならいますぐ買おう。
 電子レンジはありますよね? ないならいますぐ買おう。
 これらはリサイクルショップやジモティで、安く調達することができる。運べなかったら友人に頼ったり、タクシーを使ってもよろしい。

 はい、三種の神器が揃いましたね。

一日30品目問題

 ときに1985年、厚労省の言いて曰く「一日30品目の食材をとるべし」云々。
 これは「愚直にやるとカロリーオーバーになるのでは?」などと指摘されたため、いまでは「主食、主菜、副菜を基本に食事のバランスを」という表現に変えられているが、ある意味わかりにくくなったとも言える。
 要は、「カロリーに気をつけたうえで、できるだけバランスよく食材の種類を散らせ」ということである。
 とはいえ、健康な人だってこれを完璧にこなせるのかと言われたら難しいだろう。
 アメリカでは随分前から指摘があるが、「健康は富める者たちの権利」である。低所得者が多く住む地域では肥満もまた多く見られる……というようなことがいろんな本に書いてあるから、興味のある人は読んでみるのも一興だろう。
 ……が、アメリカの社会問題を把握しても、自分の目の前の困難が改善するわけではない。
 今日の本題として、ひとつだけ僕なりのハックを書いておく。

十六穀米活用術

 そもそも主食・主菜・副菜を毎食ごとにパズルをする余裕は我々鬱病患者の生活にはない。
 思い切って固定すべきであろう。そして、固定するからには、できるだけよい状態で固定すべきである。
 僕はもち麦を混ぜるところから始めてみたが、最終的には十六穀米に落ち着いている。ここで簡単に説明しておくと、「十六穀米」というのは以下のように市販されている商品で、もち麦はもちろん、いろんな穀物(豆類も)がブレンドされており、白米に対する比率も計算されている。


 主食で採るべきカロリーがどのくらいかなど栄養学的にはいろいろあるが、ひとまず力強く無視する。
 とりあえず十六穀米(十五穀米でも十穀米でもよい)を炊き、あなたが普段使っている茶碗に、腹八分目を目安に盛り付けよう。
 しかるのちに、それをラップで包み、冷めたら冷凍庫にインする。何合炊いて何パックできあがるかはあなたの体重や年齢や基礎代謝によるが、最初は3合か4合くらいで試すのがいいだろう。
 これを毎食レンジでチンして、適当な主菜(余裕があれば副菜も)と食べる。それだけである。

 かなりしんどいときのために、カレーなどレトルト食品の類、サバの味噌煮缶などを買っておくとより凌ぎやすくなる。
 インスタント味噌汁も買い込んでおいて、余裕のあるときは自分で具材を足すとよいだろう。豆乳や野菜ジュース、ヨーグルトなども頼もしい援軍だ。
 これらをうまく回せれば、最初の方で述べた望ましくないルートに入る可能性はかなり下げることができる。

「常に多め」が我々を救う

 最後に、もう一つ大切なことを。
 それは、常に「多め」を心がけることである。
 冷凍庫にラップに包んだ米が最低3個はあってほしいし、主菜となるレトルト食品も三種類くらいはストックしておきたい。
 また、味噌汁(べつに他の汁物でもいい)の具にできるもののなかにも、長期保存や冷凍保存できるものがけっこうある。
 このあたりを好みに応じて工夫し、その過程を楽しめるようになれば、食事の苦しみから少しは解き放たれるのではないかと思う次第である。

(これより下に文章はありません)

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