11.記憶の渚にて / 白石一文著_200901

ミステリーやストーリー性で読ませる本はあまり好みではないけれど、以前からなんとなく気になっていた白石一文の作品を手に取ってみた。さすがに人気作家というだけあって、描写も構成も秀逸で破綻がない。ただ、その語り口にあまり惹き込まれるところがなかったというのが正直な感想になってしまう。これはきっと読み手側の問題であり、相性の問題なのだろう。テーマを主人公に語らせるのであればそこに作者の内的必然性をもっと感じさせて欲しかったし、物語によってテーマを浮かび上げるのであればもう少し創意工夫が欲しい。著者の代表作はもっと素晴らしいのかもしれないけれど、本作は残念ながら中途半端な印象が拭えない。新聞連載という制約も大きかったのかもしれない。

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