【読書感想文】彼女は頭が悪いから 姫野 カオルコ

2020年最初に読んだ本は、「好書好日」で谷原章介の連載を読んで知った本「彼女は頭が悪いから」。

深夜のマンションで起こった東大生5人による強制わいせつ事件。非難されたのはなぜか被害者の女子大生だった。
現実に起こった事件に着想を得た衝撃の書き下ろし「非さわやか100%青春小説」!

前提として、これを読んだから「東大生=悪」とは思っていないし、被害者・被疑者どちらかの味方につくような記事を書きたいわけでもない。

読んで思ったことは3つ。

○家庭環境の、人格への影響

この本では、東大生5人、女子大生それぞれの家庭環境が細かく描写されている。家族構成やそれぞれの性格、生い立ち(学歴含む)、家族内のコミュニケーション。それらの情報によって、登場人物の性格・行動特性を理解する。人は先天的な性格や特徴があるけど、それはほんの一部にしか過ぎなくて、後天的に身につくものが大部分を占めると思う。後天的なところはいろんなコミュニティを通して身につくと思うけど、特に家庭でのものが大半で、言われて身につくというより親の背中で子どもが感じるものが多い。「子は親の鏡」と言われるのはそのせい。

○反省しなければ意味がない

この本の終盤を読んでいくと感じる。本を読んでいくと、東大生5人のその後が書かれているが、それを読んでいくと、「反省」「罪悪感」という感情は感じられない。それはなぜかというと、何が悪かったか、相手がどう思ったかがわかっていないから。これを分からせるためには、自分で気づくか、親など周りが気づかせるかの2つしか方法はない。ただ、今回被害を与えた5人は、その両方ができなかった。本によると、親はむしろ子どもをかばっていた。かばっていたのも、自分の子どもから真実を聞いていないから、かばうことしかできなかった。「逮捕された」という事実でなく、「人を傷つけてしまった」という気づきがない限り、人は同じことを繰り返す。

○「上下」の意識からフラットな意識へ

どんな人でもある、承認欲求や、比較思考。この感情が大きければ大きいほど、変に、自分で自分を否定し、周りを傷つけようとする。フラットに人を見る意識をいかに持つかは、難しいけど、人全体の課題だ。ただ、承認欲求も比較思考も、感情によって生まれてくるような気がする。感情を押し殺すというより、抱いてしまった感情を受け入れるところから始めたい。

私はこれから家庭を持つ予定である。その前の教訓として読んでおいてよかった1冊。

ダーリンとの子育て方針として、「選択する自由を与える」「決断するチャンスを常に持たせる」をあげていた。この2つがいかに人格形成にとって大切かがわかったし、それは押し付けるのではなく、スタンス・アクションで起こしていかないと子どもには気づいてもらえないとも感じた。

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