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楽しさを軸に、主体性を持った長い学びを 〜morita friend schoolの個々に応じた学習のサポートとは〜

morita friend school(以下MFS)は、2020年4月大山町に開校した“こどもが学びを楽しむ場”だ。MFSは、こどもたちが自分のリミッターを外し、自らの可能性に挑戦していくことを理念として、地域の小中高生を対象に「個々に応じた学習のサポート」と「教室を飛び出した課外活動」に取り組んでいる。

活動を始めて試行錯誤を続けていく中でMFSは変化している。この記事では、3年目を迎えたMFSの「個々に応じた学習のサポート」の取り組みを、MFS代表の森田圭氏へのインタビューと共に紹介していく。

対話を通じて、こどもたちの学習意欲を刺激する

MFSは、こどもの勉強について悩みを抱える保護者と、「勉強が苦手」と自信のないこどもの両方に向き合い、短期的な学習成果よりも、こどもが長く学びを楽しむことに伴走していきたいという思いのもと、活動している。

親御さんからよく相談される「こどもが勉強をしてくれない」という悩みに対し、まずMFSがすることはこどもの話を聞くことだ。勉強の何がイヤなのか、なぜイヤなのか。こどもにも理由があり、主張がある。それを丁寧に聞いていくことがMFSの役割なのだという。

「勉強がイヤなものだとして、それでも塾に来ているって、その時点ですごく頑張っているなって思うんです。だから僕らは勉強に取り組む前に、まずこどもたちが楽しいと思える瞬間を少しでも多くつくれるよう、じっくりと対話するようにしています。そしてそのヒントは、一緒に遊んでいる時や雑談の中にあったりします」

雑談の中にその子を知るヒントがある

MFSでは、こどもの成長にはこどもを取り巻く環境が与える影響が大きいと考える。目に見える成果というものは、木で例えると枝葉である。もっと根本的な根の部分――こどもの内面にある心理状態やその子が何かにチャレンジする意欲を育むことこそ大切である。しかし根の部分は、変化や様子が見えにくい。

「この間ネギを育てたんですが、種を撒いたら数日で芽が出て、少し伸びてから全然伸びなくなってしまって。どうしたんだろう?と思って、農家の父に聞いたら『それで大丈夫。今、根を張っとる。日が当たって土の温度が上がれば、根がバッと張って一気に伸びるぞ』って言われて、放っておいたんですよ。そうしたら、ある時ピューって一気に伸びて、なるほどなあって。

こどもの成長を感じられていない時、親御さんから『これで大丈夫ですか?』と聞かれることがよくあります。今は根を張っている最中かもしれない。でももしかしたら、日光や栄養が足りていないなど、何か伸び悩んでいる理由があるのかもしれない。だから、対話をするんです。その子の心理状態はどうなのか?何か欲求があるのか?そういうこどもの内面を探ることを大切にしていますね」

根っこの様子は見えにくい
(ネギでなくトウモロコシの芽)

MFSでは、勉強中でもスタッフとこどもや、こども同士で会話をすることを禁止していない。コミュニケーションの中で生まれる関係性の構築により、こどもは「わからない」ことを質問しやすくなる。また「こうしたい」というこどもの主張を引き出すことで、「もうちょっとやってみよう」というチャレンジが生まれると考えているからだ。

勉強中の”オン”のコミュニケーションと、勉強後の遊びや雑談の中などで生まれる“オフ”のコミュニケーション。そういう、こどもにとっての学習以外のモチベーションや環境をまずは整える。学習の楽しさは、その次の段階にあるとMFSは考えている。

「楽しい」にもステップがある

「自分はどうしたいか」という主体性を醸成する

MFSでは、「大人が教える」のではなく、まずは「こどもが学ぶ」ことを大切にしている。そして、こどもも大人に自由に主張してよいという文化がある。これらを習慣づけることで「自分はどうしたいか?」と自分自身で考え、主体性を伸ばすことに繋がると考えるからだ。

「こどもが」を主語にして考える

勉強の時間は、こどもたちだけで3〜5人のグループになって座りそれぞれ自分のことをやる。大人は引いた位置にいて、そのグループ全体を見ている。大人は、こどもに教える指導者ではなく、学習空間における進行役だ。これには、大人とこどもが指導者―生徒といった垂直の関係にあるという概念をなくしたいというMFSの思いが表れている。

中学生クラスの様子(TORICO教室)

「関係性には、垂直の関係と水平な関係があると思うんですが、スタッフはななめの関係だと思っています。こどもをこども扱いしない。自分でできることは自分でやればいいし、必要があれば自分で主張する。その上で、わからないことや自分一人で解決できないことは周囲に協力してもらう。それは社会に出てからも活きる力だと思います。

あと、こどもは大人の言うことを聞くっていう前提をなくしました。こどもを一律に型にはめることはできないし、一人一人によって取る方法は変わってくるなって思うんです」

「自分の意見を主張してよい」はMFSのカルチャー

「楽しい」を源泉にチャレンジするこどもたちに伴走する

MFSでは、こどもの「楽しい」を中心に考えている。なぜなら、「楽しい」をモチベーションにすることで、長く、自ら学び続けることができるからだ。楽しいと感じる瞬間をできるだけ多くするため、オン・オフの切り替えをしながら、こどもたち同士やスタッフとのコミュニケーション・対話の場づくりを行っている。

「楽しい状態の中にいれば、こどもは自分自身で何かを学ぶんですよね。もちろん学びの設計のイメージはこちらで持っています。でも、こういうことを学ぶはずだと大人が決めすぎずに、その子にとっての楽しい状態をつくることを優先すべきだと思うんです」

楽しく、熱中する中で自然と学びは生まれる

MFSでは学校の進度を追いすぎず、基礎レベルの教材を中心にした小さな成功体験の積み重ねを重視している。まずは「わかってきた」「できるようになった」という学びを楽しむ経験が何より大切だと考えるからだ。

そして、テストの点数には反映されにくいこどもの小さな変化に気づき、それを肯定する。結果だけでなく頑張りを認めることで、こどもの「自分はできる」という思いが少しずつ高まっていき、その気持ちが新しいチャレンジを生み出すことに繋がる。

そういう環境の中でトライ&エラーを続けていってようやく、どこかのタイミングで「勉強がわかるようになってきた」という実感や「学ぶことの楽しさ」を感じられる。この春より、MFSでは小学校1年生〜4年生までの1年間の授業料を無料に設定したのはそのためだ。

楽しさの中から生まれる長期的な成長

「1年間、とにかく僕らはトライ&エラーをこどもと一緒に続けていくので、そういう長期的な目線を一緒に持って取り組んでいきましょう、という思いを親御さんにも伝えたいです。僕たちは、楽しさの中から生まれる長期的な成長を信じているし、それをモットーにしてやっています。最終的に、そうして伴走していくうちに自律できるようになったら、もう塾に来る必要はないと考えています。そうしたら卒業や!って。その卒業は喜ばしいことなんですよね。そこまでのサポートをするのが僕らの役目であり、してあげられることかなと思っています」

長く学びを続け、大人になっても自らの可能性に挑戦し続けて欲しい。そんな思いのもと、MFSでは「楽しい」を大切にしながら小さなトライ&エラーをこどもたちと一緒に積み重ねている。

文:ナカヤマサオリ
東京出身、鳥取在住。助産師、執筆業。
Webメディア雛形「私の、ケツダン」執筆
https://www.hinagata-mag.com/comehere/26951

制作協力:週末住人Inc.
https://note.com/shumatsujyunin/n/nb2aab1cda066

遠足写真:寺井宏伸
ロゴ・イラスト:Kako Fukumoto

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