14番目の月のカクテル

まず空っぽのミキサーの中に水を入れて、そこに14番目のお月様を一欠片浮かばせる。10秒ほどミキサーを唸らせ、蓋を取って覗いてみると、甘い匂いを放つビー玉ほどのお月様が数個ミキサーの中を漂っていた。それらを割らないように、慎重に、清潔なタオルの上に転がして、1日太陽の光に当てるとそろそろ食べ頃。自分の好みにブレンドされたカクテルに、陽の光を浴びて煌々と輝く月を泳がせると14番目の月のカクテルが出来上がる。満月になる前日の、14番目のお月様はまだ不完全で、その味は、未成熟な若者のようにほんのりと甘酸っぱい。甘いカクテルは口当たりがさっぱりとして、苦いカクテルはほんのりと甘く、口を喜ばせる。星の散りばめられた夜のテラスに、14番目の月で仄かに光るカクテル・グラスを持ち合いながら、ロマンチストな男女は、恋を求めて夜を明かすのであった。

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