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「リスを実装する」円城 塔 (著) / 小説だけで生活していこうとすると、原稿用紙で年間1,000枚書かないと成り立たないようです

先日の日経新聞の連載で、この物語のタイトルを思い出した。

読んでいるはずだが、内容を思い出せない。
Amazonで確認してみると、Kindle Unlimited。

早速読んでみた。

感想

あまりにも短い物語なので感想も何もないのだが、一言で言えば「プログラムの世界でリスが動く」話。

短くて抽象的な表現に留めたSF小説なので、深読みすればいろいろな解釈が成り立つ。読後に思いを巡らせたあと、ネットを見てみると同じ事を考えている方々がおられた。

乱数じかけのリスに意識の存在を感じるのは観測側の意識の投影に過ぎない。
であれば、その観測側の意識の存在証明はいかにしてなされるのか?

https://blue1st.hateblo.jp/entry/2015/12/03/235219

被造物が被造物であると確信するのは不可能ではないか、ということであり、我々が被造物でないと確信することもまた、不可能ではないか

https://hon-yara.com/entry/squirrel-implementation

男はさまざまな物が自動化されていく世界の中に暮らしていて、掃除夫の仕事を掃除ロボットに奪われ、トラック運転手の仕事を自動運転プログラムに奪われ、トラック自動配送プログラムを監視する仕事をトラック自動配送プログラムを自動監視するプログラムに奪われます。

そういった、自動化の波に自身の仕事を奪われていく人生の過程の中で、男はリスを眺めています。この先の未来においても男は自動化に仕事を奪われていくことが語られますが、小説上フォーカスが置かれている現状においては、男はリスを眺め、リスが生き生きと動き回っているさまを想像しているのです。

https://super-coccyx.com/archives/1579

この短い短編の発刊は2015年の春、今から10年前。
その頃は、今ほどAIが身近ではないが、今(そしてその先)の世の中のことを,短い文章で書き表していると思う。

やはり未来を読むために、SF小説は欠かせない。



円城 塔氏のプロフィールが豊富なのはこちら。

インタビューから引用するが、小説家だけで生活設計するのは今も昔も大変そう。

小説はいつも喫茶店で書きます。PCで書くのですが、飲み物1杯、2時間程度の滞留時間でお店を替えて、書くことを重ねている感じでしょうか。
小説家が締切に追われて、編集者から逃げ回るシーンをよく思い浮かべるでしょう。私は守る方なので、それはまったくありませんね(笑)。

https://shuyukai-tohoku-u.net/serialization/201712/

小説だけで生活していこうとすると、原稿用紙で年間1,000枚書かないと成り立たないようです。他の仕事をしないで、書くことだけで生活するには、そういうペースのようで、すると本当は月に100枚くらいは書かなければならない。また、量産してもよほど売れていないと、小説だけではなかなか食べてはいけません。
小説家は一生のうち平均して大体、原稿用紙2万枚位著述する計算になるわけです。

https://shuyukai-tohoku-u.net/serialization/201712/

小説を書くのは、朝2時間、夜2時間というペースでした。2時間で10枚ぐらい書けたので、それで一話となり、毎日一話ずつひねり出していく感じでしたね。ユニット毎に書いていけば、失敗したらそれを切り捨てればいいと考えたりしてました。
「書く」ということでは、伝える技術やしくみに興味を持っている部分があり、大上段に構えて何を書かなければとは考えずに、次は何を書こうか、と自分の興味の延長上で小説としてまとめてきました。

https://shuyukai-tohoku-u.net/serialization/201712/

一年に40万字、一月に4万字の分量は見当がつき、2時間で4千字も分かる。
でも、一生の間に800万字の小説を書く自信はない😅


MOH


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