見出し画像

小さくて、よく出来てて、とてもかわいい

雨続きで、寒いくらいの気候になった。今日なら空いてそうかなと思って、サントリー美術館の「リニューアル・オープン記念展 Ⅱ・日本美術の裏の裏」に行ってみた。

久しぶりの東京ミッドタウンですが、1Fのカフェに並ばずに座れた。慌てて席をあけなくてもいいんだ。本を読んで、ぼんやり外を眺める余裕がある。雨のせいもあるだろうけど、ここも人出が少なくなっているんだろうと思う。

普段は隣の公園に家族連れも多くて、若くて忙しく働くキラキラした人たちの洗練された場所だ。肌寒くて軽く羽織るものを着ている人が多いけど、全体的に黒、白、グレー、ベージュ、あとはブルーがほとんど。西日本出身者にはちょっと物足りない配色だけど、それも含めて、場所全体が上品でオシャレに見えるのかな。

今回の展示は、公式ページにこう書いてある。

生活の中の美の“愉しみ方”に焦点をあて、個性ゆたかな収蔵品の中から、日本ならではの美意識に根ざした作品をご紹介

日常生活の愉しみ方は、今ぜひ知りたい。オンラインばかりの毎日に、本当に飽きてきている。

ミニチュアサイズの雛道具は、江戸時代後期に上野の不忍池近くにあった七澤屋さん作となっている。手のひらに余裕で2つ、3つ乗せられそうな小ささの文房具、食器、化粧道具など。性能的にも普通に使えそうだし、贅沢な装飾が完璧にほどこされている。

ジブリの『借りぐらしのアリエッティ』は身長10cm設定らしいけど、こういうのを使って、勉強したり、お化粧したり、お料理してくれたりしたら、絶対かわいいと思う。その様子を想像して、にやけてしまう。

美術館の中は、撮影OKだった。最近、日本の美術館でも、撮影できる展示会が増えてきたような気がする。

画像1

サントリー美術館は、小さめで展示点数も少ないけど、会場の雰囲気も好き。入ってすぐ、天井から吊られた緑をくぐっていくと、奥に1つ目の展示の円山応挙 《青楓瀑布図》が現れる。静かで、自分が作品の世界に入ったような気になる。

画像2

絵入本《かるかや》。絵画化された説経ということですが、ぜんぜん良く描けてなくて、適当なカンジが面白い。500年も前のこのふざけた絵を所蔵してるこの美術館も、いいなと思う。

画像4

重要文化財・尾形乾山の《白泥染付金彩薄文蓋物》。外側と内側が全くちがう柄になっているのが楽しい。古いのに、現代アートっぽく見える。素人目では、ジャクソン・ポロックを指します。

画像3

野々村仁清《色絵鶴香合》。繊細で綺麗で、何か気になる鶴の表情もいい。ガラスケースに収まったこの鶴は、ぐるぐる何周もまわって眺めた。これにお香を入れた人は、幸せな気持ちで1日何回も開け閉めしたと思う。私だったら、絶対にそうする。羨ましい。

陶磁器の世界では、焼く際に炎で偶然つくり出される表情を「景色」と言うらしい。オンラインの毎日で何が退屈かと言うと、景色が変わらないことだと思っていた。人と話しても、音楽を聴いても、ドラマを観ても、どうしても景色が変わったと思えない。ディスプレイサイズが問題?とか思ったりしたけど、そうか、美術品という手があるな。

七澤屋さんは、もうないんだろうか。あの雛道具を家に迎えて、1日眺めて過ごしたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?