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LEICA MP 0.72を3年間使った感想

LEICA MP 0.72を購入して3年が経過しました。購入してすぐにシャッターが故障し、2ヶ月間、ドイツのライカ本社で入院するというアクシデントがあったものの、それ以降故障は全くありません。ただ、2ヶ月前に三脚穴のネジを潰してしまい、再びライカUSAに1ヶ月の入院となり、本日手元に戻ってきました。

ライカUSAから戻ってきたLEICA MP 0.72。

1ヶ月間、愛機LEICA MP 0.72と離れ離れになっていたのは本当に寂しかったです。それだけ、濃密な関係だったという証ですね。

修理前の三脚穴が壊れた底蓋。エイジングが進んで味わいが出てきた。

修理で戻ってきたLEICA MP 0.72の底蓋。新品に交換されていました。

ただ、一つ残念だったのは、三脚穴が壊れた底蓋が新しい底蓋に交換されていたことです。折角エイジングが進んで味わいが出てきただけに、ゼロスタートとなりました。1ヶ月以上の入院だったので、オリジナルの底蓋をキープしつつ三脚穴だけの修理を期待していましたが、単なる交換修理でした。

エイジング

新品で購入した時の艶やかで綺麗なブラックペイントが、3年間使ったことでエイジングが進み、巻き上げれレバーやボディの角の部分から少しずつ剥がれ、真鍮が覗かせて味わいが深まってきました。カメラと過ごした日々が、エイジングで可視化されるのは、なんとも言えない贅沢な体験です。これは、ブラックペイントと真鍮ボディならではの醍醐味で、新品で購入して本当に良かったと思っています。もっともエイジングが進んでいた底蓋だけが、新品から再スタートとなりましたが、、

擦り傷も味わいの一つです。

似合うレンズ

LEICA MP 0.72には、やはりクラシカルなレンズのデザインが似合います。私が所有しているライカレンズでは、エルマー 50mm f2.8 沈胴や、ズミルックス 35mm f1.4 スチールリム復刻版、ズミルックスM 50mm f1.4 ASPH ブラッククローム、エルマリート 135mm f2.8(1969年)、エルマー 3.5cm f3.5 (1939年)などと合わせるのが気に入っています。また、真鍮ボディでブラックペイントのノクトン ビンテージライン 50mm f1.5 Aspherical II SCは、サードパーティながら最高に似合っていると思います。

エルマー 50mm f2.8 / 沈胴レンズはクラシカルな印象を強めてくれます。とてもコンパクトで軽いレンズなので取り回しはすこぶる良いです。
ズミルックスM 50mm f1.4 ASPH ブラッククローム / 貴婦人のスタイリングをオマージュしたレンズ。中身は非球面レンズを搭載したモダンな設計。無骨なデザインがクラシック感を強調しています。
エルマリート 135mm f2.8(1969年)/ 60年代、70年代のデザインとLEICA MP 0.72の相性はすこぶる良いです。兵器のような重厚感が、視覚的なインパクトと所有感を高めてくれます。
ズミルックス 35mm f1.4 スチールリム復刻版 / 特徴的なスチールリムのスタイリングは、美しさを際立たせています。開放でのドリーミーな描写がクセになります。
エルマー 3.5cm f3.5 (1939年) / バルナックライカ時代のレンズも似合います。最もコンパクトな組み合わせになります。80年前のレンズにも関わらず、描写は至って普通なのが凄いです。
ノクトン ビンテージライン 50mm f1.5 Aspherical II SC / LEICA MP 0.72と同時に購入したレンズです。LEICA MP 0.72と同じくブラックペイントのレンズ。社外品ながら、とても似合っています。
ATOLL Ultra-Wide 2.8/17 Art Lens / ロモグラフィの超広角17mmレンズです。メカニカルなレンズのデザインが見応え感を出しています。

フィルム環境

購入してからの3年間、フィルムの価格高騰など、フィルムカメラの環境は少しずつ厳しくなっていますが、モノクロフィルム自家現像を始めたことで、コストを抑えることになっています。また、自家現像はやっていませんが、カラーフィルムも時々楽しんでいます。フィルムの供給には不安があるものの、CineStill400Dをはじめ、いくつかの新製品が発売されました。また、HARMAN Photo(ILFORDの兄弟会社)から自社生産の全く新しいカラーフィルムを12月1日に発表するなど、フィルム界隈は静かに盛り上がってきています。若い人たちに、レコードと同じくフィルム人気が高まっているのも安心材料です。個人的には、あと15年は楽しめるを勝手に思っています。15年後は、私もカメラも相当エイジングが進んでいることでしょう。

アナログイン デジタルアウト

フィルムで撮った写真は銀塩プリントするというアナログイン アナログアウトと、ネガフィルムやポジフィルムをデジタルスキャンして鑑賞したりSNSなどで共有するアナログイン デジタルアウトがあると思います。アナルグ原理主義的には、銀塩プリントで鑑賞するのがアウトプットの最高峰と考え、実際、私も暗室でプリントして楽しんでいます。
では、ネガフィルムやポジフィルムをデジタルスキャンするのは邪道なのでしょうか?ハリウッドでは、最新映画のオッペンハイマーはじめ多くの映画がフィルムで撮影されデジタル処理されています。アナルグの描写にデジタル技術を融合させることで、ビジュアルの魅力を一層強化できるということでしょう。最終アウトプットはSNSやデジタルプリントだからデジタルカメラが合理的というのは分かりますが、デジタル時代にあえてフィルムを融合させることで表現の幅が広がることにも着目したいです。その意味で、フィルムカメラがまだまだ期待されると思っています。

ライカの本気

言わずもがな、1954年に発表されたライカM3から約70年、脈々と受け継がれているほぼ全く変わらない撮影体験は特別な価値観を提供してくれます。それが現行モデルとして購入できるのは、奇跡としか言いようがありません。これは、MP 0.72のみならず、露出計を排除した極限の機械式モデルのM-A、衝撃のM6復刻版と3モデルのフィルムカメラがラインナップされています。
M型デジタルカメラは、M11とM11-P、そしてM11 モノクロームと同じく3モデルなので、ラインナップの半分がフィルムカメラとなります。ライカのフィルムカメラに対する情熱は計り知れません。

このMP 0.72は、2003年に発売された長寿モデルです。当時は39万円(2,595ドル)でしたが、今は85.8万円(5,695ドル)と、なんと2.2倍の価格になっています。気になっている人は早く買って長く愛用し、極上のエイジングを楽しむことをお勧めします。とくに寿命の長い若い人こそ、このカメラはお勧めです。


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