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男子学生・サラリーマンのファンタジー 楡周平著『ターゲット 朝倉恭介VS川瀬雅彦』

少女がプリンセスの出てくる小説を読み、主人公に自分を重ね合わせるファンタジーと同様、男子大学生やサラリーマンのファンタジーがこれ。落合信彦の小説と同じカテゴリー。

カンフー映画を見た後に、屈強な男になることを誓い、猛烈に腕立て伏せをし、翌日は筋肉痛で続けることができず、筋肉痛が収まったら屈強な男になる鍛錬を再開しようと思いつつ、筋肉痛がひくとともに意欲も沈静化してしまう。

本著のような小説も、読んだ直後に、英字新聞や"Ecomonist"を買い、英語の出版物を自分の机に鎮座させることで一定の満足感を得た後、明日から読みこなそうと誓い、翌日も明日から読みこなそうと誓う。

つまりこの手の小説の効き目は1分~1時間ほどなのである。

ではどのように活用したらよいか。まず、朝、会社に行く通勤電車で読むのがおすすめ。トラブル化した案件や、手をこまねいている案件のことを考えてグジグジ悩むよりも、そんな案件、このオレ様が料理してやる、と思える思考状態に持っていくのに、本著は最適。

次に、上司に怒られに行く直前。オレは朝倉恭介だ。あんな小物課長のいうことなんぞ、聞き流してやる。オレの志はもっと高いところにある、と思わせてくれる。ただ、実際に上司の叱責が始まると、ファンタジー界の朝倉恭介よりもリアル界のパワハラ課長のインパクトの方が遥かに大きいので、朝倉恭介マインドは一気に吹き飛ぶ恐れあり。

要するに、この手の本は効き目の弱い麻薬のようなもの。しかし読んで楽しいのは間違いないのでぜひ活用して欲しい。


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