モカの知恵袋

銀行勤務 。米国MBA取得。欧州在住。自分と異なる意見に耳を傾け、理解することを心がけ…

モカの知恵袋

銀行勤務 。米国MBA取得。欧州在住。自分と異なる意見に耳を傾け、理解することを心がけています。 経済・金融関連の場合は、統計等事実を確認してから投稿するようにしています。 事実誤認はぜひご指摘ください。ロジカルな反論を歓迎します。

最近の記事

『青の炎』貴志祐介著

運動も勉強もできる高校生が完全犯罪を目指す。 高校生とは思えない慎重さと行動力を兼ね備え、着実に準備を進めていく。 しかし、人間個人の力には限界がある。どれだけ慎重に準備していても、想定外のことも起こるし、緊張から思いがけないミスをすることもある。そのようなミスが起こることを想定して準備をする、というほどの老練さはまだない。 そして、才能があるからこそ、傍から見るとギャンブルに近い選択をして破局への道を進んでしまう。 この本から、ビジネスパーソンに必要な教訓を得ることが

    • 等身大の自分。 ー 池井戸潤著『鉄の骨』

      建設会社を舞台とした小説。 地下鉄工事受注を巡り、下請けを叩いてコストを削減しようと邁進するゼネコン。談合を企む政治家・フィクサー・ゼネコン幹部。それを裏で追う特捜検事。さすが池井戸氏の筆致は鮮やかでぐいぐい読み進むことができる。公共事業の流れについてイメージを持つこともできるし、銀行与信の考え方や、ゼネコン社員の仕事ぶりまで知ることができる。その点、学びの大きいお得な小説だ。 しかし、この書評では本筋である談合をめぐる闘いについては触れない。 サイド・ストーリーでしかない

      • もともと仕事ができる人用の自己啓発書『時間最短化、成果最大化の法則』

        https://amzn.to/3HfPhNb 今まで読んだビジネス系自己啓発本の中で、即効性ナンバーワンがこれ。 この本のメッセージは「スキルを身に付けるよりも、意識を変えた方が手っ取り早く成果が上がるようになる」ということ。 そして、意識変革の具体例が挙げられている。その中で特に即効性が高いのが冒頭2点。 ①ピッパの法則 ②後で考えない法則 「ピッと思いついたらパッとやる」ー 「ピッパの法則」の効果は高い。常々「ピッパの法則」という言葉を呪文のように唱え、すぐに行動

        • 仕事は人間関係マネジメントで成り立っている ー 書評『混沌(上・下)新・金融腐蝕列島』

          経済小説を読むメリットは仕事への意欲が上がること。特に、主人公が努力、分析力、創造力、交渉力を働かせて活躍する小説は、「オレにも同じことができるはず」と思わせてくれ、仕事のクオリティー向上につながる(ことがないわけではない)。 本著も主人公の能力がいかんなく発揮され痛快ではあるものの、面白いくらいに発揮される能力は人間関係に偏っている。 本書のテーマは三和銀行・東海銀行・あさひ銀行の三行統合とその行く末。頭取同士のせめぎ合い、三和銀行内の軋轢、新聞や政府など外部との関係、同

        『青の炎』貴志祐介著

          書評『Cの福音 朝倉恭介 VS 川瀬雅彦』ー ビジネス系自己啓発書を読むより、小説を読むべし

          小説の効用は読み手によって大きく変わる。単なる暇つぶしとして読めば、暇つぶし、という効用を得られる。この小説から多くを学び取ってやろう、というスタンスで読めば、大きな学びが得られる。 この小説「Cの福音」も同様。 主人公の朝倉恭介。鍛え上げられた肉体を持ち、自宅ではなぜか裸で強靭な肉体を誇示する。誰も見ていないけど。そして音楽を楽しみながらシャンペンを飲む。ベタな演出だが、かっこいい。自分もそうなりたい、と思わせる演出であり、素直に影響を受け、ジム通いを始め筋トレに目覚める

          書評『Cの福音 朝倉恭介 VS 川瀬雅彦』ー ビジネス系自己啓発書を読むより、小説を読むべし

          ビジネス書を読むより仕事に役に立つ ー 今野敏著『隠蔽捜査』シリーズ

          堅物・真面目・冗談を言わない主人公・竜崎伸也が活躍する異色の警察小説。 プライドに引きずられて仕事をしたり、悪いものに蓋をするような行動をとる者をギャフンと言わせる痛快もの。 堅物にも関わらず柔軟な思考で事件を解決に導く突破力がすごい。第一級のエンターテイメントでありながら組織人として成果を上げるための姿勢を学ぶことができる。 ここでは凡人のありがちな発言と竜崎の発言を対比させながら、この小説で何を学ぶことができるか示していきたい。なお、これらの発言は私がこの小説から読み取っ

          ビジネス書を読むより仕事に役に立つ ー 今野敏著『隠蔽捜査』シリーズ

          就職面接において一番大事なことは、聞かれたことに素直に普通に答えること

          「お兄さんがいらっしゃるのでしたね。何をされているのですか?」 「私の兄は私より5歳年上なのですが、子供のときから運動もスポーツもできる子供でした。私は兄のことを尊敬しており兄のようになるためにはどうしたらよいか考え勉強でもスポーツでも兄に追いつくために努力する過程で努力することに大切さに気付きました(面接官の心の中:で、お兄さんは何をしてるんだよ・・) その兄も一つ苦手なことは芸術面で他の面では尊敬できる兄なのですが音楽や美術が苦手でいつも夏休みの宿題の写生なんかは最後の日

          就職面接において一番大事なことは、聞かれたことに素直に普通に答えること

          男子学生・サラリーマンのファンタジー 楡周平著『ターゲット 朝倉恭介VS川瀬雅彦』

          少女がプリンセスの出てくる小説を読み、主人公に自分を重ね合わせるファンタジーと同様、男子大学生やサラリーマンのファンタジーがこれ。落合信彦の小説と同じカテゴリー。 カンフー映画を見た後に、屈強な男になることを誓い、猛烈に腕立て伏せをし、翌日は筋肉痛で続けることができず、筋肉痛が収まったら屈強な男になる鍛錬を再開しようと思いつつ、筋肉痛がひくとともに意欲も沈静化してしまう。 本著のような小説も、読んだ直後に、英字新聞や"Ecomonist"を買い、英語の出版物を自分の机に鎮

          男子学生・サラリーマンのファンタジー 楡周平著『ターゲット 朝倉恭介VS川瀬雅彦』

          楡 周平著『ドッグファイト 』

          痛快企業小説。エンターテイメントとしてよくできているので楽しめる。半沢直樹と同じカテゴリー。 企業小説を読むメリットは2つある。 第一に、その業界についてイメージが湧くこと。本著のテーマは宅配便だが、Amazonによる通販の拡大と宅配便の関係について、鮮やかなイメージとともに理解することができる。もちろん小説なのでどこまでが事実で、どこから脚色なのか判断すること必要だが、賢明な読者ならその判断は容易だろう。 第二に、自分の仕事のモティベーションになること。仕事ができるビ

          楡 周平著『ドッグファイト 』

          伊藤 守 著『3分間コーチ ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術』

          部下の指導は面倒くさい。そもそも過半の部下は何も言わなくても働いてくれる。指示したことはやってくれるし、たまに相談もしてくる。というわけで、あまり部下の指導というものを意識しないまま時が過ぎてしまった。 しかし、自分の仕事がより管理面に移り、会社全体に目を配る必要ができた時、今まで自分が取り仕切っていた、多様な社内ステークホルダーとの調整を要するプロジェクトは部下の荷としては重すぎることに気付く。 そこで初めて部下の指導を怠ってきたことを後悔する。そして今から部下の指導に

          伊藤 守 著『3分間コーチ ひとりでも部下のいる人のための世界一シンプルなマネジメント術』

          【書評】春明 力『HSPサラリーマン : 人に疲れやすい僕が、 楽しく働けるようになったワケ』

          自行啓発本の優劣は何で決まるか。 それは間違いなく、実際に行動につながるパワーを持っているか、で決まる。 多くの自己啓発本に似たようなことが書かれており、この本も例外ではない。ただ、惹き込まれるストーリーがあり、著者の語り口が上手いため、腹にストンと落ちるように伝わってくる。 営業・仕事について以下のようによく言われる。 ・社交的な人は営業に向いているかもしれないが、必ずしも優秀な成績を残すとは限らない。 ・口下手だけど営業トップ、というケースがよくある。 ・顧客についてよ

          【書評】春明 力『HSPサラリーマン : 人に疲れやすい僕が、 楽しく働けるようになったワケ』

          【書評】成毛 眞『アフターコロナの生存戦略』

          https://amzn.to/33TXpCV クオリティーの高い総花的な本。著者が思ったことや聞きかじったことが羅列されています。しかし、各トピックは具体的で面白く、ビジネスに、パーソナルに、役立つ情報が2つ3つ見つかること請け合いです。ざっと流しながら気に入ったことをメモする、という読み方が最適。 例えば、今後伸びる業界は? 沈む業界は? 伸びるのは不動産やゲームなど在宅エンターテイメント。沈むのはアパレル、化粧品。ロジカルな根拠があるわけではありませんが、今後の世の

          【書評】成毛 眞『アフターコロナの生存戦略』

          方丈記の世界観

          https://amzn.to/3JHfjuK 学生時代に読んだときは、何がいいのか全く分からなかった。単に、つまらない本。他の古典的文学作品と同様、全く退屈で、やはり馴染みのある舞台設定と高いエンターテイメント性、分かり易い言葉遣いの現代小説に比べると、全く面白みに欠ける、と思ったものだ。 あれから何十年か経ち、それなりに人生を歩んできた上での方丈記。その印象は学生時代とは全く違うものだった。 これでもか、これでもか、と続く災難の描写。火事、地震、政策の影響、飢饉、イ

          方丈記の世界観

          ビジネス系自己啓発本として読む『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』

          毀誉褒貶の激しい竹中平蔵氏。 しかし郵政民営化と不良債権処理という大仕事を成し遂げた功績は否めない。なぜそのような大仕事が可能だったのか。その過程を学ぶことは、国政ほどスケールの大きな仕事ではなくても、社会人として誇りの持てる業績を上げるための手助けになるであろう。 何か、私の仕事に役立つ知見はないか。という問題意識を持って読むと、様々な学びが得られる。その一端を紹介したい。 通常の仕事・業務をこなす際に、つい目の前のタスクに集中し、その背後にある「目的」や「理論」をつい

          ビジネス系自己啓発本として読む『構造改革の真実 竹中平蔵大臣日誌』

          【書評】尾原和啓・山口周『仮想空間シフト』

          朝、8時に地下鉄に乗りオフィスに行き、11時に顧客のオフィスでミーティング、12時に数分歩いて昼食を買いに行き、オフィスに戻る。社内で自分のデスクとミーティングルーム、他部署の人のデスクとの間を行ったり来たり。7時にオフィスを出て家に帰る。 その全てが寝室から3メートルのところにあるデスクで行われるようになった。 コロナ禍をきっかけに、これまでの働き方・・・自ら物理空間を移動しながら仕事を進めていく・・・が突如として当たり前ではなくなり、ネットを通じて仮想空間にアクセスし

          【書評】尾原和啓・山口周『仮想空間シフト』

          【書評】下村湖人『論語物語』

          革命的に素晴らしい本。青空文庫。 多くの著名人が「私の愛読書は論語です」「何か悩みがあるときは孔子に相談します」「論語は東洋の智慧の宝庫です」などと語っており、「そんなに良いならぜひ読んでみよう」と思い、挑戦するも、1ページ目であえなく陥落。そもそも何が良いのか全く分からない・・・ それならば、と解説書を読むものの、論語っぽいものはつまらなく、面白いものは、「これって、論語と関係あるの?」。礼とか、仁義とか、忠孝とか、そりゃ大事でしょうが、ピンと来ない。 そのような方々

          【書評】下村湖人『論語物語』