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楡 周平著『ドッグファイト 』

痛快企業小説。エンターテイメントとしてよくできているので楽しめる。半沢直樹と同じカテゴリー。

企業小説を読むメリットは2つある。

第一に、その業界についてイメージが湧くこと。本著のテーマは宅配便だが、Amazonによる通販の拡大と宅配便の関係について、鮮やかなイメージとともに理解することができる。もちろん小説なのでどこまでが事実で、どこから脚色なのか判断すること必要だが、賢明な読者ならその判断は容易だろう。

第二に、自分の仕事のモティベーションになること。仕事ができるビジネスパーソンの条件はいろいろあるが、「構想力」「全体を把握する力」「自社・他社を含めた大局を読む力」は重要でありながら習得が難しく、若手ビジネスパーソンが上司にどうしてもかなわないと思うのが、この分野であろう。

主人公は新ビジネスを考案し、仲間を募り、週末に一気にプランを書き上げ、実現化に持っていく。
敵役の他社女性マネジャーも、相手(主人公が勤める企業)の出方を予想し将来を見据えたプランを策定する(最後には裏目に出てしまうが)。
彼らがなぜ優秀か。それは構想力だ。全体像を把握し、自社(および自社の経営陣)・他社の動きを読み大局を掴む。その姿を見ると、自分も頑張らないといけないと思うし、手をこまねいてやりかけになっている例の巨大案件をぜひ前に進めよう、という気になるものだ。

それにしても、彼ら2人を上回る構想力を発揮するのが、それぞれの上司。彼ら2人の話を聞くことで即座に全体像を把握し、その意味を解きほぐし交渉相手の真意を鮮やかに解明する。

もし貴方が若手ビジネスパーソンで、上司や経営陣のすごさが分からないとしたら、貴方は上司が視野に入れているビッグ・ピクチャーではなく、その部分部分しか目に入れていないからだ。「構想力」「全体把握力」を備える長い道のりの第一歩は、貴方の仕事がビッグ・ピクチャーの一部に過ぎないことを知ることである。

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