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極寒の荒波を越える観測船

2022年12月、師走のこの時期に、一隻の船が荒波を突いて南極大陸へと向かっています。

その名は「しらせ」

Wikipediaより

日本の誇る南極観測船です。
文部科学省国立極地研究所が、南極を観測する任務を行う際、観測、研究などを輸送面などでバックアップするために建造されました。
運用は海上自衛隊によって行われています。

現在のしらせは2代目、南極観測船としては4代目です。
南極観測船は初代の「宗谷」

Wikipedoaより

2代目の「ふじ」

WIkipediaより

3代目の「しらせ(初代)」

Wikipediaより

そして現在のしらせ(2代目)となります。

このしらせが、今年も南極に向かっています。第64次南極地域観測隊です。

南極に向かうには、オーストラリアのフリーマントルから出航し、長い航程を経て昭和基地までたどり着く必要があります。
そこで越えなければならないのが、荒れ狂う南極をまでの海域です。

まず、南半球は陸地に乏しいことは、地図を見ても明らかです。

Wikipediaより

南緯40度を越えると、オーストラリア大陸の南に出るため、あとは南アメリカ大陸の南端と南極大陸しか陸地はありません。

南緯40度から60度は偏西風帯なのですが、陸地が少ないためその風は弱まることなく吹き荒れます。

Wikipediaより

ちなみに、海流(表層の海流)の原動力になるのはその表面を吹く風の力で、その水の流れは吹送流と呼ばれています。
これに、地球の自転の力が加わって北半球の亜熱帯地域では時計回り、南半球の亜熱帯地域は反時計回りの海流が流れています。

Wikipediaより

しかし、南極に近い地域は、偏西風と極東風の風向きそのままに、南極大陸を囲むように海流が渦巻いています。

この暴風と荒波はすさまじいもので、「吠える40度」「狂う50度」「絶叫する60度」と呼ばれます。
南緯60度に位置するドレーク海峡の波浪と暴風はすさまじく、

Wikipediaより

平常時でもこれです。

さらに南に抜けると、そこは南極海
南極を取り囲む南極周回流を抜けた先の海で、この海流の南極側は塩分濃度や水温などが他の海とは異なるため、独自の生態系が形成されています。

一方で、極東風による反時計回りの風は西向きの海流を生み出し、南極周回流(東向きの海流)との潮目を作り出しているため、南極海は意外に栄養分が豊富。
また、陸地に比べれば温暖なため、多様な生物が生息しています。

一方で、冬になれば南極海は氷に閉ざされるため、砕氷能力が必須です。
もちろんしらせにも優れた砕氷能力があります。

というわけで、現在南極大陸に向かっているしらせ。
無事に昭和基地に到着したニュースが流れたら、次は南極大陸について書いてみようかと思います。

隊員の皆さん、どうかお気を付けて航海を。

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