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増加する「ハイブリッド台風」

9月1日現在、2018年最強の台風と言われる台風21号が接近しています。

ここしばらく台風の様子を見ていて、今までの台風とは異なる傾向が顕著になってきました。
台風に対する防災の観点も含めて、メモとしてまとめておきたいと思います。

※ハイブリッド台風は正式な気象用語ではありませんので、テストや公の場では使用しないことをお勧めします。

1、台風とは

台風とは、

・熱帯の海上で発生する熱帯低気圧
・日付変更線~東経120度の範囲(北西太平洋)にある
・中心付近の最大風速が34ノット(およそ17m/s)以上のもの

を指します。
(この辺りはたまに出題されるので、大学受験を控える方は注意)

その主なエネルギー源は
海面からの水蒸気が凝結するときに放出される熱(潜熱)
です。

高温多湿な空気(密度低い)が上昇

上昇により温度低下、水蒸気が凝結

凝結熱により空気を再加熱

空気はさらに上昇

というメカニズムで発達します。
積乱雲の発達メカニズムと似ていますね。

つまり、海面から盛んに水蒸気が上がる(=海水温が高い)状況では、勢力が強くなり続けます。
逆に言えば、北半球で考えると北上を続け、気温や水温が下がってくれば勢力は衰えていくことになります。
その境界は、25℃くらいと言われています。
もし、地球温暖化で海水温や気温が上昇し続ければ、台風は際限なく強大化していきます。
この到達点が「スーパー台風(Super Typhoon)」と呼ばれるものです。

そして、スーパー台風(Super Typhoon)は米軍による台風のカテゴリ分類として存在します。
最大風速130ノット(およそ65m/s)以上が基準です。
伊勢湾台風などがこの分類に当てはまります。

※2018年台風21号は、8月31日に「Super Typhoon」に分類されました。


2、台風の風が強く吹くのは?

台風の風はどこが強く吹くのか。これも傾向があります。

まずは、「台風の東側」です。
これは、台風の回転方向(北半球は反時計回り)と、進行方向が同じであるため、台風の風が加速されてしまうことが原因です。

過去の台風でも、進行方向東側では大きな被害が出る傾向があります。


3、増加する「ハイブリッド台風」

ところが近年、このセオリーが通用しない台風が増えてきています。
なぜか、北上しても勢力が衰えないのです。

これは、潜熱とは異なるメカニズムで勢力を維持するからです。
これには、温帯低気圧の存在が関係しています。

温帯低気圧は、文字通り温帯に発生する低気圧で、エネルギー源は「寒気と暖気の温度差」です。
熱帯低気圧とは根本的にメカニズムが違います。

寒気と暖気の差が発生する原因の一つが、偏西風の蛇行です。
偏西風が蛇行すると、空気の移動スピードが場所によって変化するため、いわゆる「気圧の谷」「気圧の尾根」ができます。

気圧の谷は低気圧が発生、寒気を伴いやすく(気圧が下がるため)、気圧の尾根は高気圧を伴います。
このカーブが大きいほど、気圧の変化は強烈になります。
強烈になりすぎて、カーブから切り離されてその場にとどまるようになったのが「寒冷渦」です。

これは強大化した寒冷渦。台風と見た目はほとんど変わりませんね。

寒冷渦や、それに近い強い温帯低気圧が日本付近にある場合、接近してきた台風にある力が働き始めます。
何と、この温帯低気圧が、台風の上昇気流をサポートし始めるのです。
実はこのメカニズム、中緯度帯の大気大循環(亜寒帯低圧帯)と似たメカニズムです。

このような状況になると、台風はなかなか衰えません。
さらに、台風が寒冷渦に吸い寄せられて周辺を回ることもあります。
勢力を維持しながら台風が迷走する場合、このようなケースが多いです。

また、場合によっては台風が温帯低気圧に変化した後、温帯低気圧のメカニズムで再発達し、元の勢力以上になって日本列島北部に襲い掛かることもあります。

このように、近年の台風は熱帯低気圧と温帯低気圧の特性を兼ね備えたハイブリッド型が増えてきています。

ということは、今後、台風の危険度を見る場合、
①台風の勢力
②周辺海域の海水温(目安は25度くらい)
③気圧の谷の存在

を見る必要があるということになります。

特に②や③は、台風の接近時の勢力、場合によっては再発達の有無に関係してきます。
③については、気象予報の天気図で見られますので、台風の進行方向に等圧線の大きな蛇行がないか、関心を持っておくと良いかもしれません。

これは、9月3日9時の予想天気図です。

これが、8月30日現在の海水温分布図です。
(共に気象庁からの引用)

また、フォトグラファーで気象予報士の松田巧さんがジェット気流の解析を毎日されていますので、こちらも参考になると思います。

これらの図を見る限り、偏西風の大きな蛇行はないものの、海水温が高い状況が続けば、21号は大きく勢力を落とさずに日本列島に接近すると考えられます。

早めに、万全の備えをされることをお勧めします。

・防災備蓄品の確認と補充
・避難場所の確認
・連絡手段の確保、取り決め

など、事前の準備を怠りなく!


ざっくり書きましたのでまとまりませんが、何かのご参考になれば幸いです。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

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