見出し画像

江戸時代の「虚船」

6月24日は「UFOの日」です。

1947年6月24日午後3時頃、アメリカの実業家ケネス・アーノルド

が飛行機で移動中、ワシントン州レニヤ山上空付近で強い閃光を目撃しました。
一直線に並んだ9機の見慣れない飛行物体がものすごい速度で急降下や急上昇を繰り返していたのです。
その速度は時速2700km(マッハ2.2)に達していました。

ちなみに、1947年当時最速の飛行機は、ダグラス・スカイストリーク(D-558-1)

という実験機。
同年内の最速記録は1047km/hでしたので、そんなスピードの飛行物体が存在しえないことは明らかでした。

アーノルド氏はこの物体をflying saucer(空飛ぶ円盤)」と呼び、これが全米に報道されました。
その後同様の目撃証言が相次ぎ、他国の秘密兵器の可能性を懸念したアメリカ空軍が動き出します。
これを「UFO(Unidentified Flying Object=未確認飛行物体)」と名づけ、調査に乗り出したのです。

しかし、アメリカ空軍が12000件もあまりの事例を調査しても決定的な証拠をつかむことはできず、1969年12月17日、UFOは目の錯覚の類であるという結論に至りました。
しかしその後もUFOの目撃証言は続きます。その中には、航空機のプロの乗務員の目撃証言も含まれているため、単なる錯覚で片付けることはできないのではないか、という意見もあります。

UFOの正体としては

・宇宙人の乗り物説
・心霊現象説
・錯覚説

といった意見がありますが、どの説も決定的な証拠をつかむには至っていません。


そして、実は日本でも江戸時代、「UFO」の目撃談が多数ありました。
当時の日本では、UFOのことを「虚船(うつろぶね)」と呼びました。

『椿説弓張月』や『南総里見八犬伝』を著した、江戸時代後期を代表する読本作家、曲亭馬琴

が1825年にまとめたとされる『兎園小説』第11巻中に、図版付きで記述があります。

兎園小説
文政8(1825)年、曲亭馬琴の呼びかけにより、当時の文人が毎月一回集って、見聞きした珍談・奇談を披露し合った「兎園会」で話し合われた、多岐にわたる内容をまとめたもの。 
全12巻。

この虚舟が目撃されたのは享和3(1803)年の常陸国(茨城県あたり)の「はらやどり浜」。

このはらやどり浜沖合に不可思議な小舟が現れます。その形状は

・お香の入れ物のような円形
・直径は三間(5.4m)
・上部は硝子障子(ガラス張り)で、継ぎ目は松脂で塗り固められている
・底も丸く、鉄板を筋のように張り合わせてある

というものでした。つまり、お椀のような形をしていて、鉄のフレームに上部はガラス張り、という構造だったようです。

さらにその中には『蛮字』、つまり見たこともないような奇妙な文字(外国語?)が書かれていた、とされています。

そして

『眉と髪が赤く、顔色は桃色、白く長い付け髪』

という奇妙な姿の女性が座っていました。
しかし、女性には言葉が通じず、二尺(約60cm)四方の箱を大事に抱えて、微笑んでいたといいます。

ちなみに、この女性、結局どうなったのかと言うと…
厄介ごとになることを恐れた住民たちが、この虚船を沖合に流してしまった(!)そうで…その後のこの女性の消息は不明。どうなったのでしょうか…。

この女性については、「ロシア人である」という説もあります。
この目撃談が作られた1803年というと、

1792年…ラクスマン(ロシア)が北海道の根室に来航
1804年…レザノフ(ロシア)が長崎に来航
1808年…フェートン号事件(イギリス軍艦が長崎に乱入)

など、ちょうどロシアやイギリスとの接触が起こった時期です。

そして、本が出版された1825年は、

1824年…大津浜事件(常陸国の海岸に、イギリス人が無断上陸)
1825年…異国船打払令

など、外国に対する関心が全国的に高まっていた時期でもある…。

また、曲亭馬琴は有名な作家であることも考えると、これは世間の時流を追った創作であるとも考えられます。

また、この「蛮女」の元となったのではないかと考えられるのが、常陸国に伝わる「金色姫」の伝説。
天竺(インド)の姫が継母に苛められ、行く末を案じた父が繭型の舟で海に流した(これはこれでひどい…)。
そして、その船が日本(常陸国)へ流れ着き、姫は養蚕を伝えた、というものです。

ただ、ガラス張りや鉄製など、当時の船の常識とは違う部分もあり、本当に宇宙人だったのではないか、という説も根強くあります。


ちなみに、2016年に森美術館さんが、この「虚船」をモチーフに「うつろ船どんぶり」なるものを販売したことがあります。

同美術館で開催された「宇宙と芸術展」に合わせて販売されたもの。
こういう洒落っ気のある森美術館さん、好きなんですが、できればお値段もう少し抑えめにお願いしたかった…(笑)
買った方がいらっしゃれば、是非使用感などお聞かせください。

というわけで、今日は江戸時代のUFOについてのお話でした。
本当にUFOは存在するんでしょうか。どうなんでしょう…。

サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。