四月の俳句など
初花や目当てのパンにあらざれど
ラムレーズンバター零れて花の粧
街ゆくに風強ければ三鬼の忌
三鬼忌の実りの大き引きこもり
ガリバーに群がるエイプリルフール
のっぽさんみたいな指で万愚節
エイプリルフールに拾ふシーグラス 詩人のための早起き入門
姉妹抱いて春愁ほどなりし
自販機に春暁の五分かな
飲み干して缶長閑けしや雨上る
馬酔木咲くひとくちぶんの冷やご飯
ゆつたりと水吸ふ米や花あせび
幼子へ眼さづくる雪だるま
雪達磨もがれし眼もてあなた見る
仕事して花に寄りたる帰り路
行人に向うて帰る花明り
たまご焼き巻いては詰める春野かな
おもへらく鶯餅か客人か
鶯餅四つチエンバーミユージツク
室内楽鶯餅の向きそろふ
チエロ、ヴイオラ、ヴアイオリン、鶯餅
蕨手のあなたアクセルミユージツク
春の宵子と遊びたる身体かな
さうですか清も季語になりましたか
(四月八日高浜虚子忌)
仏生会診断結果届きたる
体内に数字ありけり甘茶仏
姫椿懇ろに菓子包まるる
天泣へ指くぐらせて姫椿
春闌へ焚べよマシマロありつたけ
マシユマロの溶けるを春の闌と
惜春といふマシユマロの一つきり
残花かないつも不意なる町会費
歌うては夏雲の高競ひけり
初夏か恋かわからず駆けてゐる
前へ出よ春三日月へ乗るものは
鐘朧ひとりの舟の行交はす
玉葱に隠しておいたはずの顔
大皿のシーザーサラダ先帝祭
ため息と飴玉ひとつ花水木
風すこし襟足とほる花みづき
ガチヤガチヤの律儀に放られ花水木
紫陽花のコロス広場の生暗し
金縷梅の花街底に沸きたちぬ
ラベンダーまひるまと云ふ奇景あり
厚切りロースとんかつに決め氷河
とんかつの揚がり時間や御来迎
とんかつの終のざくざく流氷来
とんかつの脂と油青葉潮
背のびして天を摩するか松の花
ビルの群或いは松の花なりし
灼けてなほサフアイアの鳥鳴かずあり
グリーンリーフ木綿豆腐初夏の鬱
夏近きたまごの煮抜く時間かな
暑いねを貰うてよりの異邦人
啓蟄のカテーテル抜き差しならぬ
透析の春の光を吐かしむる
慄きを抱へしままか揚雲雀
ステーキといへば古より豚で素敵なト音記号持ちたる
とんかつも酢豚も生姜焼もゐるトンテキ号はみな豚階級
混じり気のなき明空や夏隣
建て替えの評判悪し八重桜
いつまでも若先生や八重桜
先代の光あつめて花は八重
一日を雨と木香薔薇とをり
堰を切るごとく木香薔薇こぼれ
木香薔薇ひとの気配のなき邸
クリームシチユーライスのわが家暮の春
母のこゑ隣りに飯や忘れ霜
講堂の声明らかや夏隣
焼き締まるお好み焼きや揚雲雀
お好みにオールドスクール花の兄
立ちどまる焼きそばの香や猫の恋
珈琲のいま休日や荷風の忌
初夏のたまごにソースとは異境
母の子で食ぶたまご焼き苗代時
ねぎ入れてたまご焼かむや畦青む
厚く巻くたまご菜の花蝶に化す
越冬馬鈴薯眠れば誰もゐなくなる
レスラーの身体膨るる新馬鈴薯
正解を捨てて始まる夏休みいいよいいねが僕らの通貨
初夏の朝や強気のマーガリン
黄金週間たまごサンドのぱつんぱつん
のぞみと云ふ乗物一途聖五月
行き交ふる日高屋夏の星ここだ
ラーメンの大盛さみし花潜
蛇笏読む漫画喫茶や霧の峡
ひとりなる人間関係宵涼し
バニラワンスクープかほる幽霊海月
汗の腕ケバブサンドのぎつちりと
東京の珈琲青葉木菟しづめ
いつぱいの空かき取りぬ鯨の手
いさなとり手は春波を白うして
ペンギンの腹にハムレツトの秘密
ペンギンは口を割らない聴診器
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