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ネプリ『はるのはなことば』

ネプリ『はるのはなことば』を出力しました。
蔵野依心さんが呼びかけて集まった歌人たちが、春の花言葉をテーマに3首ずつ詠んでいます(私も参加させて頂いております!)。

それでは、印象に残った歌を引きます。

優しさを履き違えててかわいいね優しさだけで出来たバファリン

チューリップ(花言葉:思いやり)マミヤミレイ

「バファリンの半分は優しさで出来ている」
有名なキャッチフレーズですね。
実際は有効な成分が入っているからこそ、優しさもプラスされているのが沁みる。
辛い時、しんどい時、優しさが嬉しい時もありますが、現実的に動いて支えてくれた方が有難いのですが…という時が主体にはあったのでしょう。
柔らかく接していれば、優し気な言葉をかけていれば、「優しい」のだと思っている相手。
主体は「かわいい」と言っていますが、それは皮肉気にも諦観にも聞こえます。
「思いやり」って素敵な言葉ですが、本当にただ思っているだけでは駄目な時があって、まさにその時を切り取った一首だと思いました。

いつだって幸せだった 出なければよかった 君のぬるい洞窟

ルピナス(花言葉:常に幸せ)橘春

「常に幸せ」でいることを、いつのまにか「ぬるい」と感じてしまっていた主体。
安心安全の暗闇で、ふたりでひっそり暮らすことを、主体はやめてしまいました。
「君」は主体を引き止めたでしょうか?
きっと「君」は引き止めなかったのではないでしょうか。
内側に入ってきた者をやわらかく守りつつ、出て行く者を笑って見送ってしまう。
「君」は守るものがなくなっても、ひとり穏やかな生活を続けているのだろうと思いました。

王子様は運命の人と結ばれてめでたしめでたし、私以外は

アネモネ(花言葉:儚い恋)外村ぽこ

おとぎ話の王子様が「運命の人」と結ばれ、物語は終わります。
この歌の「運命の人」は、どこかの国のお姫様ではなく、シンデレラのような町娘だったのではないでしょうか。
もしかしたら私だったかもしれない。
あの子と私の何が違うのだろう。
そんなことを思いながら、結婚式のパレードを浮かない顔で見つめる主体。
王子様は有名人です。
国中に憧れている娘がたくさんいるでしょう。
ですが、「私以外は」と言っていることから、愚痴を言い合う仲間も主体にはいないようです。
国中が祝福ムードの中、「儚い恋」を散らした娘がいることに、王子様はもちろん周りの誰も気づかないのでした。

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