ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」
ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」を拝読しました。
短歌と日記で構成されている作品です。
印象に残った歌と文章を引きます。
自分で自分を傷つける言葉を、頭の中で繰り返してしまうことってありますよね。
しんどさでぐちゃぐちゃになって、止められなくて。
自分を否定することは案外簡単で、しかもクセになりやすいからやっかいです。
自分から距離を取って、冷静に、公平に見ていくこと。
「より優しい視線」を自分に向けること。
とても難しいことだと思います。
でもそうやって自分に接していった先に、やっと少しだけ自分を尊重できるようになるのだと思いました。
「眠れないよるにかぶせる葉」は、なんとなく大きなものに感じたのですが、その後に「ちいさいくらいの片恋」と続きます。
言葉が伸び縮みしている感覚が不思議なお歌です。
眠れない夜、主体はひとりで過ごしています。
「片恋と寝る」というのはさびしい行為のように感じますが、この歌の主体はどこか満足げだと思いました。
過去を振り返って、今の自分なら幼い頃の自分を、こうやってすくい上げてあげるだろうと、想像してしまうことがあります。
主体にとっては「なくした帽子」をかぶせてあげることだったのですね。
主体は電車に乗って現実に帰っていきます。
自分で自分をケアする孤独と、ようやくやりきったという誇らしさを感じる「泣かせてほしい」だと思いました。
誰かに伝えようと言葉にしようとすると、「ほんとう」とずれてしまうくるしみってあると思いました。
ひとりひとりちがうくるしみがあって、それは他者に認めてもらう必要はなくって、自分のなかに抱えていくもの。
触れたらはじけてしまいそうなそれは、繊細に扱わなくてはいけなくて、なんだか大事なものみたいです。
「それでもちょっと愛おしい」という感覚、とても素敵だと思いました。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?