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小川良成対ディック東郷が消化不良に終わった理由

先日新日本プロレスのリングに衝撃的な登場を果たしたディック東郷。彼のの乱入アシストを受けたEVILが内藤を下し、二冠ベルトを奪取という、プロレスファンに大きなインパクトを与える結果となりました。そのディック東郷ですが1月にプロレスリングノアのグローバルjrリーグに参戦し、小川良成と対戦しました。戦前はプロレス界きってのテクニシャン対決ということもあり、ファンの大きな注目を集めていました。

しかし試合自体は大きなインパクトをとったとは言えませんでした。特に試合後は小川のこんなコメントもあり、波紋を呼んだ結果となりました。

なぜ小川良成ディック東郷戦の何がしっくりこなかったのか。これについて少し考えてみました。試合映像はこちらから視聴できます。※小川良成ディック東郷線が1:10:00あたり〜、原田大輔ディック東郷戦が2:38:00あたり〜です。


結論から言うと「お互いのタイプの違い」だと思いました。小川良成の特徴について、以前このように書いたことがあります。

ここではロジックレスリングと書きましたが、要するに「理屈に合う攻撃をすること」です。いわば「攻撃型テクニシャン」というべき選手と言えます。

一方のディック東郷。世界を股にかけた活躍をし、日本プロレス界でも様々な選手に指導を行う等、卓越した技術が評価されています。その中でも特に有名なのが「受け身の巧みさ」です。どんな角度から投げられても怪我をしない。また相手にどんな技術が無くてもきれいに受けることができる。ダイビングセントーンの名手。そうした言葉で評価されることが多いですね。つまり攻撃面よりもそうした受け身=「防御型テクニシャン」として当てはめることができるのではないか?またヒールとして様々な団体で活躍した経験もあり、相手が正規軍(ベビーフェイス)であるほど活きるという印象がありました。

この試合は「攻撃型テクニシャン」小川と「防御型テクニシャン」ディック東郷の対戦だったのですね。しかし普通に考えれば「攻撃型と防御型が対戦すれば噛み合うだろう」という意見もあるでしょう。ですが実際には「唸るべき場面もあったが名勝負とは言えない」。むしろ決勝の原田大輔ディック東郷戦のほうがインパクトのある試合でした。

小川は攻撃型といっても、投げ技や空中技を使う選手ではありません。グラウンドや場外戦で、試合の幅をとって相手の弱点を突く展開を得意とします。この試合でも主導権を握った小川は、ひたすらグラウンドでの攻防を仕掛けました。そのためディック東郷が活きるような、華麗な受け身を披露する展開には最後までなりませんでした。最後はディック東郷が小川をギブアップで下しましたが、勝ったディック東郷も破れた小川も、どちらも消化不良な試合となってしまいました。

小川のコメントをもう少し読み解くと「もう少し攻撃面の攻防(主にグランド面かな?)」をガンガンやりたかったが、イマイチ噛み合わなかった(ディック東郷はそうしたタイプの選手ではなかった)という感じですかね。ならそう言えば良いのですが、キャラクター的に小川であれば、ああした手厳しいコメントになりますから…。

もちろんディック東郷側からすれば「もっと投げ技なり場外乱闘仕掛けてこいよ」という思いはあったかもしれません。またディック東郷は立ち位置的にはヒールとしてノアに上がっており、相手がベビーフェイスであればもっと違った内容になったかもしれませんね。小川はノアのベビーフェイスではないですし…。

そうした「微妙なフラストレーション」を払拭したのがメインの原田大輔ディック東郷戦でした。小川戦とは逆にノアのベビーフェイスとの対戦。且つ投げ技空中技もできる万能型の原田です。小川戦とは異なり、ディック東郷の良さが最も活きるか相手でした。実際にこの試合はディック東郷の嫌らしさや受け身の凄さが観客へ存分に伝わりました。

私は小川ディック東郷戦だけを切り取って両者を評価するのは間違っていると思います。またこの試合だけを見て「〇〇は◎◎より上だor下だ」と論じるのもちょっと違うと感じました。プロレスの試合も多様化しており「必ずしも名手同士が試合をしても噛み合わない」というのは面白いところです。逆に「噛み合わないと思ったけどものすごくハマった」という試合もあるわけで、こうしたことがあるからこそプロレスを見続けるのが楽しくなると言えるでしょう。

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