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言葉の力を、あなたも信じてみたらどう? / 原田マハ 『本日は、お日柄もよく』

『本日は、お日柄もよく』を読んだ。
原田マハという作家名は知っていたが、小説は初めて読んだ。


簡単に言うと、なんとなくで生きていた主人公が、感動するスピーチに出会い、スピーチライターという仕事を通して言葉の持つ力の凄さを知って成長する話。結婚式系スピーチだけかと思いきや、まさかの政治や選挙へと話が広がっていく。

とても面白かった。最近の作品ならまだしも2010年の作品だったので、なぜもっと早く読まなかったのかと少し後悔した。

調べたらドラマ化もされていた。やっぱり、と思った。読みながら「ドラマ化されそう〜」と思ったからだ。凡人の私でも思うなら当然ドラマ化くらいされている。

しかし、今になって私が興味を持ちこの本を手に取ったということは、私にとっては出会うべくして出会う時が今だったのだろう、と思うことにする。なんでも早く出会えれば良いってもんでもないし。


素敵な言葉や表現がたくさんあったが、特に印象に残った言葉をここに記録しておく。

主人公の「こと葉」の祖母は日本を代表する俳人で、こと葉に対して「あなたも何か表現する手段を持ったら?」と言う。「心の熱いや痛いを、言葉にするのよ」と。

「わかってないのねえ。言葉は、メッセージカードのようなものよ」
 一枚一枚に、自分の思いを書きつける。とっておくもよし、日々眺めるもよし。必要なくなれば、破っても燃やしてもいい。死ぬまでずっと、心にしまっておいてもいい。
 でも、誰かの目に、耳に触れれば、なおいいだろう。誰かに伝えられれば、なおすばらしいだろう。思いを共有できることもあるかもしれない。心と心を、響き合わせることもできるかもしれない。
 言葉の力を、あなたも信じてみたらどう?
 そんなふうに、おばあちゃんは言っていた。

原田マハ(2010)『本日は、お日柄もよく』徳間書店
(徳間文庫、p.22)


「言葉の力」

何者でもない私が書くと少し安っぽいが、本当にその通りだと思った。言葉にはとてつもない力がある。人を傷つけるのも、人を励ますのも、誰かの言葉であることが多い。

読書なんてまさに「言葉の力」オンリーだ。

誰かが言葉を、文字という目に見える形にして何かを伝える。それを誰かが受け取る。

ただそれだけのことなのに、読書を通して人の心が動き、行動が生まれ、経済が動き、世界も変えてしまう。

その大きな変化はすべてただの「言葉」の集まりから始まっているなんて、よく考えたらなんだか不思議。


今書いている私のこのnoteだって、言葉だけで成り立っている。私の中で生まれた言葉が、ここに蓄積されていく。

知らない誰かが読んでイイねすることもあるし、時間が経ってから自分で見返して「あぁ、そういえばそんなこと考えてたな」と過去の自分から何かを受け取ることもある。

言葉ってほんとうに不思議。


物語の後半、感動的な名言が出てくる。文庫本の解説でもやはり引用されていた。徳間書店のHPでもトップに載っていた。

困難に向かい合ったとき、もうだめだ、と思ったとき、想像してみるといい。三時間後の君、涙がとまっている。二十四時間後の君、涙は乾いている。二日後の君、顔を上げている。三日後の君、歩き出している。

(p.322)


少し先の未来を想像して、一歩ずつ歩き出している自分を想像するだけで、わずかながら勇気が湧いてくる。

これぞ、「言葉の力」

言葉が、思考に変化を与えて、行動に変化をもたらす。



今年は、スタートから辛いニュースが多く、すでに心が重たい。連休だったのにあまり休めなかった。このままでいたら、思考も重く、行動の選択も良くないほうを選んでしまいそう。

だからこそ、言葉の力で心を軽くして、思考をクリアにして、最善の行動を選べるように意識したい。


何事にも当事者意識を持つことは大切だけど、まずは、アドラー心理学でいう「他者の課題に踏み込まない」を特に意識する。

今の私にできることは何か?
自分でコントロールできることか?
(できないことなら必要以上に考えない)
他者に意識を向ける前に、自分を大切にすることを優先できているか?


いろいろ不安で怖いけど、明日からもがんばろう。
夜更かししてしまった。寝よ。

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