フォローしませんか?
シェア
千絵と結婚するのに、周囲はみな反対した。なぜなら彼女には、五度の離婚歴があったから。 …
「ねえ、この木」 ケーキ屋に入る直前、妻が立ち止まった。『フォイユ』と書かれた店の看板…
まるで、眠っている妻を起こさないようにしているかのように、男性は小さな声で私に話しかけ…
永遠の愛を求めては、それを壊してしまう。わたしは、わたしのままでは永遠に愛されることな…
「ゆうちゃん、もうおしまい。帰るよ」 そう繰り返す私の声は、徐々に厳しくなっていった。 …
僕は頭がいい。有名な大学を出て、大手商社に勤めている。そこいらの奴とはレベルが違う。顔…
「はい、これ、恵梨香にお土産。ホテルの売店で買ったの」 そういってママが差し出したのは、ドリームキャッチャーだった。二泊三日、ママが学生時代の友達と旅行をしたのは、箱根。なぜ、わざわざ箱根で海外の装飾品をお土産に選んだのか、という問いが喉元まで出てきたけれど、尋ねはしなかった。 うちのママは、そういう人。感性が独特なのだ。モツをキャベツで巻いたものを、ロールキャベツだと言いはって聞かない人。いちいち突っ込んでいたらきりがない。 その日、さっそく私は自室に戻って、ドリ
その患者は、いつまでも鎮痛剤を欲しがった。 胸の痛みを訴えては、なんども入退院を繰り…
「吾輩は猫である」 そう言って、婚約者が布団にくるまり家から一歩も出なくなったのは、一…
研究室なんて、どこでも良かった。 つい一週間前までは。 サークルの緑川先輩の紹介で…
俺は、医者として大学病院の救急で働く親父を、心の底から尊敬していた。たとえ休日であっ…
「私これがいい。メイプルシナモン、ひとつ。」 ドーナツ屋のレジで、エミコはそれを指さす…
「子は鎹(かすがい)」とはよく言ったものだ。 物心がついた頃から、僕は鎹だった。 …
「虹描きは、不要不急です」 そう、文科省のお偉いさんに言われた楓は激怒していた。 「たくさんの人々が家に拘束されている今こそ、虹を描かなきゃいけないんです!」 それでも、先方の言い分は一向に変わらなかった。 「疫病の蔓延を抑えるために、不要不急の外出は控えてください」 壊れたレコードのようにそう繰り返すので、楓は怒りに任せて電話を切った。 だめだ、埒が明かない。月読さんに電話しよう。私の上司は月読さんであって、文科省なんかじゃない。虹描きの価値が分からない人にな