【小説】 猫だというので
「吾輩は猫である」
そう言って、婚約者が布団にくるまり家から一歩も出なくなったのは、一ヶ月前のこと。会社にも行かず、二人で住むには狭いワンルームで、一日中、布団に横になるか、テレビゲームをしていた。
鬱にでもなってしまったかと心配した私は、どうしたの? 病院へ行く? などと彼に尋ねてみたりしたものの、つねに返事は「吾輩は猫である」だった。だから、どうして猫になったの、と聞いても、「猫だから分からない。なにも分からない」の一点張り。外の空気を吸わせようと家の外に連れ出そう