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小説系

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小説のみのマガジン。
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#ショートショート

【小説】 ごま塩のかつら

 まるで、眠っている妻を起こさないようにしているかのように、男性は小さな声で私に話しかけ…

坂 るいす
3年前
41

【小説】 エバーグリーン

 永遠の愛を求めては、それを壊してしまう。わたしは、わたしのままでは永遠に愛されることな…

坂 るいす
3年前
32

【小説】 つぎのおはなし

「ゆうちゃん、もうおしまい。帰るよ」  そう繰り返す私の声は、徐々に厳しくなっていった。 …

坂 るいす
3年前
35

【小説】 そしてまた一輪

 僕は頭がいい。有名な大学を出て、大手商社に勤めている。そこいらの奴とはレベルが違う。顔…

坂 るいす
3年前
41

【小説】 歴史

「はい、これ、恵梨香にお土産。ホテルの売店で買ったの」  そういってママが差し出したのは…

坂 るいす
3年前
43

【小説】 鎮痛剤

 その患者は、いつまでも鎮痛剤を欲しがった。  胸の痛みを訴えては、なんども入退院を繰り…

坂 るいす
3年前
27

【小説】 猫だというので

「吾輩は猫である」  そう言って、婚約者が布団にくるまり家から一歩も出なくなったのは、一ヶ月前のこと。会社にも行かず、二人で住むには狭いワンルームで、一日中、布団に横になるか、テレビゲームをしていた。  鬱にでもなってしまったかと心配した私は、どうしたの? 病院へ行く? などと彼に尋ねてみたりしたものの、つねに返事は「吾輩は猫である」だった。だから、どうして猫になったの、と聞いても、「猫だから分からない。なにも分からない」の一点張り。外の空気を吸わせようと家の外に連れ出そう

【小説】 住所

 妻は、僕のストーカーだった。  僕は三十代のころ、ラジオパーソナリティの仕事をしていて…

坂 るいす
3年前
91

【小説】 ニッキ飴

 ぼくは出来るだけ、お母さんに優しくしようと思っている。  お母さんは美人で、外面がいい…

坂 るいす
3年前
43

【小説】 グロウ・アップ

 夜にすっぽり覆われる前、世界はいちだんと明るく照らし出される。最後の思い出を忘れてはい…

坂 るいす
3年前
29

【小説】 不確定要素

 研究室なんて、どこでも良かった。  つい一週間前までは。  サークルの緑川先輩の紹介で…

坂 るいす
3年前
48

【小説】 なにもできない

「母さん、棺桶作ろうと思ってるんだけど」  ながらく引きこもりをしている俺の部屋のドアの…

坂 るいす
3年前
36

【小説】 ギフト

 ぼくの学校は、少し変わっている。  くつ箱の横に小さな引き出しが並んでおり、そこに、大…

坂 るいす
3年前
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【小説】 俺は、男らしく

  俺は、医者として大学病院の救急で働く親父を、心の底から尊敬していた。たとえ休日であっても、電話一本で病院にかけつける。そんな親父が電話口で話す専門用語が、とてつもなくかっこよかった。  親父にテストの結果を褒められたりした日には、将来はきっと親父のような立派な医者になるんだ、と決意を新たにしたものだ。  いつも疲れた様子で無口な親父だったが、折に触れて俺に勉強を教えてくれていた。親父は教えるのが上手くて、そして俺は親父に教わるのが大好きだった。  尊敬していた。  三年