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【金色の砂漠①】上田久美子先生の宝塚作品を語りたい

モーニング娘。'23の個別イベントが当たったので、なんとしてでも、下半期もくさらず生きぬく覚悟をした私です、こんにちは。

宝塚の座付き演出家であった上田久美子先生の作品の中でも、個人的に最強に大好きな作品について語らせてください!

前回のはこちら。
主に、雪組の星逢一夜について語ってます。


数年前の作品ですけど、私の中ではずっとTOPオブTOP。
2017年の花組の作品「金色の砂漠」トップ娘役花乃まりあさんの退団公演です。やたらに語りたいので、ネタバレを抑えきれておりません。

オープニングのすごさまで書いたら5000文字行ったので、長いので分けます。まず①です。

お前、別に贔屓がいた組の話でもないのに、いまだにこれだけの熱量を持って語れるのかと引かれるかもしれません。
仕方ありません。
そのための場所です、ここは。


観劇当時はどうだったのか


私にとって、上田久美子さんの星逢一夜がファーストインパクトであれば、セカンドインパクトが金色の砂漠でした。
エヴァのミサトさんも傷を負うし、トラウマが生まれるくらいに衝撃がありました。

やっべえですよ・・・一回じゃ受け止められないよ・・・
お話は、「トラジェディ・アラベスク」の通り、悲劇です。
上田先生も下記のように公式で仰っております。

——「トラジェディ・アラベスク」と銘打っていますが

 “アラベスク”の唐草模様というイメージから、絡み合った因果応報の“トラジェディ(悲劇)”という意味合いを込めました。“愛憎あいなかばする”という言葉がありますが、愛と憎しみは表裏一体というところがあります。現実でそのようなことが自分の身に降りかかることはなかなかありませんが、強烈な愛が憎しみに転じ、でもその裏にはまだ愛がある……という役柄を明日海りおに演じてほしいと思い、当て書きしました。芝居の舞台は古代の砂漠、イスラム教が生まれるよりも昔、紀元1世紀ぐらいの時代で、架空の世界の王朝をイメージしています。

演出家 上田久美子が語る『金色(こんじき)の砂漠』の見どころより
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2016/konjiki/special_003.html

悲劇だけど泣けた~!とか単純な感想ではまったく言い表せなくて、それぞれのキャラの生き様、運命、選択に対して思うこと、感じることがありすぎました。

二人がどうなるんだろうと思ってみてるけど、その他の方々にも物語があり、覚悟と逆らえなかった運命があり、感情をぐちゃぐちゃにされるような感じ。

いろいろ思っちゃって、観た後、すぐには消化できなかったです。
なんだかんだで5回くらい観たと思います。

気が狂っていたので、当時、星組の『オーム・シャンティ・オーム -恋する輪廻-』が東京国際フォーラムでやってて、午前中こちらを観た後、夕方金色の砂漠を見るというはしごもやってみました。

幕間、疲れすぎて寝ましたね。
肉体的っていうか、感情が疲労したというか。
星組のはけっこうコメディ色があり、最終的にはハッピーなミュージカルで元がインド映画なので踊る踊る!
そこからの金色の砂漠よ。

金色の砂漠の前に雪華抄(という日本物のショー)を体感するのですが、溢れる多幸感が私の中ではものすごかったのです。
そっから金色の砂漠の世界の衝撃。落差。
星組インド世界→日本→架空のやべえ国へタイムスリップ。

感情のジェットコースターエンタメ感がすごくって、最高の組み合わせでした。


劇場という空間は、演者や演出、ステージのセットと観客の想像力を得て本当に存在するのだと思います
言ってしまえば全て嘘です。
さらに、宝塚は、女の人が男の人を演じるんですよ?
最強で究極に大嘘です!!

でもね、当時、劇場にいながら、主人公と姫のラストシーンで、ああここは砂漠だと、私は砂漠にいる人達を目撃しているのだと感じたんですよ。

金色の砂漠は、ここにあったんです!!!

そう感じさせる劇場の空間、役者のお芝居、すごい体験をさせていただきました。

当時、同人ヲタ友達に語ったし、好きすぎて絵ハガキを差し上げましたよ。


お前はコンサバ(金色の砂漠)のどこが好きなの?

・タイトル
・歌
・無茶苦茶なやべえ架空の国の話だが、しきたりなので納得すること
・オープニングが最強で最高で好き
・衣装の色でキャラが表されているようなところ
・ジャー(語り部)が絶妙で、置いてきぼりにならずに物語を見守れる感
・主人公と姫が激しすぎて感情移入ができないものの、ジャーとゴラーズさんとビルマーヤさまに救わるところ
・主人公のキレぎみな告白
・愛ではなく誇りに生きた姫の気高さ
・ビルマーヤさまのジャーを想って流す美しすぎる涙
・ゴラーズさんの優しさゆえのすべての行動
・鳥を罠で捕まえたシーンでの、テオドロスさまの付き人のドヤ感
・金色の砂漠という歌が、最初から最後まですべてを物語っていること
・主人公と姫の性格の激しさと誇り
・主人公と姫、王妃と王様、ジャーとビルマーヤさまの対比
・砂漠の盗賊のヤンキー感と水美舞斗さんのビジュアル、前髪
・KAZUMI-BOY先生の振り付けしたダンスすべて!
・復讐こそ我が恋のマントさばき
・緊張と緩和(シャラデハさま、ゴラーズさんがぶっ壊しにくる)シーン
・盗賊の方々に「タルハーミネってやつ」「タルハーミネみたいな女」って呼ばれるところ
・ピピという存在の大きさ、キャラクターとしての役割
・砂漠ダンサーさまたちの素晴らしき表現「何処へ行くの・・・」
・主人公と姫のダンス

羅列すると以上のような部分です!
前提条件として、トップスターは常に主役で、よきお役を演じます。
お家柄が整っている男、王族の男、仕事ができる男、やたらにモテ男、欠点もあるけど憎めない愛され男、悩む男、若さあふれるフレッシュな男、男、男・・・
みんな、問答無用にかっこよくて、あんまりダークサイドに落ちる人っていないのかなあと思います。

そんな中、金色の砂漠では主役は奴隷です。
もう、きっと今後宝塚が100年、200年続いてもこんな配役しないです。

奴隷の主人がトップ娘役のお姫さま。
主人公は奴隷からダークサイドに落ちるといいますか、奴隷ではない第2の人生を選択できるとなった時、自分の意志で、復讐のみに生きることを選択します。

雑にまとめますと、この作品では、奴隷として育った誇り高い男の、激しすぎる愛と復讐の人生が描かれます。

主人公は奴隷という身分ではありますが、バチバチにかっこいいお顔で賢く、モテ要素を含みながらも、子供の時から内面の激しさがハンパじゃない。
猛烈に愛を欲するこどものまま青年になります。
ホントはできるくせに、歌もうまくて賢いくせに、なんで後先考えず行動するんだ!ってちょっと突っ込みたい部分あるんですけど、彼は、こどものまま青年までいっちゃてるんです。
この後書きますが、望みはしなかったけど、生きるためにおかしい環境で育てられてしまったのが要因と思います。

青年時代から物語はスタートしますが、子供時代のエピソードも描かれ、それが、後々にボディブローのように効いてくるのです。
もちろん、そのための子供時代エピソードでしょう。

そう、子供エピソードの攻撃力・戦闘力すごい!

エピソードだけじゃなく、めちゃくちゃかわいいんですよね。
姫の元気の良い挨拶、姫より出来る奴隷、砂漠へ出て行っちゃう自由な姫を追いかける奴隷、砂漠のダンサー様たちとの絡みも素敵です。

この子供時代があったからこそ、こうなってしまった・・・というストーリーの整合性があるので、なにも疑問が出ません。
因果応報というか、原因と結果が繋がりがありますので、めちゃくちゃやべえ国の話なのに、ストーリーに不自然さが感じられません。


ホント申し訳ないけど、ツッコミどころが多すぎて話に集中できないぞ!と思う宝塚作品がいくつもあるので、ストーリーに不自然さがないっていうのは救いです。ストレスがないです。

宝塚をよく知らないという人に、良質な物語やショーでおすすめできる作品があるっていうのは、宝塚歌劇が今後も存続、発展する上で重要な要素だと思います。
初めて宝塚見るって人がいたら私は、迷わず上田久美子先生の作品を差し出します。映像ですけど。


主人公の激しさの根源


妄想ですけど、彼が感情爆発の激しい人になったのは、お育ちになった環境が特殊すぎたことが要因ではないかと思います。

だって、お姫さま付きの特別な奴隷として小さい頃から美しい姫の身代わりにもなれるよう育てられて、いつだってそばにいさせられて、寝食を共にさせられて、心のなかでどんなに文句や疑問やこんなの辞めてやる!と思ったって、罰せられてしまうんです。痛いのなんか誰だって嫌です。
多分、算術の時間のエピソード以外にも、何度もあったと思うんですよ。

それでも、ずーっと砂漠の砂粒と同じと思われて、無として扱われるんです。奴隷という立場で生きていたって人としての尊厳はあるし、感情だって、プライドだってある。でも、全くスルーされる。

何も考えず、感じず、砂や土と同じように、表面上は無表情で対応して過ごさればならない。
自分よりも、劣っている部分があるのに、文句も言わず、反抗もせず、姫に対する憎しみや、どんどん変わって成長していく姫への戸惑いとか、自分との立場、生い立ちの違いとか、姫に対する支配欲とか増大してくけどこんなの人に話せない。誰にも相談できないし、共有ができない。同じ奴隷の立場の友人や、仲間に言えるわけがない!

ギィはきっと、算術以外の他の教育も聞いてたら理解してしまうような、聡明な子なのでしょう。
姫より勉強ができたって披露する場もなく、認められず、褒められることもない。
ずーっと感情の行き場がないまま育つんです。
それは、しんどい。
と、勝手に妄想すると、主人公の感情の激しさは仕方ないじゃん!
何年ぐるぐるの感情を溜め込んでると思ってるんだ!
感情の押し殺し技はプロ並だぞ!
※ただし、青年になって、偶に抑えきれていない模様。


オープニングの素晴らしさ・わかりさすさ


ここからお芝居について語ります。

砂漠の旅人たちがオアシスにつく前、き倒れている二人がいるのですが、王妃と王様です。
金色の砂漠で罪が許されたのでしょうか・・・
それを見る旅人たちが、ジャーとビルマーヤさまです。
もう、このシーンだけでも意味が詰まってますね。
あえてのこの配役。
ここから物語が始まります。


この後の上田先生が作りし宙組の神々の土地という作品では、作中で大階段を使って、よりダンスが目を引くものになっていきますけど、ここのオープニングをまず見てほしい!

秀逸なアニメはオープニングは、歌とオープニングアニメーションで作品のすべてを物語っているものですが、この作品も正にそう。

主人公から歌が歌い継がれ、主要メンバーがどんどん出てくるかっこよさ。
華やかなショー的なエンタメ感もありながら、王様、王子などの位の高い人達たちはせり上がり、上の方へ。
奴隷たちはそのままステージにいます。
キャラクターを見ても、位の高い方か、そうでないのかは、このオープニングを観たら理解できてしまいます。
自然に、そう見えるのがすごい!
もしご覧になったことがない方がいましたら、楽天TVも最初1分30秒くらい冒頭が見れるんで、見てみてください。


素晴らしい漫画の短編は、登場人物のキャラを読者にわかりやすく、最小限のページで伝えてくれます。
最初のつかみで、この先どうなるんだろうとワクワクさせ、次のページをめくらせます。
初めて物語を読む読者を、全く迷子にしません。
それと一緒です。


お芝居の1時間半の話で描ける分量は、物語の要素によってどれくらい入るかわかるはずです。
オープニングの部分でキャラを紹介しつつ、架空の国というファンタジー設定を説明します。
私達と同じ、初見のテオドロスさんが国のしきたりについて質問してくれるの、初心者に優しく世界観を説明。うまいです。
しきたりについてはこのnoteの最後の方に語っています。
私は、相当好きなんです。しきたり。

架空の国なので、現代の我々にはない感覚や説明しなければならない前提条件があります。それを最初に表現してくれるので、ああそういうことかと納得できるので、話が入ってきます。

もののけ姫という有名なジブリ作品がございますが、開始10分くらいでアシタカさんが呪いを受けているんです。
それと同じです。
さあ、呪いが主人の問題ですから、この呪いを解く話が始まりますよ~ていうことが開始10分でわかるんです。
速攻じゃないでしょうか、意外と。
登場人物紹介と世界観説明に、時間はかけすぎてらんないのです。
登場人物の感情を動かすエピソードを描きたいので!


オープニングというのは重要なもので、ここで掴むか掴まないか、作品を作る側からしたら勝負だと思います。
特に映画のように、連続ドラマと違って表現できる時間が限られている一発勝負です。
漫画も、ドラマも、舞台も、基本的には大きな話の作り方は変わらないんじゃないかなあと思います。
表現方法や制約は違いますけどね。
そのように考えると、上田先生の作品はオープニングが秀逸です。
掴まれます!


ここまでまだオープニングなんですが長くなったので次回へ続けます。
つらつら言いたいこと買いていくかキャラで語るか未定ですが、好きです、金色の砂漠!





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