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ガンバレ 子ツバメピースケと (10)もりのふるぎやさん

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子ツバメの巣立ちと お兄ちゃんとなあちゃんの夏休みに起きた不思議な冒険物語。楽しい昆虫達がいっぱい
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1 ガンバレ 子ツバメ ピースケ!

巣から落ちてしまった子ツバメ : 野生の生き物は自然に任せろと言うけれど・・・ これはシバイヌモモのお兄ちゃんマークン(四年生)と お姉ちゃんのナ-チャン(一年生)がツバメのヒナと過ごしたある年の夏の物語です。  毎年春から夏にかけてツバメの子育ての姿を見かけますね。 マークンもナーチャンも毎日のようにあちこちでツバメの姿を見かけました。ヒナ達のエサを欲しがるにぎやかな声とあの大きく開かれた口はカワイイですね。  そんなある日のこと 学校からの帰り道に 近くにある倉庫の梁

2  マークンとナーちゃん 親ツバメになる

ワオ 食欲旺盛だこと! エサが間に合わないよう!  以前に黄色いカナリアを飼っていたことがありました。その時に使っていた鳥かごをこのピースケのお家にすることにしました。 マークンとナーちゃんは 大きな口を開けてエサを欲しがる子ツバメを観察しました。 『びっくりだよ。ツバメって自分の頭よりも大きな口を開けるんだから。』 『ホントだ 大きな口だね。クチバシは黒っぽいのに口の周りは黄色くて口を開けるとカパッと大きなオレンジ色の口だね。』 『親ツバメって子育ての為にあんなに小さな体

3 ツバメらしくなってきたね

昆虫の活餌をたべさせる必要があるらしい  ペットショップの店長さんが教えてくれました。 ツバメは孵化してから20日くらいで巣立つそうです。今のピースケは子供達の話から推測すると10日から14日くらいたっているのではないか。 そうなるとミールワームだけでは足りないから時折 飛んでいるチョウチョとかハエとか 昆虫を食べさせる必要があるかもしれないとのこどでした。  それで子ども達二人は お庭で昆虫を探しました。いっぱい飛んでいてしかも捕まえやすかったのはシジミチョウだけでした。

4 羽ばたきを始めたピースケ

巣立ちが近い  身体が大きくなるにつれてピースケは鳥かごの中で毎日バタバタと羽ばたきをするようになりました。やがてその羽ばたきの回数が多くなり力強さも感じられるようになりました。 『もうそろそろ巣立ちの時期だね。』 お父さんがそう言うとナーチャンが言いました。 『えっ どうして このままお家で飼おうよ。お家で飼ってもいいでしょ。』  こんなにかわいく育ったピースケとのお別れは悲しいのです。マークンもナーちゃんもさみしくて仕方ありません。でもピースケはツバメです。野鳥の場合は

5 どうやって自然界に帰すの?

人の手で育てたツバメが 生き残れるのだろうか?  マークンが鳥かごをさげて庭に出て来ました。家族みんなも一緒です。それぞれ鳥かごの中をのぞいてはピースケにあいさつをしました。 面倒を見てやれるのはここまでだよ。しっかり自分の力で生きていくんだよ。元気でねとか またおいでねとか。  マークンとナーちゃんはピースケを鳥かごから出すと二人でやさしく手の平にのせました。それから『せーのっ』て声をかけあいながら 祈るような思いで 空に向かって思い切り高く投げ上げました。  親鳥から教

6 奇跡のような光景

ツバメの救援隊あらわる!  ピースケは自分にできる事を精一杯やりました。鳴いたのです。生まれて初めて全身の力を使って必死で鳴いたのです。 その鳴き声を聞きつけたとしか思えません。ツバメの一団が飛来してピースケのつかまっているアンテナの周りをぐるぐると旋回し始めたのです。ツバメ達がピースケに何かささやきながら飛んでいます。  それはまるで さあいっしょに行こう。飛んでごらんと言ってるみたいです。ピースケは仲間に入れてもらおうと羽ばたきしながら何度も飛び立とうとはするのですが怖

7 何一つ保障されていない・・・それが野性生物の生きる世界

あとがき  ”ガンバレ 子ツバメピースケ ”  これは私の飼い主さん一家が体験した実話です。 野生の生き物は自然に任せるべきだと この家族も知っていたと思います。でも子どもが拾ってきた小さな命をどうしたら良いのかわからず 育てたヒナをどうやって自然界に戻せばいいのか その方法についても何の知識もなかったと思います。だから想定される結末がいろいろとある中で 結果的にこんなにもステキな感動をもらえた事には感謝すべきですし それは本当に幸運だったのだと思います。 ※その後ピース

K-01 もりのふるぎやさん:雑木林のできごと

カマキリの抜け殻み~つけた! 『アレレ これは何だろう 小さいけどカマキリかな・・・ああカマキリの抜け殻だ。』 『お兄ちゃん 見せて 見せて!』 確かにそれはカマキリの抜け殻です。こんもりした雑草の葉の上にありました。 『カッコいいな 頭からしっぽまで完全な形してるよ。』 これはマークンとナーチャンが家の近くのグラウンドに遊びに来た時のでき事でした。 二人は最近隣町からこの街に引っ越してきたばかりです。マークンは小学校三年生 ナーチャンは幼稚園の年長さんです。慣れ親しんだ

K-02 抜け殻や羽は 森の宝物?

もりのふるぎやさん お店には 『もりのふるぎやさん』という看板が出ています。 さっき見つけたあの小さなカマキリの抜け殻は あらあら お兄ちゃんがしっかり抱きしめていましたが 今では二人の背丈ほどもあります。子供達がスゴクちっちゃくなっちゃんたんですね。 その時後ろから声をかけられました。 振り向いた子供達はその声の主の姿を見て 思わずギャっと悲鳴をあげてしまいました。自分達と同じくらいの大きさのカマキリが立っていたのです。いえ正確に言うと カマキリの格好をした人間の子どもが

K-03 カマキリは7回くらい脱皮をして成虫になるらしい

店長さんはトカゲのおじさん お店には店長さんと思われるトカゲのおじさんがいました。沢山の昆虫や様々な生き物達の羽や抜け殻や毛玉だとか その他色々な物がキレイに整理されて壁一面にかけられています。 『おじさん カマキリの抜け殻を持った友達を連れてきたよ。マークンとナーチャンだよ。』 『いらっしゃい。どれどれ見せてもらおうかな。これはなかなか上等だね。完全な形をしているよ 見事だね。カマキリはね 10日に1回くらいの割合で脱皮を繰り返すんだよ。7回目くらいの脱皮で成虫になるんだ

K-04 獲物を仕留める早業は0.05秒!

カマキリ君の自慢話 『脱皮したらお祝いしてあげなくちゃね。』 『おじさん どうやってお祝いなんかするの?』 『脱皮した抜け殻を見つけた子どもと一緒に おめでとうって言ってあげること、そして見つけてくれたお礼にしばらく昆虫みたいに自由に空を飛んでもらうことだよ。  昆虫みたいに空を飛べたらどんなにステキだろうって思ってね これまでに色々と研究して実験もしてきたんだ。どんなに試しても残念ながら自分ではどうしても空を飛ぶことができなかったね。ところがだ なぜだかわからないが 人間

K-05 カッコ良さなら 夏の象徴のセミだよ

セミ君の自慢話 おじさんと入れ替わりに店の裏口から セミが勢いよく飛び込んで来ました。 『今来たばかりの子たちだね。君達何になりたいの。セミになるといいよ ぼくみたいに。この格好良さは最高でしょ。セミって種類にもよるけど4年くらい地中で過ごして成虫になったら10日から1カ月くらい飛び回るんだって。夏を象徴するあのにぎやかな鳴き声も ここで実際に出せるんだよ。』 『鳴き声で種類とかわかるの?』 マークンに聞かれてセミ君が答えました。 『えっとね 種類としてはジリジリって鳴くア

K-06 高速のハンター ホバリングもできる

ギンヤンマ登場 いましたいました 昆虫になった子供達です。空を自由に飛んでいます。誰もが気持ち良さそうですし格好いいのです。 ナーチャンが言いました。 『決めた ナーちゃん コガネムシになる。』 『えっ もう決めたの。ぼくはそうだな カブトムシになりたいかな。』 そこへたった今トンボにしてもらったばかりの子を連れてトカゲおじさんも広場にやってきました。 『決まったんだね 君はカブトムシに それから君はコガネムシなんだね。あとでサイズを測るとしよう。その前にギンヤンマ君を紹介

K-07 やっぱり兜の部分がカッコいい

マークンカブトムシ誕生 『それじゃ君達は店の方へ行こうか。』 マークンとナーチャンはおじさんと一緒に店の奥の部屋に向かいました。  トカゲおじさんが二人の身体のサイズを測りました。そして壁にかかっている羽やら何やら必要な物をあれこれ取り揃えると二人の為に特別な服を作り始めました。 『まずはカブトムシからだね 着せてあげよう。』 それはマークンの身体にピッタリでした。カブトムシの出来上がりです。 恐る恐る羽を動かしてみました。 『わっ 見て見て ほら 動くよ 動くよ。』 大喜