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潜水服は蝶の夢を見る

7年前 左薬指の手術を受けた。術中 私の意識は、はっきりしていた。
看護師の「終わりました」という言葉で
自分の左腕の信じられない重さに驚かされた。
私が統べることが出来た自分の身体とは思えなかった。重たかった。
この重さを伝えてくれた本を、20年以上前 読んだことがあった。
以来、この本を探していた。
偶々読んだ「緘黙」(春日武彦著)に1940年コネチカットの富豪が、
息子のために潜水服を特注したが、その重さと閉塞感に使用は断念。
私は「潜水服」というKEYWORDを見つけることが出来た。
「潜水服は蝶の夢を見る」 四半世紀ぶりに出会った本であった。
ELLEの編集長であったボビーは43才の時、脳出血で倒れ、
ロックトイン・シンドロームとなり、動くことはもちろん 唾を飲み込むことも、自力で呼吸をすることも出来なくなってしまった。
声をだすことも出来ない。
唯一 左まぶた意志を伝えることができるだけであった。
彼は、そのまばたきを使い、新たなコミュニケーションを見つける。
そして、この本を書き上げた。まばたきを何十万回も繰り返して。
きっと 人知れず それ以上の言葉に出来ない口惜しさと涙を流して。
しかし、なんと明るいのだろう。未来に向ける目は。
人間としての可能性、コミュニケーション能力がもたたすもの。 
明日に希望を託したい。
生きているあなたに会いたかった。

私が もしあらゆるコミュニケーション・ツールを失ったら、
どうやって他者と繋がっていけるだろうか?
けれども つながっていたい。どんな形でも。あなたのように。

その他にこんな本も読みました
 ●緘黙 春日武彦著 15年間 言葉を話さなかった男
 ●沈黙のひと 小池真理子著 
       パーキンソン病により言葉、コミュニケーションを失った父
 ●慟哭は聴こえない 丸山茂樹著  (デフ・ヴォイスシリーズ)
         「静かな男」半生を他者とスムーズな
         コミュニケーションを取れな勝った男。  



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