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Reflection

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2019年、約半年間「ままごとハウス」管理人およびレジデントアーティストとして小豆島に滞在している中村桃子による、島を舞台とした掌編小説集。
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#小豆島

【掌編小説|Reflection】はじまり

【掌編小説|Reflection】はじまり

 子供たちに帰る時刻を知らせるメロディとともに落ちていく夕陽は、山の向こう側に隠れる前にいっそう眩しく光ってこの窓を照らした。それはフィナーレに相応しく、この空間に散らばった様々な記憶の欠片がきらきらと輝いていた。

 それは新緑の季節。まだ梅雨は迎えていないはずなのに、陽射しだけは真夏のようだった。この部屋の壁には、この窓から見える港を描いた絵がかけられていて、室内には男が一人、本当の窓から、本

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【掌編小説|Reflection】ひかりのありか

【掌編小説|Reflection】ひかりのありか

 物心ついた時には、光を浴びて、舞台の上をくるくる走り回っていた。そこが自分の生きる場所だと信じて疑わなかった。それは「その世界しか知らない」という事でもあった。それを不幸だと思う人もいるのかもしれないけれど、他人がどう言おうが、自分は幸福だった。
 《井の中の蛙大海を知らず》ということわざがあるけど、のちに、《されど空の青さを知る》というフレーズが付け加えられたという。そのフレーズを「蛇足だ」と

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【掌編小説|Reflection】Melt

【掌編小説|Reflection】Melt

 花火をしませんかと誘ったのは星がとても綺麗な夜のことだった。この夏はじめての花火だった。子供と呼ばれる年齢ではなくなっても、火花がはじける様子にはどこか心が浮き立つ。けれど一人でそれを眺めるのは寂しいから、誰かと一緒にその色を眺めたくて、誘いをかけた。これをきっかけに距離が縮まればいいな、というほんの少しの下心もあったけれど、もっと単純に、感動の共有をしたい、みたいな欲求で。

 庭先でちょっと

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【掌編小説|Reflection】はじめてのぼうけん

【掌編小説|Reflection】はじめてのぼうけん

 小学校にあがったから、おれは、初めてひとりでさんぽに出かけた。こないだ買ってもらったばかりの青くてかっこいい腕時計をつけて、帽子をかぶって、お母さんにいってきますをした。お母さんは「気をつけてな」と言って水筒を持たせてくれた。
 おうちのまわりのいつも歩いてるところも、ひとりだと、ちょっとどきどきする。空も海もおれの腕時計みたいにきれいな青い色で、ぼうけんびよりだ。

 おれはとりあえず運動公園

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【掌編小説|Reflection】ただいま

【掌編小説|Reflection】ただいま

 ゴールデンウィークが終わったばかりだった。
 既に多くの人が日常に戻ったあとの街は人気もまばらで、しんとしていた。連休であろうがなかろうが多くの人が寝静まる時間帯に出歩いているから物音が少ないのも当然ではあるのだけれど、五月に入って数日間の賑やかさを思えば、静けさが際立つ夜なのは間違いなかった。キャリーケースを引く音だけが少しうるさかった。

 深夜一時発のフェリー。乗るのは初めてじゃないけれど

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