太陽

中学生の頃、一目惚れをした。

今まで生きてきた22年間の中で最初で最後のたった一回だけの一目惚れだった。

結局その人とは一度も話すこともなく、中学を卒業し高校も別々になり、もう会うことはないと思っていた。
ただのそんなあったようななかったような記憶だけの思い出として忘れかけていた。



大学4年生の冬。

もう都内で過ごす期間は残り2ヶ月もない時だった。

小学生の頃からの幼馴染に飲み会に誘われた。

「〇〇くん、来るって」

その名前はわたしが中学生の頃に一目惚れした子だった。



彼は、中学生の頃わたしが一目惚れした時と変わっていなかった。

眩しい笑顔で、その表情には優しさが滲み出ていて、とてもキラキラしていた。


わたしのことはもちろん覚えていなかった。
というのも、関わったことは一度もなかった上に中学はマンモス校。廊下ですれ違った時に一目惚れをしたのだから、彼がわたしを知っているはずがないのだ。
わたしだって一目惚れしなかったら彼を知ることもなかったし、たぶんこうしてまた大学生になって出会うこともなかった。


中学の頃に話したことはなかったけど、大学生になって話してみるとわたしが中学の頃に持った印象通りの人だった。

みんなに分け隔てなく優しく、笑顔を向ける。
眩しくて
みんなが自分のものにしたいと思ってしまう、
そんな人。

そして
誰かが独り占めできるような人ではない
それくらい
太陽みたいな人。


高校も大学も彼氏や彼女は一度もいなかったようだ。
彼もその周りもそう言っていたから嘘ではない。

でもやっぱり周りにはいつも多くの人がいて、
毎日のように性別関係なく友人と遊んでいる。


やっぱり太陽みたいだ。

みんな、そばにいてほしいと思っている。




本当は心の奥底で、

わたしのものにしたい。
あなたのものになりたい。

そう思っているのかもしれない。

きっと、たぶん、いや絶対
思っている。


できることなら付き合いたいし
結婚だってしたいよ、本当は。





でもわたしはこの心に蓋を閉めることにした。



甘く甘く、でもやっぱり酸っぱい
キラキラしていて
触れると壊れてしまいそうなくらい繊細な
眩しい思い出として
しっかりと蓋をして
もう触らないことにしようと思う。


時々その思い出の箱をそっと覗いて
眩しい思い出に
心を満たそうと思う。



だって彼は太陽だから。

誰か一人が独り占めしちゃダメでしょ?

きっと彼自身もそれを自覚しているから。




神様、
どうかぜひ、
来世もまた彼と出会わせてください。

どんな関係でも構いません。

また彼という太陽に、
その光に少しでも照らされることができれば、
わたしはとても幸せであると思います。




わたしだけが知ってるこの気持ち。

好きだよ、とても。

この気持ち、大切にするね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?