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薬膳空想物語『七十二候の食卓』

菜虫化蝶 ~なむし、ちょうとなる~  九皿目

厳しい冬を越したさなぎが羽化して美しい蝶となって羽ばたいていく頃。
菜虫とは菜の花や大根、蕪などにつく幼虫、青虫のことである。
そして菜虫が蝶になるこの時期は「啓蟄」から「春分」への変遷を意味します。
生活の節目の少し前、4月からの物事の始まりの一歩手前。

田舎道の土手に面した斜面には菜の花の絨毯。
小学生の頃、同級生の友達と菜の花に埋もれて寝転がって遊んだ場所も、大人になった今は車で通りすぎるだけになってしまった。

ふと、車を留めてかがんでみる。
菜の花のように、ちょっとくさいような大地の匂いを纏ったあの頃の私たち。
何もわからない幼虫のようだった。

突然右肩にやってきたモンシロチョウが、
あの頃のノスタルジーをふわりと連れてきてくれた。


『菜の花のお浸し』

鍋にたっぷりのお湯を沸かす。
菜の花(※1)を食べやすい大きさに切る。
茎の部分から茹で、茎は2分ほど、葉の部分は1分弱茹でる。
茹でたらすぐ冷水に漬ける。
冷めたら水気をしっかり取って器に盛る。
茹でた時のお湯を少し取っておき、それにみりんと醤油を入れ味をつける。
茹でた菜の花に浸す。


※1 菜の花:食味/苦・辛  食性/温  帰経/肝・肺・脾
●食味:酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味([かんみ]塩からい味)を五つに分けたもの(五味ともいう)
●食性:熱性・温性・平性・涼性・寒性と食物の性質を五つに分類したもの(五性ともいう)
●帰経:生薬や食材が身体のどの部分に影響があるかを示したもの。ここでいう五臓は「肝・心・脾・肺・腎」の事だが、単に臓器の働きにとどまらず精神的な要素も含まれ、ひとつひとつの意味は広義にわたる。

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