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アドレナリン制御不能! 二十世紀の大作曲家が生死を賭けた一曲。

#私の勝負曲

 唐突ですがハードメタル好きですか? スピードメタルは? 全身を貫くビートに脳汁垂れ流したくなりませんか? プログレなんてどうよ?時代のトレンドなんぞぶっちぎって脳汁流しましょうよ変拍子にうなりましょうよ!

 と言うわけで、クラシック畑から長じて多ジャンルを聞くようになった私が初めてHMHRジャンルを聞いた感想は「あれ、思ったより秩序があって聞きやすい……。ていうかお行儀良いじゃないの」

 何ということでしょう。クラシック界にはHMHRノリをHMHRと言う概念が発見される前にアコースティックで『やっちゃった』曲もそれこそヴィヴァルディの時代からあったのでしたー(HMファンの方には源流がクラシックにあるよと言う話は常識かもしれませんが)。

 中でも直接的にHMHRに影響を与えているであろう点で見逃せないのがこのお方。

 ソ連(ソビエト連邦)の大作曲家『ドミトリー・ショスタコーヴィッチ』。あえて「ロシアの」とは書きません。彼の創作人生は「ソ連」体制とのつばぜり合いの爪の上端にあったと思うので。

 中でもつかみから問答無用にアドレナリンが無限放出されるのがムラヴィンスキー/レニングラードフィルの交響曲第十二番『1917』第一楽章(1961年版)。正規版のデモ音源が見つからずツラい……。

 第一楽章の副題が『革命のペトログラード』。プロパガンダを隠す気すらない。つまりこの曲は二十世紀を代表する大作曲家の一人ショスタコーヴィチが文字通り生死を掛けて1917年の十月革命を描写した鬼気迫りかつ綿密に計算されつくしたアドレナリンを大量放出させる仕掛けが満載の曲なのでございます(作った曲が当局のご機嫌取りに失敗したら良くてシベリア悪くて粛清。しかも彼は当局から何度も命を取られかけていた訳ですから半端なものは作れませんもの)。

 そしてこの曲は是非!ムラヴィンスキー/レニングラードフィル版を聞いていただきたい。「ソ連」の匂いがぷんぷこする金切り声や断末魔のような金管セクションは現代のオケや録音では到底聞けないものですし、何てったって指揮者のムラヴィンスキー氏自体がロシア貴族から革命で全てを失いながら「ソ連」の指揮者としてタクトを振る人生を送られた方ですから音の圧とコンマレベルでぴたりと合う縦への統率力がまあ凄いすごい。アドレナリン制御不能状態になること必至の十一分です(二楽章以降はまあお好みで聞いてくださいな)。

 とにかくこんな物を聞かされた後じゃHMHRですら「お行儀が良い」って感想に鳴ってしまうのです、ハイ。

 余談ですが、ムラヴィンスキー/レニングラードフィルのベートーヴェンの交響曲第六番は「北国の春」って感じ。雪解け水が渓流に流れ込むような清新な演奏でこれまたおススメです。







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