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臨床工学技士の仕事はなくなるのか。資格の価値を高める方法

臨床工学技士として、見逃せないニュースが入ってきました。

これでブタによる腎臓が量産されるようになると、腎不全に対する治療の第一選択は移植になるのは時間の問題でしょう。

これにより透析治療は、移植の待機期間か、移植した腎臓が機能不全になった時か、一時的な腎障害に対する急性血液浄化及び一時的な対応か、高齢や他疾患による看取り患者に対するものか…いずれかになりそうな予感です。透析患者さんの高齢化による減少、糖尿病腎症への対策、そして新たな治療の選択肢を考えると、透析患者さんが今後減少していくスピードは予想よりも早くなるかもしれません。

何より腎不全患者さんにとってみれば、週3回4~5時間の透析治療から解放されるのであれば移植を受けたほうがQOLは間違いなく上がるでしょうし、国としても社会保障費の抑制のためには移植を受けてもらったほうが良いでしょう。

さて、臨床工学技士の多くが血液浄化業務に属していると思います。Xを見ていると、臨床工学技士の将来を憂う投稿が多くありますが、自分は逆に、臨床工学技士という資格の価値をあげるチャンスなのではと考えております。

なぜか。

臨床工学技士としての価値を高めるためには、資格の目的を達成するために、業務分掌に書いてあること以外の業務を行っていくことが重要です。新たな新技術が生まれるという外的な変化が起こることで、強制的に安住域の外へ出ざるを得ない状況になり、価値を高めるチャンスが来るのではと思います。

業務分掌とは…

各々の部署や役職、担当者が行うべき業務を明確化することです。 たとえばある部署が行うべき業務、別の部署が行うべき業務を明確に分けることで、従業員全員が自分の業務と責任の範囲を理解できます。

https://www.m-keiei.jp/musashinocolumn/management/divisionofduties#

業務分掌に掲載されていることは、その資格を持ち、その部署に所属しているなら、絶対にやらなければならないことです。病院との契約であり、各々に課されている責任の範囲内であり、その業務と引き換えに、給与が支払われるというものです。

業務分掌内に書かれている業務ができるということは、患者さんや病院にとっては価値ではありますが、個別の臨床工学技士にとって重要な価値を付与することはありません。なぜなら、自分以外に代替可能だからです。つまり、日々のルーチン業務や職種としてやらなければならないことは、できていないと価値は下がりますが、できていたとしても価値を高めることにはつながらない、ということです。

病院の部署としても考えてみましょう。臨床工学技士の集団の部署があるとして、すべての臨床工学技士が業務分掌の中に書いてあることしか行っておらず、これから広げる気もない、忙しくて人員も不足するから業務を減らす可能性もあるような部署は、病院からどう見られるでしょうか。病院経営を存続させるという観点から見ても、大きな外的要因である社会保障費の削減や働き方改革に伴うタスクシフトシェアが叫ばれている中において、業務分掌内に書いてある業務をただ忠実に実施するだけ、他は知らんぷりの部署に対する評価は高くはないと思います。

さらに、今回のニュースは、臨床工学技士の業務分掌の中に書いてある業務が減る可能性を十分に孕んだものです。今行っていることのニーズが激減する可能性がある中で、部署に価値を付けるためには、やはり業務分掌外の業務を取りに行くべきでしょう。

資格という大きな括りでも同様です。臨床工学技士の職能団体としても、新たな業務範囲を得るために動いています。

「いやいや、法律が改正されないと違法になってしまうなら、法律改正されてからでしょ」と思う方もいると思います。おっしゃるとおりで、本noteは法令違反を奨励するものではありません。ただ、病院の中には無資格でも行うことができる業務が溢れています。

例えば、教育です。臨床工学技士であれば、医師や看護師などの多職種者への医療機器に関する教育があげられるでしょう。また、RST(呼吸サポートチーム)などのチームに所属して活動すること、自分や自分の部署が関連する業務を目的に沿って改善し、院内のルールを改定し続けていくことなどは、資格の範囲とは関係なくできる業務です。さらに、現行の法令に合わせてできるが、今やっていない業務もあるはずです。

もちろん、資格や部署、個人のミッションに照らし合わせて、本当にやるべきかどうかの判断は必要だと思います。また、これを業務としてではなく、誰かのボランティアや負担として行うことは働き方改革とは逆行するものなので、業務時間内でやれる環境を整えたり、余裕を作るというキャパシティも考慮すべきです。

目的とキャパシティに照らし合わせて、個人としても、組織としても、資格としても価値を高められると判断したら、積極的に取りに行くという姿勢を持っていたいと思います。

今生きている生物も、外的変化に対応していくことで、進化し、強くなることで生存競争に生き残ることができました。逆に言うと、外的変化がなければ変化する必要もなく、また変化できなかったかもしれません。

我々は運悪くか、運良くか、ゆっくりと確実に、そして劇的に変化する時代に生きています。人個人も、人の集まりの組織も、切羽詰まらないと変化できないのであれば、外圧がかかっている今こそ変化していくことができれば生き残る可能性も高くなると思います。

それぞれの持ち場で、業務分掌外に粛々とコツコツと手を伸ばして頑張っていきましょう。

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