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ずっと見ていられる とんとんからり


照明に使う生地を織ってもらいました。

兵庫県西脇市にある機屋さん。
ここで作られる織物は「播州織」といって全国的にも有名で、みなさんも耳にしたことはあるかも知れません。なんともう200年以上の歴史があるという、とても由緒ある産業なのです。

その伝来が京都からということもあって、京都出身/兵庫在住のわたしとしては少し特別な思いを感じていました。そんな思いを胸に産地を訪れたんです。

分かる人には分かると思うんですが「照明に使う生地を織ってもらいました、、」とちゃうわー!!ってくらい、本当にありがたい事というか、こんなことがあるのかという事でして。
文章でふざけてはいるものの、恐れおののいているところもあります。まさか、こんな一介の照明太郎のためにここまでしてもらえるとは。


そんな織物産業の中で働く無名の彼と知り合ったのはずいぶん前。今回はその縁を頼りに彼を訪ねたわけです。
意匠や図案はもちろん組織図の設計から構成、織機の扱いにいたるまで織布工程のすべてをこなせる職人。すごいんです、本当に。

当然ながら、生地の業界でも役割や分担は色々あります。
例えば、違うものづくりの業界でもそうなんですが、ざっくりと

  1. 意匠設計(デザイナー)

  2. 構造設計(設計士)

  3. 品質管理/規格検査

  4. 製造

と、商品が生み出される工程だけでも分担はバラバラ。
しかし、バラバラだと①が描いたものは構造的に作れなかったり③をクリア出来なかったり、そのために②が再考することになったり。でも②や④先行ではどんな意匠のものを作ったらいいか分からなかったり、その辺りでケンケンガクガクなるわけです(こちら参照「デザインなんて語れない2/3」)


彼はその分担を全部一人でやれる。
そういう人は織物業界でもあまりいないようです。その稀有な才能で、いずれ表舞台に出ると思っていますし、わたしがその一助になれるようサポートしたい(されてる状態ですが)と考えてもいます。

あっ!ちなみにわたしもおおむね①②③が出来まぁす!他には製品企画やディレクション、グラフィック(パッケージやチラシ)やムービー制作なんかも。製造業の方、並びにオリジナル製品に興味ある方、どうぞご依頼くださいね!(これは広告です)

そんなことで話は盛り上がり、今回、照明に使う生地の製作を大変快く引き受けてくれました。図案や素材までイチから相談にのってもらい、しかも織り方(経糸と緯糸)の構造、意匠の表現方法、機織りの仕組みなども教えてもらいつつ。

昨今、生地の設計はコンピュータが主流なのですが、動画にも映ってるパンチシートという古くからある“生地の設計図”を使って作られています。生地の構造や織りの流れをリアルに理解するためこの方法でやってるというのは本人の談。ストイックな人。
冒頭でもお伝えしたのですが、こんなことは大量発注でもしない限り、本来出来ないような企画です。

例えば、織られた布を染めたりは融通がきくこともあるのですが、イチから織るなんていまだに信じられていません。この目の前にある生地、ほんまは存在せんのちゃうかな?という感じ。
糸の太さ、色、仕上がりの厚みはこれでいいのか、そして照明ならではの光をどれくらい通すか通さないかなど、シェードにした時の形状も含めて何度も何度も試作を重ねた記憶はあるので、この世の出来事として進めています。

という事で、量的に全ての製品には使えなかったのですが、ひとまず今回はテーブルライトに幾つか仕立てました。
中にはこの世に数mしかない生地まであったりして、すでに骨董品状態です。あ、骨董品って「希少価値や美術的価値がある」ということ以外に「価値がなく役に立たなかったもの」という意味もあるのでご留意ください。笑

そんな冗談はさておき、本当に素敵な生地ばかりであることは間違いなく、それを製品としてこの世に出せることを大変嬉しく思うと同時に、改めてここに感謝申し上げます。

そして、そんな思いで作った照明が皆さまの生活の一部となれば、その喜びに勝るものはありません。
これからもどうぞよろしくお願いします。

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