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雑文 #300 ぼやぼやくん

ふと気がつくと、私の中に、ぼやぼやくんがいた。

ぼやぼやくんは、輪郭が曖昧で、どういうかたちをしているのかわからないので、私はそれを取り出してみた。

ぼやぼやくんはひどく軽い。
取り出して見ると、丸くて、クリーム色で、表面に苔のようなものが生えている。
触るとむにゅっとしていて、ゴムボールのよう。
中身はほとんど空洞で、冷たかった。

私はぼやぼやくんが不快ではなかったが、かと言って好きでもなかった。
どう対峙すればよいのかわからなかったが、とにかく何か話しかけてみようと思った。

「どうしたの」私はぼやぼやくんに訊いた。
「どうもしない。何もわからない。ぼく、どうしたらいいかわからないんだ」
ぼやぼやくんは困っているようだった。
私はぼやぼやくんの助けになりたいと思う。
ぼやぼやくんは悲しそうだったので、私は撫でてみた。
苔のようなものが少し取れる。
ぼやぼやくんはびっくりしながらも、うれしそう。
私は苔のようなものを剥いでみた。
表面はすべすべになった。
私はすべすべになったぼやぼやくんをぽんぽん突いたり、軽く放り投げたりした。
はじめは優しく、だんだん調子に乗って。
ぼやぼやくんはくすぐったそうに笑った。
そんなぼやぼやくんはかわいかった。
空洞で軽くて冷たかったぼやぼやくんは、まろやかになっていった。

私はもともといた場所にぼやぼやくんを戻そうと思った。
「いいの?ぼくを戻して」ぼやぼやくんは遠慮がちに訊いた。
「もちろん、いいよ」私が言うと、ぼやぼやくんは照れくさそうに笑った。

私の中に戻ったぼやぼやくんは温かくなっていた。
質量も増したようだ。
これまで苔のようなものがいろんなものを遮断し、中は冷たく空洞になっていたのだ。
これからは時々ぼやぼやくんを磨いて刺激してあげよう。
そうするとすっきりする。
すっきりして、いろいろ動き出すのだ。


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