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【小説】私は小説を書こうとしている。


朝になっても昼になっても夜になっても来ない。

顔を洗っても手を洗っても歯を磨いても来ない。

散歩してもジョギングしても泳いでも来ない。

おとといも昨日も今日も来ない。

テレビを見ても小説を読んでも漫画を読んでも来ない。

来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない。

いつ来るの。

泣いても笑っても怒っても来ない。

何をしたら来るの。

来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない来ない。




目を覚ますと朝が来ていた。

カーテンを開け、窓を開ける。

ひんやりとした空気が気持ちがいい。

今日も散歩日和だ

新鮮な空気を吸い込んだら、階段を下りる。

リビングの真ん中に、穴の開いたドッグフードの袋があった。

ソファに座っている犬をチラリと見た。

目が泳いでいる。

そんな顔されたら怒る気にもなれない。

散乱したドッグフードを片付け、手を洗う。

読んでいなかった夕刊を読む。

明日は昼から雨か。あ、これ、おとといの新聞。

午後から本屋に行って小説でも買おう。そういえば、あの漫画の24巻だけ買ってなかったなあ。

テレビをつけ、天気予報を確認する。

顔を洗い、歯を磨く。

昨日、精米したばかりの米を研ぐ。

いつもよりとぎ汁が薄いような気がする

そっか、無洗米ボタンを押したんだった。

米をしばらく水に沈める。

土鍋に米と水を入れ、火にかける。

沸騰したら弱火にする。

水蒸気が出なくなるまで火にかける。

蒸らす。

ご飯としじみの味噌汁と胡瓜の古漬け。

味噌汁をひとくち、古漬けをひとくち。

お焦げが混ざったご飯を口の中に入れる。

すごく、美味しくて鼻の奥がツンとした。

幸せだなって笑って

突然、来た。

来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た。

箸を置き、階段を駆け上がる。

椅子に座り、机に向かう。

来た来た来た来た来た来た来た来た来た来た。

原稿の上を万年筆が動く。



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